彼方の母
…………

真冬
(彼方さんの、お母さん……?)

彼方
…なんで、ここに

彼方の母
…放っておこうって思ってたはずなのに、勝手に体が動いて…

彼方
……っ

彼方の母
でも、必要なかったみたい

彼方
え…?

彼方の母
あんたの同級生の子、家まで怒鳴り込んできたのよ

彼方の母
昨日はその、白い髪の子

そう言って、彼方さんのお母さんは僕に向かって指をさした
彼方の母
あとさっき、3人きたわ

真冬
3人…?

彼方の母
赤い髪の子と、茶髪の子…あの2人は同じ学校なんでしょう?

彼方の母
あともう1人は、別の学校の子

彼方
……!

真冬
っ、それって…

真冬
(優と渉さん、天ちゃんのこと…?)

彼方の母
…あんたには、味方がたくさんいるんじゃない

彼方の母
っ…どうして、私には……

彼方
母さん……

彼方さんのお母さんは、涙を流しながらその場にへたり込んだ
青波
う……っ

青波
痛…

彼方の母
っ…青波さん…!

彼方の母
ごめんなさい!私、わたしっ…!!

彼方さんのお母さんは我に返ったようで、さっきとは一転して、青波さんに謝っていた
青波
ごめんね"日歌さん"、嫌なことさせて…

彼方
………

彼方の母
ど、どうしよう…血が…!!

彼方
っ…

彼方
母さん、救急車呼んで…!

彼方の母
あ、あぁ……っ!

どうやら気が動転しているようで、日歌さんはその場に座って固まっていた
彼方
真冬、救急車呼んで!!

真冬
彼方さん…!

彼方さんは着ていた上着を脱いで、青波さんの傷口に当てた
青波
いいよ、助けなくて……

青波
せっかく日歌さん…お母さんが、悪者を退治してくれたのに……っ

青波
彼方も、真冬くんも、その方がきっといいはずなんだからさぁ…

彼方
っ……

彼方
悪者じゃ、なかった

彼方
母さんのこと幸せにしてくれるって、いい人なんだなって思ってたよ

彼方
そうやって、思いたかった…っ

真冬
………っ

泣くのを必死に堪えながら青波さんを助けようとする彼方さんを見ていられず、僕は彼方さんの横に来た
真冬
彼方さん、電話お願いできますか?

彼方
真冬…

真冬
あと、駅員さんも呼んできてください!

彼方
…わかった

青波
……いいの真冬くん?僕のこと助けちゃってさぁ

真冬
もう話さないでください、傷口開きますよ

青波
さっきまで僕のこと殺そうとしてたのに…

真冬
っ…うるさいな、今だってそうですよ!

僕は有り余る力を出して、大きい声で青波さんを怒鳴った
真冬
彼方さんも、彼方さんのお母さんのことも沢山傷つけて…

真冬
あなたなんか大嫌いですよ!!

真冬
でも、彼方さんはあなたを助けたいんです

真冬
だったら、僕はそれについていくしかないんです!

青波
っ……

青波
まったく、お人よしだなぁ君は

青波
本当、優しすぎるよ………

真冬
(っダメだ、血が止まらない…)

真冬
(もっと力を込めないと、もっと…)

優
っまふ!

真冬
優…!!

渉
まふ…っ!

翔太
まふくん!

真冬
2人も……!

青波
いっ…!

優
圧迫止血はこれくらいじゃないと止まらないんすよ、ちょっと我慢しててくださいっ!

真冬
っ…ありがと、優

優
っお礼なら後でまたもらうから!

翔太
彼方さんは?どこにいるの…

真冬
彼方さんは駅員さん呼んできてくれてる、もう少しで来るよ…

渉
っ…とにかく、真冬も彼方さんも怪我はないんだな?

真冬
…うん

渉
…それならいい、ちゃんと後で事情聞かせろよ

真冬
……うん…っ

彼方
っ、真冬…!

すると彼方さんが、数人の駅員さんを連れて戻ってきた
青波
……真冬くんはすごいね、こんなに味方がいるなんてさ

青波
…………"羨ましいよ"……
