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6 - とある真夏の日の出来事

♥

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2022年08月01日

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今年も暑い夏がやってくる

青い空に白い雲

黒いアスファルトに 赤い救急車のサイレン

コントラストが目に染みる

僕は思わず目を細めた

 暑い

暑い 

暑い

 

グイッと僕は冷えた水を煽り飲んだ

ぷはぁ……っ

汗が滴り落ちて ほんの少しだけ 地面に濃い滲みを描く

それだけで、どれだけ体力が奪われるか

どれだけ気持ち悪く感じるか

僕は、君らは 知っているはずだ

 

 

今日も、暑い

きっと、まだまだ暑くなる

暑さが、熱が、汗が 僕らから全てを奪っていく

……これだから、夏は嫌いなんだ

夏バテも、虫刺されも、暑いのも

全部全部 大っ嫌いだ

たとえどんなに食べ物が美味しくても

どんなに花火が綺麗でも

海で泳ぐことが出来たとしても

僕は一生、 夏が好きになることはないだろう

それでも

このクソ暑い夏の日に

僕が外に出歩くのは

……君が、夏のせいでいなくなったから

暑い

暑い

暑い

  

……その日は今日よりももっと暑かった

ただただ体力が奪われていくなか、 君だけが元気だった

わあっ!見て見て!

陽炎(カゲロウ)が見えるよ!

暑い……

死ぬって……

も〜、暑がりなんだから!

あ!

じゃあ、これあげるから
元気出しなよ!

そう言って君がくれたのは

とても冷たい、氷のような水だった

夏って、特別な季節なんだよ!

……そんなんどーでもいい

早く帰って、人類の進化の偉大さを噛み締めたい……

だらしないよ!

適度な暑さは、私たちの恵みになるんだよ!

違う

恵みなんかじゃない

暑さは、全てをぶち壊した

君がいなくなった真夏の日もそうだった

真夏の暑さは、君から正常な思考回路を奪っていった

鋭い直射日光は、君から笑顔を奪っていった

ねぇ、今年の──

何の前触れもなく、君は倒れた

あ、れ……?

暑くないし、汗もかいていないのに……

な、んで……

?!

と、とりあえず、これ飲め!

君がくれた水を、渡し返した

君は、そっと手を伸ばす

その手は、ペットボトルに 触れることすらなかった

……な、んで

あだま、いだい……!

っオイ!

しっかりしろ!!

今救急車呼んだから!!

必死に君を日影の方に連れてった

あのときの君の温かすぎる体温が

今も頭から離れてくれない

一人にするなよ……!

君がいなくなったら、誰が僕を外に連れ出してくれるんだよ……!

あ……

ご、め……

結局、君は遠くへ行って戻って来なかった

日射病に熱中症に、水分不足

汗をかいていない方が危険だって 後から知った

……ああ

これだから、夏は嫌いなんだ

暑い

暑い

暑い

暑い

 

それでも僕がこの炎天下の中 外に出歩くのは

やっぱり、君のためなんだ

……今年も来たよ

手のある向日葵を、君に

仏花にはあまり見かけないけれど

君が、一番好きな夏の花を

……それが一番、君に似合うと思うから

お盆には二度と逢えない人が帰ってくるという

だから君は夏を特別な季節だと言ったのだろう

……

たとえどれだけ暑くても

どれだけ日差しが強くても

どれだけ流れる汗が気持ち悪くても

僕はこの先ずっと、大嫌いな夏の日に

君に、逢いに行くよ

へへっ、ありがとう!

?!

私も、逢いにきたよ!

夏は嫌いだ

だけれども、そんな僕の気持ちお構いなしに一年に一度やってくる

だから、僕は

その大嫌いな季節を 特別な日に

……ありがとう

これは

僕が体験した少し不思議な

とある真夏の日の出来事

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