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黒煙が恐ろしいほどの勢いで階段をのぼってくる。
何度も咳き込みながら、しかし新鮮な空気を求めて木村は上へと向かう。
きむら
きむら
きむら
木村のいる教室棟は、基本的に北階段と南階段で結ばれた直線廊下で構成されている。
1階、2階はすでに火の海で、逃げ場はなかった。
ゆえに、とにかく火の気のない上に逃げるしかない。
校舎は4階建て。
現在、木村がいるのは南階段側、2階と3階の間の踊り場だった。
きむら
南階段は4階に到達すると打ち止め。
北階段側に屋上へと出る扉がある。
だから、最悪のケースを考えて屋上に避難することを想定しておいたほうがいいだろう。
だが――こちらがそう考えるのは、きっとあちらも想定しているはずだ。
きむら
きむら
自問自答しつつ、とりあえず3階に向かう木村。
廊下の様子を伺ってみると、まさしく同じようなタイミングで、日向が廊下の向こう側に姿を現した。
きむら
一瞬だけ姿を見せた日向は、まるで誘い込むかのように北階段のほうへと消えた。
きむら
きむら
きむら
ふと、木村は思い出した。
北階段側は屋上へと続く階段が4階から上へと伸び、当然ながら屋上へと出るための扉がある。
一方、南階段が打ち止めになっているところには――あったはずだ。
きっと、在校中に使うことはないだろうと思っていた、避難梯子が。
廊下のどん詰まりに、ボックスに入って保管されていたはずだ。
きむら
きむら
きむら
思い立ったが吉日、木村は階段を駆け上り、そして4階へ。
きむら
当然ながら、いつものところに避難梯子は設置されていた。
きむら
きむら
指示に従って箱を開けてみると、綺麗にまとめられた避難梯子が出てきた。
それを取り出し、窓を開けると、その縁に避難梯子を片側をかける。
後はこれを外に放り出せば、避難用の梯子が勝手に作り出してくれる。
地上へと脱出路を。
きむら
きむら
木村は梯子が地面まで伸びたのを確認すると、窓際に立って梯子に足をかける。
きむら
木村はそのまま梯子に全体重をかけて、梯子を下りようとした。
その時のことだ。
次に踏もうと思っていた梯子がなく、空振りしてしまう。
きむら
木村は知る由もなかった。
日向は木村を待ち伏せなどしていないこと。
そして、木村が避難梯子を使用するように誘導し、あらかじめその避難梯子に細工を施していたことを。
きむら
左足、そして右足。
両方の足を支えるはずの梯子は、なぜかそこにはなかった。
木村の体重を支えることができず、切れて落ちてしまったのだ。
金属製で、切れることはまずないような梯子だったのに。
ふと、見上げると、屋上の柵から身を乗り出す日向の姿があった。
ひなた
ひなた
ひなた
ひなた
木村は両手で梯子を握っている状況。
両足はぶらりとぶら下がっており、よじ登ろうにも、よじ登れない状況。
きむら
懸命に助けを求めるが、しかし日向は満面の笑みを浮かべただけだった。
きむら
もはや、梯子を掴む手が震えて限界だった。
きむら
きむら
きむら
急に汗で片手が滑り、慌ててもう片方で懸命に堪えようとするが、しかし残っていたほうの手もつるりと滑った。
日向の満面の笑みが遠ざかっていく。
飛び降りの際は意識が飛んでしまうから、自殺の手段としては楽である。
それが全くの嘘であることを木村は知った。
日向の笑顔が遠かった後、後頭部から激しい衝撃が走った。
仇討ち解禁令――最上日向、第3号執行者。
曽根神了。
同4号執行者。
木村隼人。