テラーノベルの小説コンテスト第4回テノコン 2025年1月10日〜3月31日まで

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我々怪異研究部!!

第17話 - 怪異レポート4《放課後の学校》

530

2024年12月26日

#司類

#冬彰

#ホラー

#ほのぼの

#感動

あかまる🍓🐾໊

職員室

司

失礼します！！

司

…って、彰人？

彰人

あれ、センパイ。こんにちは〜

司

お前も先生に呼ばれたのか？

彰人

はい。センパイも？

司

ああ。

先生

お、2人とも揃ってるな。

司

先生！

先生

何故呼ばれたのか分かるか？

司

え？いいえ、全く思い当たる節はありませんが…

彰人

俺も。

先生

そ、そうか……

先生

えっと、実は…残念ながら、

先生

お前ら、来週から補習だぞ。

司

…………え？？

彰人

うわ、だり〜

司

な、何故？！彰人はともかくオレも補習なんですか？！

先生

夏休みの課題、お前1つ出せて無かったぞ。その分だ。

司

な、何っ？！？出して無かったですか？！

先生

ああ。残念ながら。

司

うぉぉ……！！！何たる不覚…！！

先生

ちなみに東雲も2つ出せて無かったぞ。

彰人

えー、マジですか？出したと思ったんですけど。

先生

とにかく、2人とも来週の放課後、2ーC組に来るように。いいな？

司

わ、分かりました…

彰人

何で俺1年なのにセンパイと一緒なんですか？

先生

え？そりゃお前らは問題児なんだから、一緒に見ておかなきゃダメだろう。

司

え？！オレのどこか問題児なんですか？！

先生

深夜の学校へ不法侵入する奴が何を言う。

彰人

ま、そーですよね

司

一応、毎回申請は出してるんですが…

先生

許可が降りなければ意味無いからな？

先生

まぁ、とにかく来週必ず来いよ。

廊下

司

むむ……まさか補習になってしまうとは…

彰人

めんどくせ〜〜

司

また類になんと言われるか…

彰人

げ、俺もヤバいかも…

彰人

補習のこと、青柳には黙っててもらっていいですか？

司

むむ…オレも言いたくないが…部活を休まねばならんからな。

司

やはり正直に言うべきだろう。

彰人

えーーー

司

言ってしまえば自業自得だしな。

彰人

ま、そうですけど…

類

え、補習？

冬弥

終わってない課題が2つもあった…？

彰人

わ、悪ぃ

司

すまない…

類

君ってば、やっぱり忘れっぽいところあるよねぇ

冬弥

どの課題が出せてなかったんだ？

彰人

あ、それ聞くの忘れた。

冬弥

東雲…？

彰人

ご、ごめんって！

司

む、オレも聞くの忘れたな。

司

全部出したと思ってたんだが、

彰人

俺も。一応、青柳と全部終わらせたはずなんだけど。

冬弥

ああ。たしかに一通りやったはずだが…

類

う〜ん…まぁ、補習は仕方ないよね。その日は部活お休みかい？

司

ああ。すまんが休みにするから、そのまま先に帰っててくれ。

冬弥

分かりました。

1週間後

2ーC組

先生

お、ちゃんと来たな。

先生

とりあえず、補習のプリントはこれだけだ。終わったら提出しにきてくれ。

先生

先生は仕事があるから見ててやれんが…職員室にいるから、何かあったら言いに来なさい。

先生

あ、勝手に帰ったりはするなよ。

司

はい、分かりました！

彰人

うわ、なんかプリント多くね？

司

ああ…課題より多い気がするな…

彰人

しかも数学と英語かよ……

司

オレは理科だ…

彰人

えー、絶対出したと思うんですけど。

司

うむ、同じくだ。

彰人

ま、言っても仕方ねぇか。

司

だな。とりあえず手を動かそう。

彰人

分かんねぇ………

司

開始して5分も経ってないぞ

彰人

何がサイン、コサイン、タンジェントだよ…！！

彰人

こんなん絶対使わねぇよ……！！！覚えて何になるんだよ…！！

司

それは同意するが、言っても仕方ないからな…

彰人

センパイ、なんか面白い話して下さい。

司

唐突な無茶ぶりだな？！

彰人

どういうのでも良いんで！気分転換にお願いします。

司

むむ、そうだな…

司

あぁ、ならば放課後の九不思議を話してやろう。

彰人

お、いいですね。

司

これは学校の九不思議の、5つ目だ。

司

放課後、こうしてオレたちと同じように補習を受けている生徒がいた。

司

その生徒が補習を終え、先生に報告しようと職員室に向かった。

司

だが、何故か教室の扉が開かない。鍵がかかってるわけでもないのに、ビクともしなかった。

司

生徒はなんとか教室の上にある小さな窓から脱出し、職員室に向かった。

司

先生を求めて職員室を覗いたが、なんと職員室には誰もいない。帰ったしまってとは考えにくいが、生徒は恐怖と不安を感じていたので、課題を先生の机に置いて帰ろうとした。

司

下駄箱のシャッターは何故か降りていて、仕方なく上履きのまま昇降口へ向かったが、そこも開かない。

司

窓から出ようと試みるも、鍵がかかってるわけでもないのに、ビクともしない。

司

いつの間にか外は不自然な闇に包まれていて、何も見えなかった。

司

生徒はあまりの恐怖と不安で、そのまま気を失ってしまった。

司

…目が覚めたのは、用務員さんに声を掛けられた時だった。

司

外は相変わらず不自然な闇だったが、人がいることに安心した。

司

用務員さんに「こんな時間にこんな所に居てはいけないよ。」と言われ、「この廊下をずっと真っ直ぐ進みなさい。途中で分かれ道があっても、聞き覚えのある声があっても、必ず真っ直ぐ進むんだよ。」と念を押すように言われた。

司

何となく、用務員さんの言うことに従えば帰られる気がした。生徒は用務員さんに礼を言い、廊下を真っ直ぐ走った。

司

途中で担任の先生の声や、友人の声、家族の声などが上下左右から聞こえてきたが、無視して真っ直ぐ走った。

司

どのくらい走っただろうか、気付いた時には補習を受けていた教室にいた。

司

教室の扉が開いていたので、急いで職員室に向かって走った。

司

職員室には担任の先生、他の先生などがいた。「補習は終わったのか？」と、担任の先生に話しかけられ、緊張の糸が解けて泣いてしまった。

司

外は夕暮れで、下校中の生徒や部活中の生徒も見えた。生徒は無事に帰ることが出来たが、何故か補習のプリントはどこにも無くなっていたので、また補習を受けることになってしまった。

司

…と、まぁこんな話だ。

彰人

へぇ〜、聞く分には面白かったです。

司

おお、それは良かった。

彰人

でも、状況的に今とほぼ一緒ですね。

司

こ、怖いことを言うな！

司

ほら、話したぞ。早く課題を終わらせよう。

彰人

は〜い

彰人

お、わったー！！！

司

ふぅ…中々時間がかかってしまったな。

彰人

あー、頭痛ぇ……早く帰りましょ

司

だな。まずは先生に提出しに行こう。

彰人

その扉、開かなかったりして。

司

バカを言うな。

ガチャッ

司

…ん？

彰人

え？

司

い、いや。冗談だろう。

ガチャッ

ガチャガチャッ

司

ん？！嘘だろ？！

彰人

うわ、センパイマジでやってます？

司

大マジだ！ほら、開けてみろ！

彰人

…

ガチャ

彰人

うわ、開かねぇ

司

だろう？！

彰人

え？鍵とか無いですよね？

司

ああ。かかってないはず…

司

た、ただ単に立て付けが悪いだけか？

彰人

んー、もうちょい引っ張ってみます？

彰人

……ダメっすね。ビクともしません。

司

ま、待て！オレもやる！

司

ぐぬ……っ

彰人

無理ですよ。立て付けとかの問題じゃ無さそうです。

司

だな……

彰人

ま、そんな気はしてたんであまり驚けないですね。

司

嘘だろ？！驚くだろ！

司

肝座りすぎではないか？！

彰人

センパイはビビりですね。

司

おぉい！！言い方どうにかしろ！

彰人

どうします？話通り、上の窓から出てみますか？

司

むむ……まぁ、やるだけやるか。

彰人

よいしょ、…っと。

彰人

あ、センパイ！上はやっぱ開いてるみたいですよ〜！

司

おお！そうか！ならそこから出よう！

彰人

りょ〜かいです

司

よ…、っと

司

ふぅ、なんとか出られたな…

彰人

うわっ

司

なんだ！？

彰人

いや、外見てくださいよ。

言われた通り窓の方を見ると、そこには話通り、不自然な闇が広がっていた。

司

何っ？！

彰人

良かったですね。思わぬ形で九不思議の検証出来て。

司

よ、良くないわ！！

司

今にも恐怖で失神しそうなんだぞ…！！！

彰人

え、ちょ、それは困るからやめてください！

司

うぅ……不気味だ…

彰人

まぁ…人の気配全くしないですもんね。

彰人

とりあえず、ダメ元で職員室行きますか？

司

う、うむ。そうだな。

司

しかし、まさか本当に遭遇してしまうとは…

司

……彰人？立ち止まってどうした？

彰人

…あっ、いや。なんでもないです。

司

そうか？

彰人

はい。早く行きましょ。

職員室

司

失礼します…

彰人

……誰もいませんね。

司

だよな……

司

……なぁ、さっきから視線を感じないか？

彰人

あ、やっぱりそうですよね？

彰人

ずっと見られてる気がするな〜とは思ってました。

司

だ、誰もいないよな？！

彰人

まぁ、見渡す限りはいませんね。

司

お前は何故そんなに冷静なんだ……？？！

彰人

え？正直めちゃくちゃ焦ってますけど。

司

どこがだ？！全くそうは見えんが？！

彰人

いや、俺まで司センパイみたいになったら、それこそマズイでしょ。1人くらい冷静じゃないと。

司

何ぃっ？！？！

司

あ、彰人がそんなマトモな事を言うとは……

彰人

おい

司

……よし！

司

もう怖くないぞ！いや、やっぱりちょっとは怖いが…

司

とにかく！後輩にそんな気を遣わせるわけにはいかないからな。今からはオレが冷静になろう！

司

存分に焦ってくれて構わんぞ！

彰人

いや、なんすかそれww

ガタンッ

司

ギャアアアアアア？！？！

彰人

あ、すみません。俺です。

司

オイィィ！！！本気で心臓止まるかと思ったぞ！！！

彰人

いや、俺も耳潰れるかと思いました。

司

そ、それはすまん！

彰人

とりあえず、今のところはセンパイの話通りですし、昇降口も閉まってるんですかね？

司

む…そうでないことを願って、一応見に行くか。

彰人

ダメっすねー…

司

ぐぬぬ…やはりか…

彰人

……やっぱ、視線感じますよね。気味悪い。

司

あぁ…だが、誰もおらんぞ。

彰人

……

司

…外なんか見てどうした？ただの闇だろう？

彰人

いや…

彰人

視線感じるのって…外からかな、って思って…

司

……

司

気のせいに留めようとしていたのに…

彰人

す、すみません。

司

いや…オレも、そう思っていたところだ。

司

闇に見られているというのか？何にせよ気味悪いな。

彰人

闇に見られてる…

彰人

……ちょっと、最悪なこと考えました。

司

ん？なんだ？

彰人

これ、闇じゃなくて巨大な瞳だったりして。

司

…

全身を嫌なものが這いずり回ってくるような感覚に襲われた。

彰人

…あー、なんかすみません。適当に言っただけなんで、忘れてください。

彰人の顔も少し青ざめていて、気分が悪そうだ。

司

……彰人、逃げよう。

彰人

は？逃げ……？

司

走るぞ！

彰人

ちょ、は？！どこに？！外には出られないんですよ！

司

瞳に見られない所までだ！！

彰人

はぁ？！

理科室

司

はぁ、はぁ…

彰人

なんで理科室…？

司

ここなら、完全に遮断できる分厚いカーテンがあるだろう。

オレは窓の方に近付き、全てのカーテンを隙間なく閉めた。

彰人

あぁ、なるほど…センパイ、意外に頭いいですね。

司

意外とはなんだ！意外とは！

司

……彰人、気分が悪いんだろう。寝てていいぞ。

彰人

え？

彰人

いや、別に悪くないっすよ。元気ですけど…

司

顔が青いぞ。

彰人

それは…こんな状況だから、普通でしょ。

司

さっきの職員室での大きな音…何事かと思ったが、お前がふらついて椅子にぶつかった音だっただろう。

司

それ以前にも、様子がおかしかったし…

司

気分が悪いなら我慢せず休め。

彰人

……

彰人

…すみません、

司

構わん。

彰人

なんか…すげー頭痛くて、吐き気が少し…

司

ふむ…

司

(類が以前言ってきたことは、本当だったのか…)

少し前

司

話とは何だ？

類

あぁ、少し気になることがあってね。

類

彰人くんのことなんだけど…彼、多分霊媒体質なんだと思う。

司

霊媒体質…？む、聞いた事があるような、

類

霊に取り憑かれやすいとか、霊や怪異の影響を受けやすい体質の人の事だよ。

司

おお、それだ！

司

しかし、彰人がそんな風には見えなかったが…

類

えっと、いくつかそんな節があったんだ。

類

例えば、トンネルに肝試しへ行った日があっただろう？

司

ああ、あったな。

類

その日の夜、彰人くんが1人でトンネルに行ってたんだ。

司

何？！？！初耳だぞ？！

類

言ってないからね。

司

ということは…お前も行ったのか？！あれほどダメだと言ったのに…

類

僕は、彰人くんが1人で行っちゃうと思ったからさ。

類

多分、昼間にトンネルで寂しがり屋の浮遊霊にでも取り憑かれちゃったんだろうね。あのままだと危なかったよ。

司

な…

司

そ、そんなことは一言も…

類

本人も、多分そこまで気にしてないだろうからね。

司

そうか…

司

……なら、彰人はここにいない方が良いのだろうか？

類

うーん…それは…なんとも、

類

えっと…つまりね、彰人くんが霊や怪異の影響を受けやすいってことを伝えておきたかったんだ。

司

ふむ…なるほどな、

司

霊や怪異の影響とはなんだ？体調不良とかか？

類

うん、そうだよ。頭痛や吐き気、金縛りなんかもあるんじゃないかな。

司

そうか…

司

彰人はそのこと、知ってるのか？

類

言ってないよ。言うべきか迷っていてね。

類

ただ、君は部長だし、知っておいた方がいいと思ったんだ。

司

うむ…ありがとう。

司

オレも彰人をしっかり見ておくようにしよう。

類

うん。気にかけてあげて欲しいな。

司

(思えば、たしかに彰人は怪異に遭遇する確率が多かったように思える。)

司

(引き寄せやすい体質とも言っていたが、最近オレたちが不思議な現象に遭遇しやすくなったのはもしかして…)

司

(い、いやいや。あれはきっと夏だったからだ。)

司

(決して、彰人が引き寄せやすいからとかでは…無いだろう。)

彰人

…センパイ？

司

うぉっ？！？

彰人

難しそうな顔してますけど、センパイも体調不良ですか？

司

あ…い、いや。大丈夫だ。

司

(彰人には恐らく、まだ言うべきでは無いな…)

司

それより、寝ていていいんだぞ。

彰人

いや、だいぶ楽になりました。吐き気も治まったし。

司

(あの目に見られていないからか…？)

彰人が霊媒体質だと言うのを思い出して、オレは目に見られない場所へ移動することを思い付いた。

怪異の影響を受けやすいのなら、あの目に見られているのは良くないと直感で思ったからだ。

彰人

それより、ここからどうします？

司

あぁ…ずっとここにいる訳にもいかないからな。

彰人

センパイの話だと、用務員さんが出てきましたけど。

司

うむ…探してみるか？

彰人

ま、そのくらいしか思い付きませんもんね。

司

(となると、また廊下に出なければならない…廊下の窓にはカーテンが無いからな、)

司

(彰人を置いて1人で探しに行くか？いや、今は別行動はしない方がいいだろう。)

司

(彰人の体調が心配ではあるが、ここは2人で探しに行くしか無いか、)

彰人

……なんか、また視線感じません？

司

何っ？！？！そ、そんなはずは……

司

カーテンも閉まってるし、扉も…

？

じー…

司

ギャアアアアアア？！？！？！

？

ひょわっ？！

彰人

！？

司

だ、だだ、誰だっ？！？！

？

あ…私、1年B組の鳳えむ！

彰人

1年B組…？

彰人

(青柳のクラスか。こんな奴いたっけ？)

司

君もこの校舎に閉じ込められたのか？

えむ

えーっと、そうだけど、ちょっと違うかも？

司

？

えむ

2人のお名前は？

司

に、2年A組の天馬司だ。

彰人

1年C組、東雲彰人。

えむ

司くんと彰人くんだね！

えむ

2人とも、着いてきて！ここから出る方法教えてあげる！

司

何？！

司

えっと…すまない、君は何者だ？何か知ってるのか？

えむ

私？えっとね…うん、知ってるよ。

えむ

あのね、ここには「気まぐれさん」がいるの。でもね、その気まぐれさんが、たまにこうして司くん達みたいに、向こうからこっちに連れて来ちゃうの！

えむ

だから私は、そんな風にこっちに来ちゃった子達に帰り道を教えてあげてるんだ〜

司

気まぐれさん…？

彰人

なぁ、外の闇って…あれ、目なのか？

えむ

外の闇……ああ、見張りさんのこと？

えむ

見張りさんはね、ずっとあそこで私たちのこと見てるんだ〜

えむ

それより、早くしないと帰れなくなっちゃうよ！着いてきてっ！

司

え？あ、待ってくれっ！！

司

行くぞ彰人！走れるか？

彰人

は、はい！

えむ

いい？今から私が「いいよ」って言うまで、振り返っちゃダメだからね。

司

わ、分かった。

えむ

よし、じゃあ…真っ直ぐ走るよ！着いてきてっ！

司

(くっ…！あのえむとか言う奴、足が早い…！！)

類

司くん？

司

！！

後ろから聞き慣れた声がした。

類

どうしたんだい？そんなに急いで。補習は終わったのかい？

司

(振り向くな…騙されるな！類がここにいるはず無いだろう！)

類

司くん？待ってよ、置いて行かないで！

司

(振り向くな…！！絶対に違う！類はそんなこと言わない！)

類

司くん……

司

…っ

彰人

センパイ！置いてかれますよ！

司

！！

彰人

よく分かんねぇけど…多分、後ろに何かいます。

彰人

多分、見ちゃダメなやつです。

司

彰人…

司

ああ、そうだな！このまま走り抜けよう！

後ろから聞こえてくる悲痛な声を無視して、全力で走った。

えむ

……もう大丈夫だよ！

司

はぁ、はぁ、はぁ……

司

さ、さっきの……何だったんだ…？

えむ

さっきのも、気まぐれさんだよ。

えむ

2人が帰らないように、ここにずっと居てもらうために、2人の大切な人の声で振り返らせようとしてたんだ。

司

そ、そうか……

彰人

その…気まぐれさんってやつは、何でそんなことするんだ？

えむ

…気まぐれさんは寂しいんだと思う。

えむ

そんなの、私も…

司

……えむ？

えむ

…あっ、ごめんね！

えむ

この階段をずっと降りれば、帰れるよ！

司

案内してくれてありがとう。

彰人

ありがとう、助かった。

えむ

えへへ〜、どういたしまして！

司

…えむは行かないのか？

えむ

私？私は…行けないんだ。

えむ

見張りさんもいるし、私はそっちに行けないの。

司

…そう、なのか。

えむ

寂しいけど、ばいばいだね。多分、もう二度と会えないと思う。

えむ

…ううん、会えない方がいい。

何とも悲しそうな、寂しそうな顔をされ、どうしても階段を降りる気になれなかった。

司

(何か……せめて、礼になるもの…)

無意識にポケットをまさぐると、ポケットの中の何かに手が触れた。

司

……あ、これ、

ポケットに入っていたのは、いつ入れたのか分からない、動物のキーホルダーだった。

司

えむ、こんな物しか無いが…良かったら、礼に。

えむ

ほぇ？

えむ

…わ〜！！兎さんのキーホルダーだ！本当にいいの？

司

ああ。こんな物しかなくて申し訳ないが、

彰人

……あ、じゃあ俺も。丁度いいの持ってた。

えむ

わ〜！！可愛いお花の髪留めだ！

彰人

俺もそのくらいしか持ってないけど。

えむ

ありがとう！こんなの貰ったの初めて！

えむ

わ〜……えへへ、宝物にするね！

少し笑顔になってくれたのを見て安心した。

えむ

2人ともありがとう！ずっと大事にするね！

司

ああ！こちらこそ、案内してくれて本当にありがとう。

司

…そろそろ行くか。

彰人

そっすね。

えむ

急いだ方がいいよ！気まぐれさん達にまた邪魔されちゃう！

司

何？！それは急がねばならんな！

えむに別れを告げ、1つ、また1つと長い階段を降りていった。

司

ﾊｯ

司

き、教室……？

彰人

Zzz…

司

あ、彰人！起きろ！

彰人

んん…

彰人

ん？あれ…教室っすか？

司

ああ！そうらしい。外も綺麗な夕焼けだ。

彰人

うわ、マジだ。

彰人

……センパイ、ちなみにさっきのって、、

司

あぁ、恐らく…夢じゃないと思うぞ。

ポケットをまさぐってみる。

しかし、ポケットには何も入っていなかった。

司

……

ガラガラッ

先生

お、2人とも。終わったか？

司

先生っ！！

先生

ん？その顔…寝てたか？

彰人

ね、寝てないっす！終わりました！

先生

そうか。ならいいんだ。

先生

……うん、ちゃんと終わってるな。

先生

よく頑張ったな。帰っていいぞ。

司

は、はい。

帰り道

司

…

彰人

…

司

…どのくらい覚えてる？

彰人

多分、全部。

司

そうか…

彰人

…最後の廊下、

司

ん？

彰人

後ろから、誰かに話しかけられました？

司

あ、あぁ。類の声が聞こえたぞ。

彰人

へぇ…

司

彰人は？

彰人

言いませ〜ん

司

何っ？！不公平ではないか？！

彰人

別に俺も教えるとは言ってませんし〜

司

屁理屈を…！！隠すほどの事でも無いだろう！

彰人

そーですけど、何となく。

司

むむ…隠されると気になるではないか！

彰人

あ、俺こっちの道なんで。

司

あっ！こら、逃げるな！！

彰人

ははっ、じゃあまた明日〜

司

あっ！全く…気をつけて帰るんだぞ！

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彰人は霊媒体質だったのか意外って思ったけど確かに幽霊とかに会う確率高かったもんな

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