マフィアパロディ

その瞬間、風と共に頬に痛みが走る。

嫌な予感はしたが、まさか本当に 洗脳されているとは。

ｷﾝｯ

ナイフの刃と刃が重なり合う。

鳩尾に一発拳がヒット。

痛みで呼吸がしずらい。

あのパソコンで指定された場所まで 来た。

「あ！居た〜。」

いつもより低い声で話すと、康二の肩がびくりと揺れる。

俺自身が怒りに支配されてしまった。

……俺は、もう自分では止まれない。

涼太との戦いが始まってから数分。

俺の体はもうボロボロだった。

俺はふらふらと立ち上がって、再び ナイフを構えた。

ビリッと腕や足が痛む。

至る所から出血している。

ｷﾝｯ

その合図と共に、俺と涼太のナイフは 重なる。

涼太は俺よりはスピードは遅いものの、 力が強い。

俺は涼太ほどの力は無いが、スピードは 誰よりも速い。

……それなのに、俺は。

いつも涼太に負けていた。

今までで1度も勝った事は無く、 俺は常に涼太の背中を見ていた。

あんなに強い舘さんでも、 あんなに速いしょっぴーでも、 勝てない照兄なのに。

照兄は思うように動けていない。

それに。

彼はただ照兄の攻撃を受け止めている だけ。

彼の表情は余裕に満ちていた。

布の様なもので照兄の口を 覆い、

最初こそは勿論抵抗していたものの、 ぱたりと動かなくなってしまった。

俺は呆然としていた。

何も、出来なかった。

煙幕が張られる。

視界が悪い中、聞こえたのは。

彼はいつの間にか消えてしまっていた。