mrpk

俺の恋人は人間じゃない。

俺の恋人は、蛇だ。

本気で怒るとギラついた縦長の瞳孔になって、能力だかなんだかで心が惑わされ、嘘がつけなくなる。らしい。

こいつは良くも悪くも蛇らしい。ねちっこくて、獲物を逃がさない。

しまっ＿＿

しくじった…！

俺は昔から精神が強くて、惑わされたりすることはなかった。

けど、それでも、やらかした…

蛇の能力は凄まじいものだと、分からされる。

汗が止まらない。

今まで感じたことの無いほどの圧。

恐怖、焦り………死。

覚悟した。

こんな、こんな子供みたいなやつに頭を下げさせられるなんて、この上ない屈辱だ。

けどどうしようもない。

力でかなうはずないって分かってるから。

従うしかないんだって知ってるから。

悔しい…

けどどうすることもできない。それがまたさらに悔しい。

雑魚……？

クッソムカつく此奴。

僕はお前なんかよりよっぽど気持ち悪い生物だ。

此奴の後ろに見える無数の蛇。

恐怖からの幻覚か、はたまた本物か。

怖い。

それに尽きる。

圧倒的な恐怖と支配。

これには、勝てない。

もう、いい。結局僕を受け入れてくれる奴なんていないって分かったから。

ｼｭﾙｯ…ｷﾞﾁｯｯ！！

くるしい

くるしい

おれ、しぬ。

ｷﾞﾁｷﾞﾁｷﾞﾁｯ…

首がひしゃげそうだ。

ここで生き延びれても、多分後遺症やらなんやら残るだろうな。

俺、本当に死ぬんだ。

ｷﾞﾁｯ！！

ﾊﾟｷﾝｯ

顎下から聞こえた音と、直後にやってくる激痛。

折れた。折れてる。首、折れてる。

なろっちは、悲しいような、憐れむような顔をして此方を見つめて、さらに強く締め付けてくる。

…いや、そんなこと、考える暇もない。

痛い、苦しい、死ぬ、やばい。

あ、これ、ダメだ…

ﾊﾞｷﾊﾞｷｯ…ﾎﾞｷｯ、

ﾄﾞｻｯ

ぼくのかわいい子供たちにそう言い聞かせて、もう動かない其奴に近づいた。

変だった。

いや、別にそうでもないかもしれないけど。

なんとなく、違和感があった。

人間なんてのは、皆自分の利益のことしか考えてない。

現に此奴もそうだった。

僕のことを蛇という化け物として扱わなかったのは……まあ、嬉しかったけど。

……あ。

此奴、僕が蛇だって、そう思って接してなかった。

そっか。

だから、ゾワゾワするような、心の奥が煮えたぎるような、あつい何かを感じたのかな。

…なんで今きづいちゃったのかな。

もう、関係ないことなのに。

そうは思えないくらい、あったかくて、あまくて、やさしい気持ち。

これって、こういう時に、こんな風に自覚するんだ。

分からないけどモヤモヤして、知らないけどあったかい。

こんなに頭がぐるぐるするものなら、知らない方が、分からないままの方がよかった。

人間って、めんどくさい。