テラーノベル
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今日は、朝日の母親に会いに行く。 ついこの間聞いたのだが、朝日は癌が再発したのを母親にも黙っていたらしく、しばらく会ってすらなかったと言う。 しかし朝日の母親は私たちが住んでいる地方の反対に住んでいるらしく、現在急いでホテルを取り、現在は新幹線に乗っている。 となりを見ると少し寂しそうな朝日の顔があった。 私はそんな朝日の顔をこれ以上見たくなくて、目を逸らした。 新幹線にのっていた数時間の間、私たちは一言も言葉を交わさなかった。
目的地に着き、数分、とぼとぼと歩いていくと、周りの家と比べると少し大きな家が見えてきた。朝日の実家だ。 朝日は一瞬ためらってからインターホンを軽く押した。
朝日母親
中年女性の声が聞こえてきた。 朝日は泣きそうな顔をしながら声をしぼり出した。
朝日
ブツっと音がした後、ドアが開いた。
朝日母親
朝日の母親に案内され、椅子に腰をかけた。 お茶を飲み、しばらく雑談をした後、重苦しい雰囲気が流れ始めた。
朝日母親
朝日は一瞬唇を食いしばってから深呼吸をし、意を決したような顔をした後、よく通る声で凛と話し始めた。
朝日
朝日の母親は目を見開いた。だが、朝日は口を止めなかった。 治療を受けたくなかった理由、自分の心情、自分の母親に隠していたこと全てを隠さずに言った。
朝日
朝日
朝日の母親は静かに娘の言葉に耳を傾けていた。 そしてとうとう朝日がトドメの言葉を放った。
朝日
相槌を打っていた朝日の母親の動きが止まった。 私は何か言わなければいけないような気がした。
櫻子
その瞬間、自分の右頬に痛みが走った。どうやらビンタをくらわされたようだった。 もう一度、朝日の母親の顔を見つめ直すとひどく怒っているように見えた。
朝日母親
朝日母親
確かにその通りだ。朝日の母親の言うことは八つ当たりな部分もあるが、彼女が、私と朝日の交際を認めてくれたのは何よりも娘の 幸せを願っていたからだ。私はそれに応えられなかった。成し遂げられなかった。 朝日は自分の母親が半狂乱になって叫んでいるのにびっくりしているのか、目を見開いたまま固まっていた。 しばらく朝日の母親は半狂乱になりながら暴れていたのを呆然と見ていて、やっと朝日の母親が落ち着いたころ、 朝日はやっと口を開いた。
朝日
横を見ると朝日が目一杯に涙を溜めていた。 その顔を見て朝日の母親は泣き崩れた。この親子の間に私は口を出すべきではないのだろう。いやそんな資格もない。 日が暮れて、もうホテルにチェックインする時間が近づいたのでお暇することにした。 私はぱんぱんに腫れた顔をしながら靴を履いた。その時、後ろから朝日の母親に声をかけられた。
朝日母親
朝日の母親は腫れた目を申し訳なさそうに下げながら謝った。そしてそのまま言葉を続けた。
朝日母親
小さな体をもっと小さくしながら彼女は言った。 私は何も言えなかった。言う権利もなかった。だから最後にこう言った。
櫻子
その言葉を聞いた瞬間、朝日の母親は一瞬びっくりしたような顔をした後、息をふっと吐いた。
朝日母親
朝日の実家をあとに、歩いていると、朝日が泣いていた。 そりゃそうだろう。これが今生での母親とのお別れなんだから。
櫻子
私はそれしか言えなかった。
コメント
1件
誤字があったんで直しました
2,114
徹