これは、まだお嬢と騎士様が
ただ純粋な頃の話である
そう言い、逃げるように部屋から出た
逃げてしまった
いや、そもそもの話
やはり、設定が雑だったのだ
何を隠そう、今日は私の騎士の誕生日である
……言い方をもっとシンプルに変えようか
絶賛片想い中の相手の誕生日である
まぁ、昔からの幼馴染みたいなもんだし
誕生日くらい把握していてもおかしくはない
なのだけど…
悲しきかな、身分の違いとは薄情だ
私はこの国の姫で、彼はその護衛の騎士
かつて、幼馴染で最も近しい相手だったのに
今となっては
だから、困ったのだ
幼馴染のくせに、誕生日を知らなかった
決死の覚悟で誕生日を聞き出せたのまでは良かった
問題は、プレゼントである
何が好きなのか、まるで知らない
故に、あんなに買ってしまった
何を隠そう、あの部屋にあったプレゼント全て
お姫様からの贈り物である
何が好きなのか分からない結果
好きそうなものをすべて集めてしまったのだ
挙句の果てに、自分以外護衛しない騎士に向かって「普段護ってくれるお礼」などと
ほぼ答えのようなものを言ってしまい、恥ずかしさで逃げたのだ
……気でも紛らわそうかな
そう思い、外に向かう
……今頃彼は
何をしているのだろうか
一方その頃……
部屋に残された騎士様は……
改めてプレゼントの多さに困惑していた
しかし、無下に扱うのもなんだかなと思い
一応、全て開封することにした
だんだん開けていくうちに、好みだが何故知られているのか不思議なものが多くなってきた
随分珍しいな、と思いつつ
ふと、ある話を思い出す
確か、お嬢が好きと仰っていた花だ
……よく考えてみれば
ここにあるものは、かつてお嬢と話したものばかりだった
この本、面白そうじゃないですか?と話したあの日も
このお茶、気になっているので入手方法したらお出ししますね、と話したあの日も
あれも、これも、全て
つまり、うちのお嬢は極端な照れ屋ということか
不意に、笑顔になった気がした
やはり、お嬢は唯一無二の主なのだと
なんとなく、再認識して
捨てなきゃいけないこの想いが
強まった気がして
お守りせねばと、再度思うのだ
……尚
この年に、最悪の出来事に見舞われるとは
予想にもない話なのであった
コメント
2件
え、ちょ……尊すぎ……😇💕 昔からお嬢様は照れ屋さんだったんですね……でも、確かにすぐ隣にいるのに身分のせいで関係性は「お嬢様」と「騎士」以上に近づけないから咄嗟に誤魔化したんだろうなぁ……可愛すぎる……っ!! 騎士様もプレゼントを開けていくうちに送り主がお嬢様だって気づいて喜んでてさぁ……可愛すぎる……っ!!……でも、最後の「最悪の出来事に見舞われる」っていうのが幸せな日々から一変してて、