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そのおばさんは

前触れもなく

突然やって来た

ピンポーン

う・・うん?

だ・・誰だ?

男は寝ぼけ眼を指で擦りながら スマホで時刻を確認する

11時か・・・

誰だよ!こんな時間に

ピンポーン

電気代かな?

まぁ、止まっても
後からコンビニで
払えばいいか

もうひと眠りだな

無視しておけば 観念して帰るだろう

男はそう考えて もう一度眠りにつこうとする

しかし

ピンポーン

ピンポーン

あー!もう!うるせー!

電気止めてーなら
さっさと止めて帰れよ!

うぜーな!ったく!

しかし男の声も虚しく インターフォンが 鳴り止む事は無かった

ピンポーン

ピンポーン

しつけーな!

ドンドンドンドン

次はドアを力強く叩き始めた

はぁ?まじかよ!

イカれてんのか?

異常すぎだろ!!

ドンドンドンドン

ドンドンドンドン

あー!わーった!
わーったよ!!

出りゃいいんだろーが!

出りゃよ!!

ったく!
頭湧いてんのかよ!

男は常軌を逸した 奇行に観念してドアを開ける

しかしそのドアを開けるという行為は 自分を破滅に導く結果になろうとは

この時の男は 知る由も無かったのだ

ガチャ

さっきから
うるせーんだよ!

ちったぁ近所迷惑も──

って、ん?

おばさん

・・・・・

だれ?

そこに立っていたのは 見ず知らずのおばさんだった

(なんだ?このババアは?)

何処にでも居る普通のおばさん

男がそのおばさんに 抱いた第一印象はその程度だった

あの・・なんなんスか?

うるせーんスよ!

ピンポンドンドン!

非常識にも程があるっスよ

迷惑なんスよ!

おばさん

・・・・・

あの・・なんか
言ったらどうっスか?

あんたに言ってんスよ?

おばさん

・・・・・

(あー!クソババアが!)

(なんなんだよ!)

おばさん

1000円・・・

はぁ?せん・・?

おばさん

1000円貸してください

はぁ?1000円?

おばさん

はい!1000円
貸してください

カネ?

おばさん

1000円貸してください

いや、意味不明だわ!

なんで俺が
見ず知らずのあんたに

金貸さなきゃ
いけねーんスか?

おばさん

何でですか?
1000円だけですよ?

いや、だけって・・・

おばさん

1000円貸してください

だから断るって!

他あたれや!他!

おばさん

1000円貸してください

だから無理だっつーの!

1000円だろうが
100円だろうが

見ず知らずの
あんたに貸す訳
ねーだろ?

さっさと帰れよ!

ガチャ

おばさん

・・・・・

なんだ?あのババア!

いきなり来たかと思えば
1000円貸せだ?

意味わからねーよ!

気色悪すぎだろ!

まぁ、世の中には
変な奴って居るしな

気にする必要もねーか!

そうと決まれば
もうひと眠りだな!

あのおばさんが 来る事はもう無いだろう

男はそう安心しきっていた

翌日

ピンポーン

インターフォンが鳴り響く

う、うー・・ん

誰だよ・・・

男はまだ開ききっていない 瞼を懸命に開きながら スマホで時刻を確認する

11時・・・

男の脳裏には 昨日のおばさんの姿が 浮かんでいた

いや・・まさか・・な

ドンドンドン

ドンドンドン

おい!おい!
マジかよ!ふざけんな!

ドンドンドン

もう!なんなんだよ!

ドンドンドン

俺が何したってんだよ

ドンドンドン

ドンドンドン

分かった!分かった!

出る!出る!出る!

ったく!何が目的なんだよ

ガチャ

あの・・・

おばさん

・・・・

・・・・

そこには、昨日やって来た おばさんの姿があった

(またこいつかよ!)

あの・・なんスか?

金なら昨日も──

おばさん

900円貸してください

は?

900円?

おばさん

900円貸してください

いや、何で
100円減ってんスか?

おばさん

900円貸してください

(だぁー!くそが!)

(同じ言葉ばっか
連呼しやがって!)

(RPGの村人気取りか?
このクソババアが!)

あの・・昨日も
言ったと思いますけど

金なら貸しませんよ?

おばさん

昨日は1000円で
今日は900円です

おばさん

900円貸してください

だからそーゆー
問題じゃねーのよ!

金額の問題じゃねーの!

わかる?

見ず知らずの奴に
俺が金貸す理由が
ねーつってんの!

分かるだろ?
俺が言ってる事!

おばさん

900円貸してください

(あ、こいつ
話通じねーわ)

ケッ!一生ほざいてろ

貸せねーもんは
貸せねーんだよ!

とっとと帰れ!

ガチャ

おばさん

・・・・

いやいや!

あいつ頭沸いてるわ

2日連続とか
普通じゃねーよ

もしかして明日も
来るなんて事・・

無い・・よな?

さすがに・・・

しかし男の悪い予感は 不幸な事に的中してしまった

翌日

おばさん

800円貸してください

そのまた翌日

おばさん

700円貸してください

そのまた翌日

おばさん

600円貸してください

そのまた翌日

おばさん

500円貸してください

そのまた翌日

おばさん

400円貸してください

男は怒りのままに 部屋で暴れる

だぁーくそ野郎!

何なんだよ!アイツ!

毎日毎日毎日毎日!

バカのひとつ覚えみてーに
金貸せ貸せ言いやがってよ

なんか恨まれる
事でもしたか?

いいや!違う!
あんなババア知らねーし

しか気持ちわりーくらいに

毎日同じ時間に来やがって

そう。おばさんは毎日 決まって午前11時に 部屋にやって来るのだ

何が目的なんだよ!
あのクソババア!

どうせ明日も来るだろ?

次来たら問い詰めてやる!

ピンポーン

来た!来やがったな!

待ってろババア!

今日こそ
問い詰めてやる!

ガチャ

男はゆっくりどドアを開けて 外の様子を伺う。

おばさん

・・・・

そこには例の おばさんが立っていた

おい!コラ!ババア!

懲りもせず毎日毎日
来やがってよ!

貸さねーってのが
分かんねーか!コラ!

これ以上しつこいなら
たと女でも容赦──

おばさん

300円貸してください

!!!!!!

まだ言うかゴルァ!

ガチャ

隣人

あの・・

騒ぎを聞きつけた 隣人が部屋から出て来る。

あ?なんだ?コラ!

隣人

いや、なんだと言われても
うるさいんですよ

隣人

静かにしてくれませんか?

黙れ!ゴミが!

隣人

ゴミって・・・

隣人

逆ギレですか?

うるせーよ!

文句があんならな!
このババアに──

ってあれ?

そこには先程まで居た おばさんの姿は既に無かった

居ねー・・・

隣人

誰も居ない
みたいですけど?

いや、さっきまでは
ここに居たんだよ・・・

俺の部屋のドアを
ドンドン叩いて

毎日毎日金貸せって・・・

隣人

まぁ、いいですけど
とりあえずもう
騒がないでもらえます?

隣人

次同じ様に騒いだら
大家さんに言いますんで

いや!だから──

隣人

それじゃ!

隣人はご立腹と言った様子で 自室に帰っていく

くっ・・・

あぁあぁ亜ァ亞ァァァあ!

何なんだよ!何なんだよ!

くそ!クソ!糞!クソォ!

あーイライラする!

俺が何したってんだよ!

あぁあぁ亜ァ亞ァァァあ!

クソがぁぁぁぁぁぁ!

男はノイローゼになっていた

その日の夕方

男が病院に行くと 鬱、自律神経失調症と 医者から診断された

こうなってしまっては まともに仕事をする事は厳しい

この時の男は 人生最大の絶望を味わっていた

それからもおばさんは 2日連続でやって来た

昨日が──

おばさん

200円貸してください

そして今日

おばさん

100円貸してください

男は既に身も心も ボロボロに傷ついていた

しかしそんな絶望の渦中に居たが 心のどこかでは

「やっと解放されたんだ」

という安心感があった

おばさんが最初に訪れた時 貸してくれと言っていた金額は 1000円だった

それから、日を追うごとにその 金額は100円づつ減っていき 今日、ついに100円になった

したがって明日は0円 当然0円貸すなど無理な話

だからおばさんが 来る事はもう無い

おばさんのせいで 寝不足気味だった男は

そう安心して深い眠りについた

翌日

男の眠りを、嫌と言うほどに聞き慣れた『あの音』が妨げる。

ピンポーン

う、うー・・ん

何だよ・・・

人がせっかく
気持ち良く寝てんのによ

男は手探りでスマホを探す

えー・・っと

この辺に・・・

あ!あった!あった!

男はスマホを手にして 時刻を確認する

・・・・・・

スマホのディスプレイには 午前11時と表示されていた

11時・・・

不気味なくらいに規則正しく 11時丁度に鳴り響くインターフォン

いや・・まさか・・

だって今日は0円だしな

ピンポーン

あ!あれだろ?
大家さんだろ?

ピンポーン

あの隣人が大家に
チクりやがったんだな?

あのやろー・・・

ピンポーン

ピンポーン

ピンポーン

・・・・・

ゴクリ・・・

男は生唾を飲み込み

ドアを開けた先に 大家がいる事を神に祈りながら ゆっくりとドアを開ける

ガチャ

男は恐る恐る顔をのぞかせる

そこに居たのは──

おばさん

・・・・

例のおばさんだった

な、なんで?

だって・・昨日・・

100円って・・言われたから

その先は・・もう

0円だから・・・

もう・・終わりだろ?

おばさん

1000円貸してください

!!!!!!!

その瞬間──

男の頭で何かブチッと 音を立てて千切れる

気づくと男は おばさんの首を絞めていた

おばさん

うぐぅ・・・

なんでだ!なんでなんだ!

おばさん

うぐぅ・・・

何で元に戻ってんだ?あ?

俺が今まで耐えてたのは
何だったんだよ!コラ!

おばさん

うぐっ・・・

どうしてだよ・・・

何でこうまでして
俺を!!!!!

おばさん

うぐっ・・・

いや・・てめーの
目的がどうとか・・

この際どうでもいい

このままてめぇを──

絞め殺してやる!!!

それで解決だコラ!!

ガチャ

すると隣人の部屋のドアが開く

隣人

あの・・いい加減に──

隣人

!!!!!!

男がおばさんの首を絞めている という現状を目の当たりにし 隣人の目が強張る

隣人

ちょ!アンタ!

隣人

何やってんだ!

うるせぇ!うるせぇ!

てめぇに関係ねーだろ

隣人

バカな真似はやめろ!
その手を離すんだ!

てめぇに俺の──

何が分かる!!!!

隣人

やめろって言ってるんだ!

男は隣人に思いっきり殴られ その場に倒れ込む

うがぁ!!

隣人

おばさん!
逃げてください!

隣人

この人は俺が
何とかしますから!

おばさん

ありがとう・・・

おばさんはそう言うと 足早に去っていく

コラ待て!ババア!

待ちやがれ!
クソババアがぁ!

隣人

大人しくしてろ!

俺は隣人に取り押さえられてしまう

あの・・ババアを

俺に・・殺させろ・・・

でなきゃ・・

隣人

黙れ!

クソが!

クソがぁぁぁぁ!

おばさん

・・・・・

おばさん

もうそろそろかしら?

おばさん

多分明日には・・・

おばさん

ふふふ

おばさんは不適な笑みを浮かべる

翌日の午前11時

おばさん

よし!11時になったわ!

おばさん

いつまで耐えれるかしら?

しかし何度インターフォンを 鳴らしても、男が 出て来る気配がない

おばさん

おかしいわね?

おばさん

いつもならブツブツ
独り言言ってる声が
聞こえて来るんだけど

おばさん

どれどれ・・・

おばさんはドアノブを回す

ガチャ

おばさん

あら・・開いてるわね

おばさん

・・・・・

男は首を吊って自殺していた

おばさん

ホッ・・・

おばさん

やっと死んだか

おばさん

まぁ、かなり
粘った方だけど

おばさん

やっぱ昨日の
1000円の効果は
絶大だったようね

おばさん

まぁ、どうでもいいけどね

おばさん

となれば、こんな所に
長居は無用ね

おばさんが外に出ると 丁度帰宅して来た 隣人と出くわす

隣人

あれ?あなたは
昨日の・・・

おばさん

ああ・・貴方ね

隣人

昨日は大丈夫でしたか?

おばさん

ええ・・大丈夫よ

隣人

そうですか・・良かった

おばさん

昨日はありがとね

隣人

いえ、とんでもないです

隣人

まぁ、やっぱり
相手が女性でも

隣人

容赦が無い奴って
一定数居ますから

隣人

気をつけて
くださいね?

おばさん

ええ

おばさん

ご忠告ありがと

おばさんはそう言って会釈をすると その場から立ち去る

隣人

・・・・・

隣人

昨日、あんな目に
遭ったって言うのに

隣人

今日も来てるなんて

隣人

不思議な人だなぁ・・・

隣人

でも今日は静かだな

隣人は男の部屋を見つめる

隣人

まぁ、昨日の事で
反省してくれたのかな?

隣人

ま、いっか

おばさんはアパートを離れると 軽快な足取りで歩く

おばさん

さてと!無事に奴も
死んでくれた事だし

おばさん

社長に報告に行こっと

おばさん

今回は報酬
はずんでくれるかな?

おばさんは雑居ビルにある 小さなオフィスのような 部屋にやって来た

おばさん

や❤︎社長❤︎

社長

よぅ!終わったか?

おばさん

えぇ・・・

おばさん

無事に首吊りで
自殺してくれてたわ

社長

おっし!上出来だ・・・

社長

コレでヤツの借金は
保険金でチャラだな

おばさん

でも良く考えたわよね

おばさん

1人の多重債務者を
生命保険に加入させて

おばさん

自殺に追い込んで
借金回収しようなんてさ

社長

一般的に自殺では
保険金はおりねーと
思われてるが

社長

実はそうじゃねー

おばさん

そうよね

おばさん

保険金がおりない自殺は

おばさん

保険金目的と
判断された自殺に
限定されるものね

社長

その通りだ・・・

社長

保険金加入者が
正常な判断が困難な
精神状態での自殺だったら

社長

保険金目的じゃねーと
判断されて
保険金がおりるんだ

おばさん

その点ヤツは病院で
鬱、自律神経失調症と
診断されてるから

おばさん

その条件をクリアしてる

おばさん

ってわけよね❤︎

社長

ああ!そうだ!

社長

これで利息含めて
600万ゲッツだ

おばさん

元の元金は
20万なのにね

おばさん

笑っちゃうわ

社長

まぁ、仕方ねーさ

社長

こっちは善意で金を
貸してやったんだ

社長

その恩を仇で返す
不届者にゃそれ相応の
罰が必要だ!だろ?

おばさん

まぁね❤︎

社長

しかし、すげーよなお前

社長

こうも1人の男を自殺に
追い込めるもんか?

おばさん

人間なんてね
頭で考えてるよりも

おばさん

ずっと繊細で脆いものよ?

おばさん

そこに少しだけ亀裂を
入れてあげるだけで
コロッと逝ちゃうのよ

おばさん

まぁ、私がターゲットに
したんなら
決して逃さないけどね❤︎

社長

お〜怖い怖い

社長

つくづくお前が味方で
良かったって思うぜ

おばさん

それより、社長?

おばさん

そろそろ今回の
報酬の話をしない?

社長

ああ、そうだな・・・

社長

今回は入って来る
金額がでけーからな

社長

300でどうだ?

借金をはテーブルの上に 分厚い茶封筒を置く

おばさん

うっそ!?そんなに?
いいの?社長❤︎

社長

報酬が少ねーからって
他社(よそ)に行かれたら
大損だからな!

社長

お前程のヤツは
探そうと思っても

社長

そうそう見つかる
もんじゃねーからな

おばさん

嬉しい事
言ってくれるわね❤︎

社長

だからよ、これからも
何かあったら頼むぜ?

社長

期待してっからな?

おばさん

はぁーい❤︎

闇金事務所を出たおばさんは 有頂天といった様子で

スキップしながら 時折鼻歌を 口ずさみながら歩く

おばさん

ふーん❤︎ふーん❤︎

おばさん

いやぁ、大金
貰っちゃった❤︎

おばさん

社長には近いうちに
サービスしなくちゃ❤︎

おばさん

あ、そうだ!

おばさん

もう変装する必要ないわね

おばさんは被っていた 変装用のマスクを脱ぎ捨てる

おばさん?

ふぅ〜・・

おばさん?

スッキリした

おばさん?

さてと!大金も
手に入った事だし

おばさん?

週末はハワイで
バカンスかな

END

この作品はいかがでしたか?

100

コメント

2

ユーザー

やられた!出だしがよくあるホラー系だっただけにこんな展開になるとは思いもしませんでした。面白い通り越して脱帽です🎩

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