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蒼也

はぁ・・

蒼也

なんでこうなったんだろう・・

ため息まじりにポケットから朝ご飯のおにぎりを取り出す おにぎりは、"おかか"だ

開けながら、コンビニの前で"待っていた"

みな

嫌なの?

蒼也

嫌というか・・

蒼也

ていうかなんでお前ついてきてるんだ

みな

え?気になるじゃん

みな

ねぇねぇ、嫌ならはっきりと言いなよー?

蒼也

・・・

蒼也

言いづらいなぁ

みな

弱虫

蒼也

・・・

蒼也

わかったよ、わかった、どこかのタイミングで言うよ。

みな

最初に言っとかないと、後から言いづらいよ

蒼也

・・・

蒼也

俺が言えたことじゃないが・・吉川さんも、なんというか、結構

蒼也

痛い人なのかな

みな

さぁね、確かめてみれば

そう言いながら、おにぎりを口にしてRINEを開いた 全てはここから始まった

メグミ

吉川です

メグミ

すいません、今日は色々と失礼しました

ソウ

いえいえ

ソウ

色々と話せてよかった

メグミ

それで・・

メグミ

メグミ

お付き合いの件なんですが

ソウ

ソウ

ソウ

おつkあい?

ソウ

ミス

メグミ

メグミ

私も色々と、慎重に関係を築きたいので、まずはまたゆっくりとお話しする機会をつくりたいです

メグミ

隣町の駅前にsoraというカフェがあるので、明日13時あたり、そこで会いませんか?

メグミ

下村さん?

ソウ

あ、はいわかりました。
カフェですね、

ソウ

13時

ソウ

了解です

会話内容を見返して、ため息をこぼす

蒼也

お付き合い・・

蒼也

おれ、なんて言ったけ

みな

連絡先交換しませんか

みな

色々と話が合うようですし

みな

繋がれると嬉しいです

蒼也

良く覚えてるな・・

蒼也

これで告白になるかなぁ・・

みな

言葉の捉え方は多様だね

蒼也

多様すぎるだろう

みな

カフェは昨日行ったんだよね?

蒼也

うん、行った

みな

そこで何話したのさ

蒼也

お付き合いするつもりはなかったんです

蒼也

って言いたかったんだけど・・

蒼也

まぁ、言いづらくて

蒼也

結局、付き合う方向で話は進み

みな

今日のデートに繋がったと

みな

まぁ、不本意でお付き合いなんて失礼なんだからさ

みな

はっきりと伝えなよ

蒼也

あぁ、

すると、遠くから、歩いてくるメガネの女性がいた。 吉川さんだ いつもと雰囲気が違って、その気なのがより伝わってきた。

俺は別に吉川さんと付き合いたくないわけではない。 見た目でも、みなのように美人ではないが素朴な魅力は感じる

しかし、どうしても好きという気持ちは湧いてこない。 そもそも性格が合わない気がした 後ろめたい

ヨシカワ

おはようございます、お待たせしました

蒼也

あぁ、おはよう

蒼也

行こうか

みな

ちゃんと伝えられるかな

そう言って、冷やかす みな を横目に 元はと言えばお前のせいだろう、と思ったが逆恨みだった。 吉川さんは「はい」と返事をして、俺の後ろをついてくる。 しっかりと伝えなきゃいけない

ヨシカワ

あの魚なんですかね

蒼也

あれは・・

蒼也

シロワニだって、サメなのに名前はワニなんだな

蒼也

ていうか水族館好きなんだよね?

蒼也

魚とかわかるでしょう

ヨシカワ

いえ、たしかに好きなんですけど

ヨシカワ

雰囲気というか、魚が泳いでるのを見るっていうのが、好きなだけで、魚自体はそんなに好きじゃないんですよ

蒼也

あ、そう・・

みな

・・・

デート先、水族館に入って4時間が経過 昼ごはんも済ませて、一通り見終えたところだ。

つまるところ言うべきことを言いそびれたという状況 どうしたものか

ヨシカワ

そろそろ、出ましょうか

蒼也

あ、うん

ヨシカワ

ちょっとわたし、お手洗い行ってきますね

蒼也

了解

吉川さんが去っていく。 トイレに向かう吉川さんの後ろを追う 彼女は俺といて楽しいのだろうか

みな

どうすんの?もうデート終わるけど

蒼也

・・・いやぁ

みな

気が変わったの?

蒼也

・・・そんなことは

蒼也

ないなぁ

みな

次、戻ってきた時が最後だよ

蒼也

・・・

蒼也

あぁ

みな

頑張って

蒼也

うん、彼女のためだしな・・

腹を括る そのタイミングを見計らったように、吉川さんが出てきた

ヨシカワ

お待たせしました

蒼也

うん・・

蒼也

吉川さん

出来る限り、普通の声を意識して、名前を読んだ

トイレ付近は人がおらず、シンと静まり返っていた 状況はこの上なく整っていた

ヨシカワ

はい?

蒼也

いや、なんというか

蒼也

・・・・

蒼也

デートまでして、なんだけどさぁ・・

吉川さんが少し身構えたような気がした

蒼也

実は、その、あの日

蒼也

吉川さんに・・

蒼也

吉川さんに告白したつもりはなかったんだよな・・

ヨシカワ

・・・?

ヨシカワ

・・それは、どういう意味ですか

蒼也

・・・・

ヨシカワ

あぁ・・

俺の表情を頼りに、吉川さんは、状況を理解したようだった

顔を真っ赤にしながら、苦い顔をしている

ヨシカワ

いや・・ごめんなさい・・

ヨシカワ

私の悪い癖なんですよ・・

ヨシカワ

そうですよね

吉川さんは1人でに、喋り続けた 彼女が自分で事態を飲み込むのを、俺は黙って待っている ずるいよな、と思った

ヨシカワ

すいません、私帰りますね

吉川さんは、踵を返し、出口へと足早に向かっていく

吉川さんは、泣いていた

蒼也

・・・・

みな

ソウヤ?

ヨシカワ

無意識に体が動いた 気づけば、吉川さんの腕を掴んでいた

蒼也

あ・・

みな

ソウヤ、ダメだよ、あなたじゃ傷付けるだけ

ヨシカワ

なんですか?放してください

みな

あなたはまだ自分自身も救えてない

声が重なって聞こえた。 うるさい、うるさい

蒼也

うるさい

ヨシカワ

え?

蒼也

吉川さん、まだ話は終わってない

蒼也

たしかに君は大きな勘違いをしたけど

蒼也

僕が言いたかったのはそんなことじゃない

蒼也

・・・・

蒼也

これから始めたいんだ

ヨシカワ

何を言って・・

蒼也

勘違いからじゃない、ちゃんと始めたい

蒼也

僕と付き合ってください

そう言って、吉川さんの腕を離す 頭を下げて、右手を前に伸ばした。

ヨシカワ

・・・

ヨシカワ

嫌ですよ・・

蒼也

・・・

ヨシカワ

勘違いして、付き合わせて

ヨシカワ

それを許したら、本当のバカじゃないですか・・

そう、吐き捨てた彼女に、それでも、頭を下げて、片手を差し出す。

ヨシカワ

・・・・・

しばらく経ってから、手を握る感触が伝わってきた。

ヨシカワ

・・・

ヨシカワ

先走ってすいませんでした・・

ヨシカワ

こんな私でもいいなら・・

ヨシカワ

お願いします・・

蒼也

ありがとう

みな

・・・・

こうして、別れることはなく、一緒に水族館を出ることになった

まだ彼女のことは好きではない

止めた理由も涙を見てのことだった 僕は涙に弱いのだろうか

彼女を好きになることはまだできない でも好きになるためにできることならあった

蒼也

そういえば、名前さ、メグミっていうの?

ヨシカワ

名前ですか、わたしの?

出口へ向かう道すがら尋ねた

蒼也

うん、RINEでメグミって名前だったからさ

ヨシカワ

いえ、わたしの名前は めぐむ って読むんです。

「愛」って書いて、めぐむって読みます

変な名前だなって思ってたのでメグミで設定します。

蒼也

愛で読めるんだ、いい名前だと思うけどな

蒼也

これから、めぐむ、って呼んでもいいのかな。

ヨシカワ

え・・・・

蒼也

ほらっ、苗字だとなんか距離感があってさ・・

ヨシカワ

それなら・・

ヨシカワ

めぐむちゃん、とかで・・

蒼也

ちゃん・・

蒼也

うんわかった、よろしく、めぐむちゃん

めぐむ

・・・・変な感じです

"ちゃん"付けと呼び捨ての違いがわからなかったが、そこは僕もどちらでも良かった

蒼也

もう一つなんだけどさ

めぐむ

はい

蒼也

今日から敬語を禁止しよう

めぐむ

え・・

めぐむ

どうしても・・ですか?

蒼也

どうしても

めぐむ

・・・わかりました

めぐむ

めぐむ

わかった

めぐむ

がんばります・・

めぐむ

あ・・

それなりに苦戦していたが、受け入れてくれてよかったと思った

これで何か変わるわけではない 一つずつ変えていかないといけない

ちょっとずつ、ちょっとずつだ

めぐむちゃんと帰路を分かってからは、みなと2人きりになった

家に帰るまで、みなとしゃべることはなかった、部屋のベッドに座ったところで、口を開いた

蒼也

これからのことなんだが

みな

・・うん

蒼也

吉川さん・・じゃない、めぐむちゃんと会う時は、ついてこないでほしいんだ

みな

うん、わかった

みな

彼女のこと好きになれたの?

蒼也

いや、そういうわけではない

蒼也

けど、なんだか、今はなんでもできそうな気がするんだ

蒼也

やけに体が軽くて。

みな

そっか

みなはすんなりと受け入れ、やけに当たり障りのない返事をした

蒼也

結構まだ明るいな

めぐむ

意外と回る時間短かったもんね

2回目のデートの帰り道だった、前回は水族館だったからという理由で、なぜか動物園になり園内を回ったが、2時間もしないうちに帰り、まだ昼過ぎだった

蒼也

どっか寄ってく?

めぐむ

いや、帰りますかね

めぐむ

やることあるし

めぐむちゃんは、今日の1日で、タメ口にも慣れてきた、まだたまに敬語は出てくるが

めぐむ

あっ

めぐむ

ごめんなさい、もうちょっとどこか行きたかったかな・・

蒼也

ううん、大丈夫だよ

めぐむ

そうですか・・

立場が低くなると、敬語になるようだった

めぐむ

じゃあ、ここで

蒼也

うん

2回目のデートが終わる まだ、彼女を好きになることはない

しばらく歩いて振り返ると、めぐむちゃんもこちらのことを見ていた。

掌に収まりそうなほど小さくなった、彼女はこちらに手を振った 僕も手を振り返す

少し笑ってから背を向けた彼女の姿を見送る なぜだろう、なんだか 違和感がある

蒼也

・・・

家に帰ってきた

蒼也

はぁ

やけに疲れた気がして、ベットに座る すでにベットにはみなが寝転んでいた

みな

・・・

蒼也

どうした無言で

みな

なんか、調子悪い

蒼也

風邪でもひいたのか?

蒼也

そんなわけはないよな・・

蒼也

まぁ、俺が疲れてるせいかな

みな

・・・

蒼也

ちょっとコンビニ行ってくる、食べ物ねぇし

みなの不調をこの時はあまり気にしていなかった

しかし、この日から、彼女はほとんど、喋らないようになった。 抜け殻のようだった

そうして思い出した みなが妄想なんだということを めぐむちゃんという、現実が現れて、みなの存在が薄くなってるのかもなと思った

すこし寂しかったが 良い兆しなんだと思う

見えないものが見えるなんて 普通じゃないものな

蒼也

なぁ、おい

みな

・・・・

毎日、話しかけているが、それと言った反応はない そんなふうに2週間が経つ

めぐむちゃんとの関係は続き ついでにブログも好調だった こうやって現実が良くなっていくたびに、みなの存在が薄れていくのがわかった そんな時だった、めぐむちゃんが突然電話をかけてきたのは

めぐむ

今日、私の家に来れないかな・・

妙に神妙な様子だった 何か伝えたいことがある、そんな声だった 僕はすぐに家を出た

蒼也

家族と住んでるんだっけ?

めぐむ

・・うん

めぐむ

今日は誰もいないんだ

めぐむ

だからソウヤくんを呼んだんだけど

めぐむちゃんは、僕のことをソウヤくんと呼ぶようになった

コーヒーを両手にキッチンから出てきた

めぐむ

あ、コーヒー苦手だった?

蒼也

いや、好きだよ

ヨシカワ

うん・・・

本当は好きでも嫌いでもない なんだか最近、味覚が薄くて、嫌いなものも好きなものもよく分からなかった

めぐむちゃんは妙に表情が強張っていた。 その表情のまま、コーヒーを僕の前に置くと、隣に座った そういえば、自分の彼女なんだった、と思い出した

めぐむ

ふぅ・・

めぐむ

あのね、私

めぐむ

ソウヤくんに謝らないといけない

蒼也

なに?

めぐむ

・・・

めぐむ

怒らないで聞いて欲しい

蒼也

うん

めぐむ

私、実はソウヤくんの事、その、恋愛として、好きじゃなくて・・

蒼也

・・・

めぐむ

いや、ソウヤくんだけじゃないんだ、男の人を好きになった事がないの

めぐむ

でもね、一緒に過ごしてると楽しく思える人がいてね

めぐむ

それが前の彼氏とソウヤくんだったの

めぐむ

これが恋心なのかなって思ってたんだけど

めぐむ

どうやら違うみたいで・・

蒼也

なるほど

めぐむ

・・怒らないんだね

普通の男性なら怒るのだろう と思った

蒼也

そうだね、そんなに怒ってない

蒼也

僕と一緒に過ごしてると楽しい?

めぐむ

楽しい

めぐむ

・・・って思ってたんだけど

めぐむ

楽しいというよりも・・

めぐむ

失礼だと思うんだけどね

めぐむ

私はね、傷ついてる人を、救うことによって自分の傷をずっと癒そうとしてるんだって気づいた

めぐむ

言葉の意味を勝手に取り違って、付き合ってしまうほど

めぐむ

癒しがほしくて・・

蒼也

・・・

蒼也

おれも同じかもな・・

めぐむ

え?

蒼也

いや・・

めぐむ

こんな不純な理由で付き合ってたら、突き放されたって仕方ないなって思った

めぐむ

でも、もし、私の茶番に付き合ってくれるなら・・

めぐむ

対等に向き合いたい

めぐむ

傷ついてる人とか救う人とかじゃなくて

めぐむ

・・・・

めぐむ

恋人として・・

彼女の手は震えていた そこまで、怯えなくても良い なぜなら僕の方こそ、ずっと茶番なのだから・・

蒼也

そうだね・・恋人として・・

どうしたらいいのか分からなくて、とりあえず彼女の震える手を握った

ヨシカワ

・・・・

めぐむ

あはは、守られてる

めぐむ

私こそ弱いのに、救いたいなんて、何を大層なこと言ってるんだろう

めぐむ

これじゃあ、誰も救われないよ

彼女は独り言を呟いた そこには目一杯の悔しさが込められていた

彼女の頬に一粒の涙が伝った

めぐむ

え?

蒼也

あ、

蒼也

ごめん

気づかないうちに体が動いていた。 彼女の頬に口をつけていた いや、流れる涙を、飲んでいた

めぐむ

あぁ・・

めぐむ

そっか、そういうことだよね

めぐむ

・・・

めぐむ

ソウヤくん

めぐむ

もし許してくれるなら

めぐむ

いいかな・・

蒼也

うん・・

そう答えると、いつのまにか目を瞑っていた

数秒の後、唇に柔らかな感触が伝わった うごめいて、互いに感覚を確かめる あくまでも不器用でぎこちのなくて、硬い口付けだった だけれど彼女の流す涙が目に入ると、それが美しくて、尊くて、心地よかった もっと泣いてほしい

めぐむ

ありがとう

互いに顔を離し、しばらく見つめると、彼女はそれだけ言って、涙を拭いた 涙を拭いたハンカチがテーブルに置かれるそれに、目を奪われた。 持って帰ってもいいかなとは流石に言えなかった。 なんだろう、この気持ちは

こうしてめぐむちゃんと、恋人として向き合うことになった さっきのキスで、彼女に恋心が芽生えたのかはわからない。 僕はあまり変わらなかった

でも、愛おしくなった 彼女の涙が 今はそれでいいのだと思った 彼女の涙に恋をしている

蒼也

コーヒーごちそうさま、これそこで洗っておいたらいい?

めぐむ

置いといて置いといて

めぐむ

洗っとくから

蒼也

うん、そっか

蒼也

じゃあそろそろ帰ろうかな

めぐむ

うん

そう言うと玄関まで向かう めぐむちゃんも後ろをついてきた するとーーー

蒼也

向かってる途中、突然、頭痛がした 鈍器で殴られたかのような激痛だった

蒼也

っ・・・!

めぐむ

大丈夫?!どうしたの?

蒼也

いや、大丈夫、ごめん

頭痛は一瞬のことで、既に一切の痛みが消えていた。 再度、玄関に向かい、靴を履いた

蒼也

ねぇねぇ

蒼也

みな はなんか好きな食べ物とかあるかな?

めぐむ

みな?

蒼也

めぐむ

そういえば、バイトの時も言ってたね
妹さん?

蒼也

・・・

呼び間違いに焦ったが それ以上に重大で深刻事実が脳裏を過った気がした

恋心、涙、頭痛、無言、みな・・ 一つ一つの脈絡のない出来事が、繋がってなにか一つの真実が見えて来る なにか、まずいことになっている

蒼也

うん、妹

蒼也

たまに僕の家に寄ってくるんだ

ヨシカワ

妹さんは実家の方で暮らしてるんだ

蒼也

うん、そうなんだよ

蒼也

めぐむちゃんは好きな食べ物あるかな?

めぐむ

あぁ、そうだったね

めぐむ

うーん・・

めぐむ

とくにないんだけど・・

ないのか、と思ったが 考えれてみれば僕もよくわからなかった

めぐむ

魚かな

蒼也

本当に魚好きなんだな

めぐむ

いや、別に水族館とは関係は・・

蒼也

じゃあ、また食べに行こう魚

めぐむ

うん

蒼也

じゃあね

めぐむ

うん、ありがとう

めぐむ

ほんとうに感謝してる

めぐむちゃんの家を出ると、僕はすぐに走った。

ガチャ!

蒼也

みな!

みなの姿はなかった、漠然とした不安が確信に変わっていく

僕は軽視していた みなが消えていくということを

それが何を意味するのか

彼女はただの妄想ではない

蒼也

どこかにいる・・

消えたわけじゃない、なんとなくわかった この世界のどこかにまだいる

蒼也

探さないと・・

蒼也

みなが出かける場所

みな はただの妄想ではない、もう1人の僕だ。 僕の心そのものだ

僕は無意識の中で恥ずかしがっていた みなの存在を

無意識の中で拒み続けた、忘れようとしていた

僕はここ最近ずっと みなの名前を呼んだことすらなかった

毎日みなの存在は少しずつ消えていた

僕の心が

消えていく

蒼也

公園・・

走って家を飛び出した

昼間の公園は閑散としてて、誰もいなかった 今日は平日だ

公園を走り回って、赤いワンピースを探す

でも、見つけたところで、なんて話しかければ良いのだろうか

そう考えてるうちに、その姿を見つけた

蒼也

・・はぁ・・はぁ

みな

・・・

みなは公園の隅のベンチに座っていた

みな

忘れられたかと思った

蒼也

・・・ごめん

みな

ソウヤは

みな

何がしたいの?

蒼也

・・・

蒼也

今日、めぐむちゃんと会ってきたんだ

蒼也

彼女とは何度あっても気持ちは変わらなくて

蒼也

でも彼女の流す涙に惹かれる

蒼也

多分僕は、あんな風に涙を流せるような

蒼也

心が欲しいんだ・・

蒼也

だから、みな

蒼也

君を取り戻したい

僕の心である君を・・

蒼也

一緒に帰ろう

みな

・・・

みな

そっか、見つかったんだね

みな

どうしたいのか

みな

でもね

みな

無理だよ

みな

お前には

蒼也

・・・みな?

みな

気付いてないないみたいだから言うけれど

みな

もう手遅れだよ?

蒼也

どうしたんだよ・・

みな

何度も何度も何度も、手を差し伸べたのに

みな

拒みやがって

蒼也

・・・・

蒼也

これから・・

蒼也

変わるから・・

みな

そうやってまた裏切るんだ

みな

わかってんだよ

蒼也

みな!

みな

それなら私も拒み続ける

みな

お前のその都合のいい妄言はもう通用しない

みな

取り戻させてやるもんか

みな

ずっとずっとずっとずっとずっと

みな

待ってた!!

みな

私はここで!

激情が溢れ出す みなは見たことのないような大量の大粒の涙を流した ボタボタと地面に落ちていく

蒼也

なんで

蒼也

ここまで、上手くやってきたのに・・

みな

そんな気がしただけだよ

みな

あなたはやらなきゃいけないこと、何も出来てない

みな

やりたいこと見つかってよかったね

みな

おめでとう

みな

あなたのこと、大嫌いだよ

あれ

あれから何日が経った

あれからみなが消えて、何回も何回も公園に来た

何日経ったのかはわからなかった

何をどう感じればいいのか、一切分からなくなって みなと最後に会ったベンチで、ひとり過ごす毎日

電話や通知が何度も鳴った

それでもなにもせずに、ただベンチに座って、空を眺めて、味のしないおにぎりを食べていた

今日のおにぎりはツナマヨだった

お前はいないほうがいい

もう手遅れだよ

頭が痛い 頭ががいたいい

何もできない

めぐむ

そ....くん?

何も救えない

めぐむ

ど..う......の?

生きてる価値がない

めぐむ

ソウヤくん!

突然の声に驚いて顔をあげる

目の前には、心配そうに、顔を覗き込むめぐむちゃんの姿があった

蒼也

ははは・・めぐむちゃんか・・

蒼也

久しぶり・・

めぐむ

・・・・

妄想彼女(3話完結)

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