売れない小説家・僕は、才能と現実の狭間でもがき続けていた。
書けない日々、減っていく貯金、積み重なる自己嫌悪。
そんな生活の中、ある日突然、一匹の元野良猫が勝手に住みつく。
名前は皮肉にも「先生」。
何食わぬ顔で家に居座り、食卓を荒らし、原稿の上を踏み荒らす猫。
その存在は、崩れかけた夫婦の日常に、妙なリズムをもたらしていく。
一方で、彼を支える妻・真紀は、現実と向き合いながら働き続けていた。
優しさと限界の間で揺れ、ついにぶつかる夫婦。
「苦しんでるだけじゃ、ご飯は食べられない」
その言葉が、作家としての逃げを突きつける。
さらに、容赦ない担当編集・新田の叱責。
「売れないことを美徳にするな」
突きつけられる現実と、見透かされる弱さ。
それでも——
猫は何も変わらず、ただそこにいる。
何食わぬ顔で、すべてを引っ掻き回しながら。
逃げることも、壊れることもできないまま、
小説家はようやく、自分の“情けなさ”と向き合う。
そして書き上げた一作は、
大ヒットにはならない。だが——
確かに、誰かの生活に届く物語となる。
これは、成功の物語ではない。
ましてや救済の物語でもない。
それでもなお、
それでも生活は続いてしまう人間たちの、静かで、少しだけ可笑しい再生の記録。
そして——
どんな日でも変わらず、
猫は原稿を読まない。