夜は、僕の名前を知らない。
だからこの部屋では、僕は誰でもない。
リーダーとしての顔を外に置き、
匿名の指先だけが、静かな光の中で息をしている。
深夜の照明は淡く、
僕の頬の赤みと、胸のざわつきをそっと照らす。
世界が眠る時間。
誰も僕を呼ばない時間。
その静寂の中で、僕はひとつの物語を綴る。
主人公は、センターの勇斗。
そして、顔のいい柔太朗。
現実の二人は近すぎて、眩しすぎて、
僕の心を静かに追い詰める。
誰にも言えない。
ファンにも、メンバーにも、スタッフにも。
ましてや本人たちには。
だから僕は、名前を捨てて書く。
匿名の夜に沈み、
誰かの心にだけ届く物語を差し出す。
けれど、夜は知らない。
この物語が、やがて現実を揺らすことを。
この秘密が、僕自身を追い詰めることを。
そして――
勇斗と柔太朗が、物語の中へ歩み寄ってくることを。
夜は僕の名前を知らない。
でも、二人は僕を見つけてしまう。
物語と現実の境界が滲み、
三人の距離が曖昧になるとき、
僕の世界は静かに、確かに動き出す。