TellerNovel

テラーノベル

アプリでサクサク楽しめる

テラーノベル(Teller Novel)

タイトル、作家名、タグで検索

ストーリーを書く

誘拐されました。

一覧ページ

「誘拐されました。」のメインビジュアル

誘拐されました。

3 - 記憶にない私たち

♥

100

2025年07月18日

シェアするシェアする
報告する

八倉建一は、今日もノートを開いた。

そのノートには、菜々花にとって“存在しなかった思い出”が、またひとつ記されている。

2010年 6月 21日

君が校舎裏で泣いていたのを、僕は見た。

でも声はかけられなかった。ただ、そこにいたんだ。

君は誰にも気づかれず、泣いていた。僕だけが、その姿を知っている

多川 菜々花

やめてよ…そんなこと、知らない

多川 菜々花

私…そんなとこで泣いた覚えなんて、ない

菜々花の声は震えていた。

けれど、どこかに疼くような感覚があった。

八倉 建一

記憶がないからって、それが嘘とは限りません

建一はそう言って、ノートを閉じる。

八倉 建一

君はずっと、“見られない”ことを選んできた

八倉 建一

誰にも心を見せず、無かったことにしてきたんじゃないですか?

多川 菜々花

そんなの…誰だってあるでしょ。誰にも見られたくない顔くらい…!

八倉 建一

でも僕は、見てしまったんです。君の“本当の顔”を

八倉 建一

君がどれだけ孤独だったか、どれだけ誰にも触れられたくなかったか…

菜々花の胸が、締めつけられるように痛んだ。

彼の言葉が正しいとは思いたくない。

でも、自分の中にある“空白”は、否定できなかった。

場面は変わり、東京都内──

関本 泰一

菜々花の交友関係で、思い当たる人物は?

関本泰一刑事が問うと、沙紀は小さく首を横に振った。

平重 沙紀

特別に仲が良かったのは…私くらい

平重 沙紀

会社でも明るいけど、ほんとの意味では、誰とも深く関わってなかった気がします

関本 泰一

ご家族とは?

平重 沙紀

お父さん…多川啓三さん。たしか建設関係の社長です

平重 沙紀

でも、菜々花の話にはあまり出てきませんでした

平重 沙紀

仲が悪いってわけじゃないけど…ちょっと距離がある感じ

関本はその名前を聞いて、眉をひそめた。

関本 泰一

多川啓三…警察とも多少縁がある人物ですね

関本 泰一

以前、会社の下請けでトラブルがあった

沙紀は驚いたように目を見開いた。

平重 沙紀

啓三さんが?そんなこと…

関本は首を横に振る。

関本 泰一

まだ何も決まってません。ただ…周囲の人間の“空白”が多すぎる

関本 泰一

菜々花さんは、ひとりで何かを抱えていた可能性があります

同じころ、多川啓三は自宅の書斎で、古びた写真を見つめていた。

写っているのは、小学生くらいの菜々花と、ある若い女性。

その写真に添えられた手書きの文字。

こゆきちゃんお姉ちゃんと、ななか

啓三は写真を裏返し、机の引き出しにしまう。

その目はどこか、迷いとためらいを宿していた。

多川 啓三

…あいつが出てくるとはな。建一…

彼は誰にも言えない記憶を抱えていた。

八倉家と多川家、かつての“つながり”を。

その夜、菜々花は眠れなかった。

ノートの中に書かれていた言葉が、脳裏を離れない。

君は、見られないことを選んだ

誰にも心を見せず、無かったことにしてきた

多川 菜々花

(…私は、ほんとうに何も覚えてないだけなの?)

多川 菜々花

(それとも、見たくなかっただけ…?)

目を閉じたその奥で、またひとつ、過去の映像が揺れ始める。

雨の日、バス停、傘。

遠くに座る少年。目が合った気がした──

誘拐されました。

作品ページ作品ページ
次の話を読む

この作品はいかがでしたか?

100

コメント

0

👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!

チャット小説はテラーノベルアプリをインストール
テラーノベルのスクリーンショット
テラーノベル

電車の中でも寝る前のベッドの中でもサクサク快適に。
もっと読みたい!がどんどんみつかる。
「読んで」「書いて」毎日が楽しくなる小説アプリをダウンロードしよう。

Apple StoreGoogle Play Store
本棚

ホーム

本棚

検索

ストーリーを書く
本棚

通知

本棚

本棚