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ザーザーと、止まない雨が静かに地面を叩きつけている
もうすぐ朝が来ようとしている、薄暗い夜中
シェアハウスの裏手に広がる大きな庭園は、うっすらと霧が立ち込め、僕が毎日大切に育ててきた花たちが雨に濡れて静かに項垂れていた
なおきり
僕は、庭園の奥にある立派な藤棚の前に立っていた
見上げた先には、自分の体重を支えるのにちょうどいい、頑丈で太い花のツタがのびている
彼はシェアハウスから持ってきた木製の椅子をツタの真下に置くと、迷うことなくその上に立ち上がった
椅子の上に立つと、いつもより視界が高くなった
見下ろす雨の庭園は、どこか寂しく、だけど息をのむほどに美しい
僕は、ポケットからあの日作ったてるてる坊主を取り出し、隣の細いツタにそっと吊るした
不器用な笑顔のてるてる坊主が、雨に打たれながらゆらゆらと揺れる
なおきり
なおきり
なおきりは、目の前にある頑丈なツタを両手で手繰り寄せ、自分の首へとゆっくり引っ掛けた
植物の青臭い匂いと、雨の冷たい匂いが混ざり合う
不思議と、恐怖は全くなかった
これでやっと、からぴちの邪魔にならずに済む
みんなにこれ以上、迷惑をかけなくていいんだ
最後に、僕はズボンのポケットからスマホを取り出した
画面を開き、ゆあんくんとのトーク画面を表示する
冷たくなった指先で、大好きな最年少への、最期のメッセージを打ち込んでいく
一文字一文字に、これまでの感謝と、歪んでしまった心からの愛を込めて
『俺がみんなのてるてる坊主になるよ』
『今までありがとう』
『そしてさようなら』
送信ボタンを、そっとタップした
――その頃、シェアハウスの廊下を、俺は必死に走っていた
ゆあんくん
心臓が破裂しそうなほどの恐怖に突き動かされ、なおきりの部屋のドアを勢いよく開ける
しかし、そこに主の姿はなかった
ベッドの上には、ぽつんと見慣れた上着だけが残されている
ゆあんくん
絶望に殴られた俺の手に握られたスマホが、小刻みに震え、ピロン、と冷たい通知音を鳴らした
画面に表示されたのは、なおきりからの最期のメッセージだった
僕は静かに椅子を足で倒す
激しい雨の音が、その小さな音さえも完全に掻き消していく
ツタに吊るされたてるてる坊主の横で、大きな影が、静かに雨の夜の中へと溶けていった
#ゆあじゃぱ
暇人
767
#能力