放課後のチャイムが鳴った瞬間、
風夏は鞄を抱えてすぐに席を立とうとした
実央
後ろから声がして、足が止まる
振り向くと、黒髪ボブの伊藤実央が手を振っていた
実央
風夏
実央
実央は笑って、風夏の腕を軽く引いた
その自然な仕草に、風夏の胸が少しだけ熱くなる
学校の門を出ると、春の風が頬をなでた
実央
風夏は一瞬、足を止めた
風夏
実央
実央はそれ以上、何も聞かなかった
ただ、少し笑って言った
実央
実央
風夏
実央
実央
風夏の胸の奥で、何かがじんわりと溶けていく
その日、家に帰ってからもずっと、
実央の言葉が耳の奥で響いていた
翌朝
教室に入ると、いつものように秋元亜寿紗たちが笑っていた
亜寿紗
美礼
心臓がぎゅっと縮む
だけど、今日は違った
実央
実央が明るく声をかける
その一言で、クラスの空気が一瞬止まった
風夏はゆっくり顔を上げて、小さな声で返した
風夏
その瞬間、
秋元たちの笑い声が遠くに聞こえた気がした
──風夏の“春”が、確かに始まっていた
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