名の売れたヤンキーとして知られる花街琉叶、十九歳。
喧嘩なら誰にも負けない。運動神経も抜群で、何でも器用にこなす琉叶には、周囲には決して見せない一面があった。それは、人気アイドルグループ《aspartame ℬℴ𝓎𝓈》のドラム担当・来堂悠結斗と暮らしていること。
二十歳の悠結斗は、かつては琉叶と同じ「元ヤン」だった。しかし現在は、ステージの上で「雷雨」というペンネームを背負い、音楽にすべてを懸けている。
正反対の世界で生きる二人には、誰にも言えない秘密がある。
悠結斗は、自分がゲイであることをコンプレックスにしていた。
周囲からの期待、アイドルとしてのイメージ、そして過去の自分。すべてを守るため、悠結斗は自分の本当の気持ちを押し殺していた。
そんなある日、琉叶は偶然、悠結斗が隠していた「ある秘密」を知ってしまう。
「……俺、お前のこと、何も知らねぇんだな」
それをきっかけに、二人の間に少しずつ距離が生まれていく。
そんな中、琉叶は突然「この春で悠結斗の前から消える」と決意する。
なぜ琉叶は、大切な場所を自ら捨てようとするのか。
そして悠結斗は、最後まで言えなかった本当の気持ちを伝えられるのか。
桜が散るまでの短い季節。
二人が選ぶのは、別れか、それとも――。
「この春、君を捨てるまで。」
それは、琉叶が自分自身についた、最後の嘘だった。