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素敵でした。
面白かった。私も、こんなの描きたいなぁ!
空。
遥か高く上に広がる空は
どんなに手を伸ばしても届かない
でも、今日だけは、
確実に手が届きそうな
気がしたんだ ────
お母さん
神咲 涼夏
お母さん
お母さん
家に帰るごとに尽く浴びせられる怒号
もうそれが当たり前になってきた
お母さん
お母さん
神咲 涼夏
こういう時には適当な返事をしておいて
話を早めに切り上げておくのがベストな対処法
お母さん
母は大きなため息を吐き出しながら項垂れる
毎回、毎回、紙切れに怒鳴り散らして
よく飽きないね。
神咲 涼夏
私は何も言わずに母の声が響いたリビングから出て行った
神咲 涼夏
やっと部屋に帰り、一息つこうとした私を
彼らの存在が邪魔をする
春樹
声に気づき、ベットから飛び降りた弟は私に勢いよく抱きつく
神咲 涼夏
お腹には無邪気な温かさが広がった
冬華
妹の方は握っていたクレヨンを床に落とし、紙を見せる
神咲 涼夏
仲良く手を繋ぐ6人
母、私、春樹、冬華、颯汰 だろう
冬華
神咲 涼夏
私は冬華の頭を思いっきりに撫でる
冬華
嬉しそうに笑う妹を見ていると、さっきまでの思いなんて
もうどうでもよかった
春樹
春樹
春樹はうるうるした目を覗かせる
神咲 涼夏
神咲 涼夏
まだその、無邪気な笑顔を壊したくない
そんな自分勝手な考えから、私は誤魔化すように2人を抱きしめた
神咲 涼夏
2人の背中を軽く押して部屋から出す
春樹
冬華
ぶんぶんと元気よく手を振る2人を見送り、ベットに戻った
やっときた一人の時間
何より大好きなこの時間は本当の私が出せる
と思っている
神咲 涼夏
これは弟たちにではなくて、母に対してだ
父がいなくなってからは毎晩のように泣いている
母の時間はあの日から止まっているみたい
だからってそんな怒らんでも....
って思うこともあるけど
母の言うことも一理ある
お母さん
ほんとその通り。
私の二個下の弟の颯汰は簡単に言えば
「完璧」だ
勉強はもちろん、運動も出来ちゃう優れもの
オマケに謙虚だって忘れない
出○杉みたいな....? 感じ。
それに比べて私は
勉強、運動は全く出来ずに
他人の顔色ばかり伺って生きてきたようなやつ。
私は目を閉じた
母親からも必要とされなくなった孤独感から逃げ出すように
でもそれは逆効果で、
暗闇のなか、
途端になんともいえない感情が覆いかぶさってくる
「寂しい」
「悲しい」
「辛い」
「苦しい」
そんな簡単なモノじゃなかった
じゃあ、これはなんだろう
パチッ......
ふと、まぶたの先で電気が切れる音がした
この部屋はもう真っ暗なんだろう
神咲 涼夏
やっと見つかった
私は今、「侘しい」のです
明日への希望も見いだせずに
力の抜けたまま進んでいく時間に
流されているだけの自分が
心底、嫌いだった
冷たい風が吹きつける屋上。
神咲 涼夏
ガシャンッ....! と音を立て、私の頭はフェンスに打ち付けられた
クラスメイトA
クラスメイトB
楽しそうに笑いながら私に近づいてくる
私は目を細め、睨みつけるように彼らを見た
クラスメイトB
神咲 涼夏
当たり前のように私の頬には彼の硬い拳がぶつかる
クラスメイトA
心配などしていないくせに彼女は笑顔で私の肩に手を乗せた
クラスメイトA
ポケットからハサミを取りだし、わたしの首筋にあてる
ひやりと冷たい感触が伝った
神咲 涼夏
私は抵抗などしなかった
どうせなら、殺してくれた方が楽だから。
クラスメイトB
止める気などさらさらないように
へらへら笑う
いつからか、笑顔がこんなにも皮肉に見えていた
クラスメイトA
彼女はより一層、ハサミを強く押し当てる
はいはい、言いますよ。
クラスメイトA
清々しいほどの笑顔で彼女は私の首をうすく切った
ッ___
制服に私の血がつく
痛みは、、、感じなかった
自分でもびっくりするくらい
なんにも感じない
クラスメイトA
痛みに怯えるザマを見たかったのだろうが
生憎、その光景は拝めないぜ☆
クラスメイトA
軽く舌打ちをしたあと彼女は乱暴にハサミを抜く
神咲 涼夏
ほんの少しの痛みが走った
クラスメイトB
神咲 涼夏
私の髪を掴み、床に投げ捨てたあと
足早に屋上を去って行った
神咲 涼夏
彼らが去ってすぐ、私は髪を整え出す
神咲 涼夏
神咲 涼夏
眉を下げながら制服についた血を手で拭う
でも、
神咲 涼夏
時すでに遅し
血はもう制服に染み込んでいた
神咲 涼夏
私は諦め、フェンスの間から下を眺める
部活動に励む生徒たち
帰り道、友達とじゃれ合う生徒
どちらも私は知らなかった
ふいに風でフェンスが カタカタ 鳴る
私は立ち上がり、フェンスに額をつけた
別にここで死んでみるのも
悪くないよね。
だって今までろくなことやってこなかったし、
1回 ここでリセットしてみようか
決心した私はフェンスをゆっくりのぼる
が
???
神咲 涼夏
誰かの声で地面に落ちた
神咲 涼夏
強打した腰を擦りながら声のした方を向く
神咲 涼夏
私は扉の前で立っている彼に目を丸くする
???
面倒くさそうにため息をついた彼は弟の颯汰だ
神咲 涼夏
でも颯汰がここにいるのはおかしい
神咲 涼夏
そう、今頃颯汰は部活という青春を謳歌しているはずだ
そんな奴が屋上に用なんてあるわけない
颯汰
神咲 涼夏
頭を悩ませる私と反対に、颯汰は簡単に言った
颯汰
颯汰はウインクしながら
あと2回だね。と笑い、ピースをする
神咲 涼夏
神咲 涼夏
私は慎重に選んだ質問を颯汰に投げかけた
颯汰
首を傾げながら颯汰はゆっくりフェンスに手をかける
颯汰
神咲 涼夏
頭の悪い私には理解が追いつかない
颯汰
神咲 涼夏
フェンスをよじ登る颯汰を一旦とめた
颯汰
神咲 涼夏
久しぶりに見た颯汰の笑顔は
無理やりに口の端を上げているような
笑顔だった
そんなふうに笑うやつだったかな
颯汰
少し苛立ちがこもった颯汰の声で言いたいことを思い出した
神咲 涼夏
颯汰
一瞬、躊躇いを見せた颯汰だが
颯汰
すぐまた、笑顔になり私の手を引いた
その笑顔は 本当 だって信じたい
神咲 涼夏
颯汰
私たちは並べた靴を見ながら言った
様になってんじゃーん
神咲 涼夏
頭をよぎった質問を口に出す
颯汰
しばらくの沈黙が流れていく
颯汰の顔は髪で隠れてよく見えなかった
颯汰
やっと絞り出した颯汰の声は「感情」がなくなっているようで
颯汰
神咲 涼夏
予想外の返答
私は思わず聞き返した
神咲 涼夏
神咲 涼夏
颯汰
無気力な声を上げ、颯汰は髪を耳にかける
颯汰
颯汰
颯汰
指の間から見えた颯汰の顔は
「あの顔」 だった
あぁ、そっか
颯汰をそんなふうにしたのは
私達だったんだね。
自分たちの期待だけを押し付けて颯汰を追い込んでたんだね
神咲 涼夏
私は謝った
神咲 涼夏
こんなことで颯汰の傷が癒えずとも、ただ謝りたかった
颯汰
颯汰は優しく頭を撫でてくれた
颯汰
神咲 涼夏
颯汰
颯汰
私の頭に手を置いたまま颯汰は俯く
神咲 涼夏
颯汰の手を取り、手を繋いだ
サッカー部は顧問に呼ばれ、校庭には誰もいない
飛ぶなら今だろう
颯汰
颯汰が心配そうにこちらを見る
颯汰
私は靴に目をやった
確かに、遺書があれば彼らにとってはデカい傷になるだろう
でも学校側に隠蔽されて終了。
無意味になる
神咲 涼夏
颯汰
颯汰は名残惜しそうに少しの間だけ説得をしていたが
それでいいなら。と前を向いた
神咲 涼夏
神咲 涼夏
颯汰
颯汰は強く手を握る
神咲 涼夏
私も手を握り返した
一瞬の無重力に身を任せ、私たちは風になる
さっきまでの恐怖なんてもう忘れた
今までの屈辱は向こうでの笑い話になる。
後は重力に従い、落ちるだけ。
胸が高鳴る中、私たちは顔を見合わせ笑い合う
「来世は愛させる子になれますように。」
ドチャッ..!!!
鈍い音だけが学校中に響いた
終わり。
飛び降りるのを止めるの書いたら、
そのまま飛び降りちゃうのもかきたくなりました。