お父さんの見ていた景色【短編】

小さい時

お父さんは、 いつもベランダに居た

煙草を吸いながら

ベランダから外を見ることもあったけど

何も持たずに

ただ、

遠くを見ていることもあった

｢お父さん？｣

私が家の中から話しかけても

｢……｣

お父さんは遠くを見ていた

私は窓を開け

お父さんに話しかけた

｢おとーさん｣

｢……あ、｣

｢どうしたんだ？｣

｢いや、 何見てるのかなぁ って思ってさ｣

｢...ただ空を見てる｣

｢何も考えずに…な｣

お父さんは

そう言って微笑んでいた

｢私も見たいっ！｣

でも

｢今はダメだ｣

｢大きくなったらな？｣

としか言わなかった

お母さんに聞けたらな

そう思ったけど

お母さんは家には居なかった

｢ねぇお父さん｣

｢ん？｣

｢お母さんって何処にいるの？｣

｢……それも大きくなってから｣

私は

色々な謎を抱えながら今まで生きてきた

私は大学生になり

一人暮らしすることになった

その時私はお父さんとの

ある約束を思い出した

｢私も見たいっ！｣

｢大人になったらな｣

｢お母さんって 何処にいるの？｣

｢大人になったら話すよ｣｣

ﾎﾟﾄｯ

感動とともに

涙がこぼれ落ちてくる

ﾎﾟﾛｯ

私は涙を拭き取りながら

走った

これからの未来へと……

終わり