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微かな振動と通知音で目が覚める。

…あれ、クロじゃない。

メイ

…ん"……

メイ

…起きてます起きてます……

昨日のことなど気にしないとばかりに、 いつも通り遠慮なしに通知を鳴らす。

…そろそろ既読つけないと怒られそう。

かざき

おはようございます

伊織

あ やっと起きた

伊織

おはよ

かざき

朝からなんで僕のこと呼んだんですか?

伊織

余命宣告の夢みた

伊織

ちょっと怖かった

かざき

不吉な夢

伊織

かざき

それだけですか?

伊織

それだけ

伊織

もう寝る

伊織

おやすみ

かざき

あちょっと待って

伊織

メイ

(…晴れてる…)

メイ

(これ、意外とチャンスでは…??)

メイ

どこかに誘って、

メイ

先輩をにこにこにさせてやる

メイ

…先輩、甘いもの好きかな…?

メイ

誘ってみよう

かざき

甘いものたべに行きませんか??

伊織

甘いもの?

かざき

晴れてますしなんかたべに行きましょ!

かざき

とにかくなんかたべに行きたい気分です

伊織

んー

伊織

ええよ

伊織

行こっか

伊織

クロも一緒に

かざき

もちろん!

かざき

時間とかまた後々伝えますね

伊織

りょーかい :)

メイ

(これまた洒落た顔文字使うなあ…)

メイ

…どこにしよっかな

メイ

…駅前周辺かなあ、やっぱり

メイ

よし、そうしよう

─思わぬ(いろんな意味で)チャンスに自分も心を踊らせつつ、

"海音"とのトークルームをタップする。

メイ

えーと─

メイ

─っていう訳

メイ

晴れてるしなんか食べ行こって誘ったら

メイ

意外にいい反応もらえたんだあ

クロ

…さすがの行動力

クロ

としか言いようがないな

メイ

でしょ?

クロ

…なんか遅くないか?先輩

メイ

準備に時間かかるんだよ、きっとね

クロ

仕事してから来たりして

メイ

わーありそう

そんなことを言っていると、

いつもの甘い香りがする。

もう染み付いてしまっているのであろうそれは、 いつもより薄かった。

クロがめちゃくちゃびっくりしている。 猫みたい。かわいい。

その視線の先には…

伊織

おはよう

伊織

遅れてもた…ごめん

…先輩がいた。

昨日よりかは露出は少ないし、メイクもしてない。

昨日の綺麗さとは正反対の、 年相応の格好だった。

メイ

…あ、先輩

クロ

おはようございます

伊織

ん、おはよ

伊織

…んで、今日は何食べるん?

─あ、楽しみにしてたんだ。

頬を赤くして、口角が少し上がっている。

メイ

…いや、実は何食べようか迷ってて……

伊織

誘ったくせに?

メイ

…えへへ……

クロ

…先輩、なんか食べたいものないんですか?

先輩が目をぱちくりさせる。

先輩は口に手を当てて数秒間考えたあと、 表情をぱっと明るくさせた。

伊織

…なら……

─目の前に置かれた、 おそらくコストパフォーマンスガン無視のパンケーキ。

煌めくいちごに、とろとろのクリーム。 それらで飾られたパンケーキもふわふわ。

思わず口が緩んで開いてしまいそうになる。

メイ

美味しそう……!

クロ

…ちょっと、甘そう……だな…

伊織

おいし〜…

先にティラミスパンケーキを頬張った先輩。

目を細めて幸せそうに笑う。

伊織

…クロは食べんの?

クロ

甘いもの苦手なのでちょっと…

クロ

この量食べるとなると少し…

伊織

ふうん

伊織

…待って、食べすぎると、ってことは

伊織

ひとくちならいけるん?

クロ

まあ、多分

伊織

へー

伊織

……はい、あーん

メイ

あ゙〜!

恋人の特権をなんの躊躇いもなく奪おうとする先輩。

困惑するクロにぐいぐい迫っていく。

伊織

食べんの?

クロ

…先輩の彼氏じゃないんで

…よくやった!

伊織

…そう?

伊織

じゃ、メイにしてもらえば?

切り分けたいちごパンケーキをクロの口元へ持っていく。

メイ

あー

遠慮がちに開いた口に半ば無理やり押し込んだ。

クロ

…んむ

メイ

おいしい?

クロ

…おいしい

クロ

意外にさっぱりしてる

メイ

甘酸っぱいのが合うねえ

メイ

…さっきはちょっとひやひやしたよ

クロ

内心食べようかな…と

クロ

でも食べたらしばかれるだろ?

苦笑を浮かべるクロ。

もちろん、と肯定すると、

先輩が吹き出した。

伊織

っふふ……

伊織

仲ええなあ

伊織

…幸せそうで羨ましいわ

そう言って笑った先輩の目は、 昨日の闇が残っている気がした。

まるで愛おしい何かを見つめるような、 恋人に向けるとっておきの視線のような。

どこか孤独を抱えた瞳は、 未だ澄み切らない。

あめあめふれふれ、追憶とともに【創作if】

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