そのおばさんは
前触れもなく
突然やって来た
ピンポーン
男
男
男は寝ぼけ眼を指で擦りながら スマホで時刻を確認する
男
男
ピンポーン
男
男
男
無視しておけば 観念して帰るだろう
男はそう考えて もう一度眠りにつこうとする
しかし
ピンポーン
ピンポーン
男
男
男
しかし男の声も虚しく インターフォンが 鳴り止む事は無かった
ピンポーン
ピンポーン
男
ドンドンドンドン
次はドアを力強く叩き始めた
男
男
男
ドンドンドンドン
ドンドンドンドン
男
男
男
男
男は常軌を逸した 奇行に観念してドアを開ける
しかしそのドアを開けるという行為は 自分を破滅に導く結果になろうとは
この時の男は 知る由も無かったのだ
ガチャ
男
男
男
おばさん
男
そこに立っていたのは 見ず知らずのおばさんだった
男
何処にでも居る普通のおばさん
男がそのおばさんに 抱いた第一印象はその程度だった
男
男
男
男
男
おばさん
男
男
おばさん
男
男
おばさん
男
おばさん
男
おばさん
男
おばさん
男
男
男
おばさん
男
おばさん
男
男
おばさん
男
男
男
男
ガチャ
おばさん
男
男
男
男
男
男
男
あのおばさんが 来る事はもう無いだろう
男はそう安心しきっていた
翌日
ピンポーン
インターフォンが鳴り響く
男
男
男はまだ開ききっていない 瞼を懸命に開きながら スマホで時刻を確認する
男
男の脳裏には 昨日のおばさんの姿が 浮かんでいた
男
ドンドンドン
ドンドンドン
男
ドンドンドン
男
ドンドンドン
男
ドンドンドン
ドンドンドン
男
男
男
ガチャ
男
おばさん
男
そこには、昨日やって来た おばさんの姿があった
男
男
男
おばさん
男
男
おばさん
男
おばさん
男
男
男
男
男
おばさん
おばさん
男
男
男
男
男
おばさん
男
男
男
男
ガチャ
おばさん
男
男
男
男
男
男
しかし男の悪い予感は 不幸な事に的中してしまった
翌日
おばさん
そのまた翌日
おばさん
そのまた翌日
おばさん
そのまた翌日
おばさん
そのまた翌日
おばさん
男は怒りのままに 部屋で暴れる
男
男
男
男
男
男
男
男
そう。おばさんは毎日 決まって午前11時に 部屋にやって来るのだ
男
男
男
ピンポーン
男
男
男
ガチャ
男はゆっくりどドアを開けて 外の様子を伺う。
おばさん
そこには例の おばさんが立っていた
男
男
男
男
おばさん
男
男
ガチャ
隣人
騒ぎを聞きつけた 隣人が部屋から出て来る。
男
隣人
隣人
男
隣人
隣人
男
男
男
そこには先程まで居た おばさんの姿は既に無かった
男
隣人
男
男
男
隣人
隣人
男
隣人
隣人はご立腹と言った様子で 自室に帰っていく
男
男
男
男
男
男
男
男
男はノイローゼになっていた
その日の夕方
男が病院に行くと 鬱、自律神経失調症と 医者から診断された
こうなってしまっては まともに仕事をする事は厳しい
この時の男は 人生最大の絶望を味わっていた
それからもおばさんは 2日連続でやって来た
昨日が──
おばさん
そして今日
おばさん
男は既に身も心も ボロボロに傷ついていた
しかしそんな絶望の渦中に居たが 心のどこかでは
「やっと解放されたんだ」
という安心感があった
おばさんが最初に訪れた時 貸してくれと言っていた金額は 1000円だった
それから、日を追うごとにその 金額は100円づつ減っていき 今日、ついに100円になった
したがって明日は0円 当然0円貸すなど無理な話
だからおばさんが 来る事はもう無い
おばさんのせいで 寝不足気味だった男は
そう安心して深い眠りについた
翌日
男の眠りを、嫌と言うほどに聞き慣れた『あの音』が妨げる。
ピンポーン
男
男
男
男は手探りでスマホを探す
男
男
男
男はスマホを手にして 時刻を確認する
男
スマホのディスプレイには 午前11時と表示されていた
男
不気味なくらいに規則正しく 11時丁度に鳴り響くインターフォン
男
男
ピンポーン
男
ピンポーン
男
男
ピンポーン
ピンポーン
ピンポーン
男
男
男は生唾を飲み込み
ドアを開けた先に 大家がいる事を神に祈りながら ゆっくりとドアを開ける
ガチャ
男は恐る恐る顔をのぞかせる
そこに居たのは──
おばさん
例のおばさんだった
男
男
男
男
男
男
おばさん
男
その瞬間──
男の頭で何かブチッと 音を立てて千切れる
気づくと男は おばさんの首を絞めていた
おばさん
男
おばさん
男
男
おばさん
男
男
おばさん
男
男
男
男
男
ガチャ
すると隣人の部屋のドアが開く
隣人
隣人
男がおばさんの首を絞めている という現状を目の当たりにし 隣人の目が強張る
隣人
隣人
男
男
隣人
男
男
隣人
男は隣人に思いっきり殴られ その場に倒れ込む
男
隣人
隣人
おばさん
おばさんはそう言うと 足早に去っていく
男
男
隣人
俺は隣人に取り押さえられてしまう
男
男
男
隣人
男
男
おばさん
おばさん
おばさん
おばさん
おばさんは不適な笑みを浮かべる
翌日の午前11時
おばさん
おばさん
しかし何度インターフォンを 鳴らしても、男が 出て来る気配がない
おばさん
おばさん
おばさん
おばさんはドアノブを回す
ガチャ
おばさん
おばさん
男は首を吊って自殺していた
おばさん
おばさん
おばさん
おばさん
おばさん
おばさん
おばさんが外に出ると 丁度帰宅して来た 隣人と出くわす
隣人
おばさん
隣人
おばさん
隣人
おばさん
隣人
隣人
隣人
隣人
おばさん
おばさん
おばさんはそう言って会釈をすると その場から立ち去る
隣人
隣人
隣人
隣人
隣人
隣人は男の部屋を見つめる
隣人
隣人
おばさんはアパートを離れると 軽快な足取りで歩く
おばさん
おばさん
おばさん
おばさんは雑居ビルにある 小さなオフィスのような 部屋にやって来た
おばさん
社長
おばさん
おばさん
社長
社長
おばさん
おばさん
おばさん
社長
社長
おばさん
おばさん
おばさん
社長
社長
社長
おばさん
おばさん
おばさん
社長
社長
おばさん
おばさん
社長
社長
社長
おばさん
社長
社長
おばさん
おばさん
おばさん
おばさん
社長
社長
おばさん
おばさん
社長
社長
社長
借金をはテーブルの上に 分厚い茶封筒を置く
おばさん
社長
社長
社長
おばさん
社長
社長
おばさん
闇金事務所を出たおばさんは 有頂天といった様子で
スキップしながら 時折鼻歌を 口ずさみながら歩く
おばさん
おばさん
おばさん
おばさん
おばさん
おばさんは被っていた 変装用のマスクを脱ぎ捨てる
おばさん?
おばさん?
おばさん?
おばさん?
END
コメント
2件
やられた!出だしがよくあるホラー系だっただけにこんな展開になるとは思いもしませんでした。面白い通り越して脱帽です🎩