テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
6,945
ジャー……
rt
用を足し、手を洗いながらぼーっと考える
rt
ずっとあんな調子だったが、彼は本当に大丈夫なのだろうか
rt
rt
その時ふと、ある違和感にたどり着いた
そう、キヨくんはお酒”しか”飲んでいない
彼は以前、「酒を飲む時は絶対に肉を食べる」と言っていた気がする
しかし置いてあったのは、お通しが入っていた空の小鉢と、ビールジョッキだけ
そんな彼の大好きな肉類が、机上には無かった
大好きな物が喉を通らないほど、彼は追い詰められているのだろうか
自他共に認めるポジティブ人間である彼を、あそこまで落ち込ませた原因は一体……
悶々と考えながら出口に向かい、引き戸に手を──かけようとした
ガラッ
突然ひとりでに扉が開き、自身の手が空を切った
rt
驚いて顔を上げると、そこには大柄な男性が立っていた
大柄な男
ギロリと俺を睨みつけるその男は、酔いが回っているせいか頬が紅潮し、眠たそうな表情をしていた
rt
男の手には火のついた煙草が握られていた
この居酒屋は全席禁煙だったはずだが…知らないのだろうか
大柄な男
rt
咄嗟に避け、男が通れるよう路をつくる
だが返ってきたのは、予想のできない言葉だった
大柄な男
「姉ちゃん」
rt
一瞬、この男の言っている事が理解できなかった
あまりの衝撃に目を見開く
「姉ちゃん」?
いや、「兄ちゃん」の聞き間違いか
そう聞こえたような気がしただけ、きっとそうに違いない
俺も酔っているのだろうか、どうしてこんな聞き間違いを…
大柄な男
rt
…残念ながら、俺の耳は正常だったらしい
それにしても…女性に見られている?俺が?
こんなこと、今までの経験上無い
この男の目は節穴なのだろうか…どう見ても男だろうが
それとも、酔い過ぎて幻覚でも視えているのだろうか
どちらにしろ、あまり関わりたくない相手であることは間違いない
そんなことより、早く席に戻って彼の様子を確認したい
だが、図体のデカいこの男が通路を塞いでおり、戻りたいのに戻れない
rt
どいて欲しいのだが
rt
rt
酔っぱらいを刺激しないよう、通路を通るよう促す
大柄な男
大柄な男
rt
顔をしかめる
どうやら、かなり面倒な客に捕まってしまったようだ
大柄な男
そのような表情をしたつもりは無いのだが、男は勝手に都合良く解釈し始めた
大柄な男
そしてニヤリと不気味に笑い、俺の身体を舐めまわすように見る
rt
背筋が凍った
男はジリ、と俺に一歩近づく
距離を取ろうと、俺は一歩後ろに身を引いた
rt
大柄な男
こっちの話をまるで聞こうともしない
rt
男は尚も意味不明なことを呟く
大柄な男
rt
男は手に持っていた煙草を床に捨て、つま先でグリ、と踏み潰した
ジュッ…という火の消える音が室内に響いた
その瞬間、ガシッと俺の手首を掴んだ
rt
大柄な男
男は嘲笑しながらもグイグイと引っ張る
rt
これがなかなかの力強さで、逃げようにも振り払うことができない
大柄な男
大柄な男
男の目が妖しく光る
大柄な男
大柄な男
rt
男が身体を向けたその先──そこは、トイレの個室だった
大柄な男
rt
喉の奥が鳴った
身体中から一気に血の気が引いていく
rt
これは流石にまずい
我に返り、男から離れようと必死に抵抗を始める
大柄な男
rt
大柄な男
大柄な男
こいつ、全く話が通じない
大柄な男
必死の抵抗も虚しく、どんどん個室へと近づいていく
大柄な男
男もしびれを切らしたのか、次第に怒りを含んだ口調になっていく
大柄な男
rt
凄まじい剣幕に、ビクリと身体が硬直する
大柄な男
大柄な男
rt
恐ろしさばかりが脳内を侵食していく
rt
頭が真っ白になっていく
rt
頼みの綱だった連絡手段も途絶えてしまった今の俺には、もはやどうすることも出来ない
冷や汗が背中をつたう
rt
なんとか心を落ち着かせようとする
明らかに大丈夫ではないが、そう祈るしか無かった
大柄な男
だが、ついに男が個室のドアノブに手をかけた
rt
抵抗したいのに、声も身体も言うことを聞いてくれない
rt
その時だった
ガラッ!
rt
不意に、出入口の扉が乱暴に開いた
大柄な男
男の動きが一瞬止まったが、腕を掴む力は一層強くなった
重い足音が、一歩、また一歩と近づいてくる
俺は無意識に息をひそめ、その音へ耳を傾ける
?
重いため息
?
少し掠れた、聞き馴染みのある低い声
rt
心臓がドクンと跳ねる
声の主へ、バッと視線を向ける
細身で高い背に、揺れる赤い髪
rt
息が止まった
声にならなかった
それは、俺が何よりも望んでいた姿だったから
ky
視線の先には、机に突っ伏していたはずの彼───キヨくんが立っていた
……To be continued