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魔界は、すこぶる平和であった。
そりゃあもう、住民達が チリのように長いアゴをゴインゴインすくめて、 白目を向いてアクロバティックに 倒立前転をキメるほど平和であった。
しかし、魔王城。 そこでは日々 人間界への侵略について会議が行われている。
この城では、 あまりの平和さにアゴをゴインゴインすくめて 白目を向いてアクロバティックに 倒立前転をキメる者はそう居ない。
何故なら、 そんなことしてる暇もないほど忙しいからだ。
魔王こと、リザベルド・アリューナ・ パルロ・スライツェア・グロース・ティヤ。 その私室は、 彼女の可愛らしい性格に適応され 大きなぬいぐるみや、天蓋つきベッド。 きらきらした宝石のおもちゃ、そんなのが 無造作に部屋のあちこちに転がっている。
使って二秒で飽きたであろう、 埃を被った安そうなプラスチックのロボ。 それが紫のクレヨンでラクガキされた白い壁に バゴッ、という音を出して叩きつけられる。 ロボが何をしたというのだ。
......そんな魔王様の側近。 悪く言ってしまえば、「お世話がかり」。 よく言っても、「ご機嫌とりがかり」。 側近は今日も叩きつけられた埃まみれのロボを その膝に乗せてぱっぱと埃を払った。 .....彼は、この役職に一応満足している。
削除
側近の名前は、削除。 一言で言ってしまえば、常識がある狂人だ。 彼が部屋の隅で正座して、ロボを撫で、 ロボが衝突してボロボロになった壁を 死んだ目で眺めていた時だ。
ティヤ
ティヤ
突然、天蓋つきベッドから 耳をつんざくような甲高い怒声が響いた。
削除
びく、と肩が跳ねて、 危うく手に持っていたロボを落としそうになる。 顔を上げると、ベッドの山盛りクッションの上に ぷん!!と言った感じで 不満げな魔王様がこちらを睨んでいる。
その蛍光色の黄色をした瞳は 「はやくこっちにこい」。と雄弁に語っていた。
削除
削除が慣れたように恭しく応じると、 ティヤは弾かれたようにびょん、と上体を起こし クッションの山をはね除け、パジャマのまま ずかずかと.....いや、 てちてちと側近の前に仁王立ちした。
ティヤ
ティヤは、枕元に置いていたチラシを取っつかんで 側近の前につきだした。そこには紫や黄色にピンク、 毒々しい色合いのイラストと 真っ赤な血のようなフォントで 「魔界高級スイーツ、ダークナイト本日入荷!」 と、印刷されている。
削除
ティヤ
ぷく、とティヤは片方の頬を不自然に膨らませて 側近をじろり、と睨んだ。小さいせいであまり怖くない。 が、その目には「なんとかしなさいよ」という言葉が ありありと浮かんで見える。
ティヤ
削除
本題より、ついでにやることの方が量が多い。 削除の死んだ目が更に死んでいる。
ティヤ
「善処」_その二文字を聞いてティヤの顔が 甘えから不機嫌に変わる。眉がぐっと寄って、 ぷりぷりと怒りはじめた。
ティヤ
ティヤは、ベッドに置いてあった クッションの山のクッションを一つを掴んで ぶん、と削除に投げた。 ぼふっと音がして顔に命中した。
削除
ティヤ
削除
ティヤ
この通り、 側近はアゴをゴインゴインすくめて アクロバティックに倒立全転するほど 暇でもないのである。
ティヤ
削除
背を向けた削除の背中に、 すかさず魔王の声が飛ぶ。
ティヤ
......ドアが閉まる音とともに、 部屋は嘘みたいに沈黙に包まれた。
....魔王、ティヤには、 事情があった。
ティヤ
ティヤ
ティヤ
魔王ティヤは、側近に めちゃくちゃ惚れているのである。
.......ということで、 魔界は今日も平和なのである。