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ずっと思っていた。
羨ましい、 妬ましい、 恨めしい。
何かを投稿すれば、それだけで閲覧数は何百、何千件。
たくさんのいいねを貰って、人気ランキングに居座る、コイツが……
カエデ
坪井(つぼい)カエデは不満だった。
校長
校長
校長
校長
颯
ザワつく空気の中を割るように、1人の男の子が進んでいく。
生徒達
生徒達
生徒達
校長
カエデ
カエデ
カエデ
そう。カエデの周りには多すぎたのだ。
何かの分野で輝く『1番』が。
生徒達
生徒達
先生
生徒達
校長
カエデ
その数たるや、他の学年の生徒から見ても分かるほど。
もはや、5年2組の中で表彰された事がない生徒は、片手で足りる数しかいない。
欠伸を隠さないカエデも、その経験がない1人だった。
校長
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
列を成して教室へと向かうその時ですら、カエデの思考は自分自身への賞賛(しょうさん)の言葉に染まっていた。
まだ届いてすらいない、いや、届くかも分からない言葉だと言うのに。
教室に着き、席に着いたカエデはスマホを開く。
幸(さいわ)いなことに、担任はクラスメイトの1人の体調不良にかかりきりだ。当分教室には戻らないだろう。
それを察してか、教室の中の生徒達は、思い思いに空き時間を満喫(まんきつ)していた。
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
セラーノベルのトップ画面、その中心に表示された物を、カエデはじっとりと睨みつける。
そこにあったのは、とある恋愛小説。 ついこの間行われたコンテストで最優秀賞を受賞した、学園モノの王道ラブコメディだ。
自分の作品と比べても、圧倒的ないいね数とコメント数がついたそれに、カエデの奥歯がギリギリと鳴る。
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
追い出せばいいじゃん あんなヤツなんか
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
――桔花。
それは、いきなり現れたかと思えば、初投稿でありながらコンテストで大賞を受賞した、期待の新人。
加えて、ザ・王道を地で行く恋愛小説、コメント欄でのマメなやり取りが、その人気ぶりに火をつけた。
今や中学生、高校生女子から圧倒的(あっとうてき)な人気を誇(ほこ)る桔花の勢いは、留まることを知らない。
桔花は今日まで、『セラーノベル』の恋愛ジャンルで不動の地位を築き上げている。
まさに、時の人と言うにふさわしい有名ぶり。 この作家こそが、カエデの嫉妬の矛先(ほこさき)だった。
カエデ
カエデ
カエデの口角がにんまりと上がっていく。
かの人気者気取りのヤツを、必ずや除かなければならぬと決意したのだ。
カエデ
だが、空気を読まない足音が、その気持ちを吹き飛ばした。
先生
先生
カエデ
そして、その日の夕方。
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
桔花?
カエデ
先生
生徒達
カエデ
カエデ
先生
クラスメイト
カエデ
クラスメイト
カエデ
カエデ
クラスメイト
先生
クラスメイト
カエデの決起から、数時間後。
クラスメイト
クラスメイト
クラスメイト
生徒達
先生
生徒達
クラスメイトがガヤガヤと騒(さわ)ぎ始める。
甲高い声の混ざる喧騒(けんそう)を聞き流しながら、カエデはスマホの画面を食い入るように見ていた。
そこに映るのは、セラーノベルのホーム画面。
アカウントの画像は 忌々(いまいま)しい桔梗の花。
カエデ
カエデ
事はこれからだ。 この方法なら、うまく嵌(は)められるはずだから。
この、『なりすまし』ならば……
桔花にとてつもないダメージを、与えられるに違いない。
カエデ
そう笑うものの、ドクンドクンと嫌に高鳴る鼓動は落ち着かない。
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
カエデ
自らの掃除当番の場所へと走って向かう足は、どこか震えていた。