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2件
泣きそう🥲それしか言えない …
共通テストの4日前
私は桃子さんと駅中のカフェで
小説の最後の詰めをしていた
内藤桃子
内藤桃子
内藤桃子
桃子さんも、いつの間にか
最初に会った時のようなオドオドした様子はなく
むしろ私より楽しそうだった
内藤桃子
内藤桃子
〇〇
そう言って二人で原稿を見つめる
少し疲れていた
受験勉強もある
でも自分が書いたものが
少しずつ形になっていくのが嬉しかった
カフェを出て家に向かう
歩きながらスマホを出した
LINEを開いた
『小説、上手くいきそう』
はじめくんはすぐには見なかった
でも、それで良かった
きっと今頃、はじめくんも自分のことで忙しい
3日後には原稿を出す
そしてその次の日が共通テスト
それが終わったら
2月の終わりにもまた試験がある
その先には大学の入学手続きがあって
高校を卒業して
大学に入って
そんなことを考えながら
私は家へ向かって歩いた
忙しい
やることは、まだたくさんある
でも不思議と嫌じゃなかった
小説も
勉強も
恋も
全部ちゃんと前に向かっている
そんな気がしている
家に帰り
鍵を差し込もうとした
〇〇
開いている
その瞬間、嫌な想像が頭の中に浮かんだ
今、この家の中に
お母さんがいる
...きっと、また男の人と
〇〇は急いでドアを開けた
けれど、部屋の中は綺麗だった
出てくる頃と変わらない
散らかってもいない
荒れてもいない
〇〇
すると
お母さん
お母さん
お母さんが笑った
いつものように
何でもない顔で
〇〇
おかしい
そう思った
すると横から男の人が出てきた
20代後半だろうか
お母さん
お母さんが嬉しそうに言う
お母さん
たぁ君
たぁ君
初めて聞く名前だった
お母さん
お母さん
お母さんは嬉しそうに笑った
私は何も言えなかった
頭の中が真っ白になる
すると
たぁ君の視線がリビングのテーブルに向いた
そこには私が置きっぱなしにして置いたものがあった
北海道大学の赤本
それから、小説の下書き
たぁ君
たぁ君が赤本を手に取る
たぁ君
たぁ君
〇〇
お母さん
お母さんもそこで初めて気がついたように
赤本を手に取った
お母さんはペラペラとめくっている
『北海道大学目指してるの?』
その声を聞いた時
胸の奥が少しだけ痛くなった
伝えていたはずなのに
やっぱり
私には興味がなかったんだ
そんなことを思ってしまった
たぁ君
たぁ君は原稿をながめながら言った
たぁ君
〇〇
〇〇
たぁ君
たぁ君
たぁ君
〇〇
たぁ君
淡々とした声だった
たぁ君
たぁ君が私を見る
たぁ君
〇〇
たぁ君
その言葉に私は黙った
たぁ君
たぁ君
そして、笑う
たぁ君
たぁ君
たぁ君
その言葉が胸の奥に落ちた
言われたくなかった
今まで書いてきたものも
これから進もうとしていた道も
全部、簡単に否定されたような気がした
私は何も言わず
自分の部屋に逃げた
ドアを閉める
ベッドに座って、ただ床を見つめた
数分後
玄関のドアが閉まる
たぁ君が出ていったのだと思う
しばらくして、お母さんが部屋に入ってくる
お母さん
声が震えていた
お母さん
〇〇
お母さん
〇〇
お母さん
その言葉に胸が詰まった
お母さん
お母さんが私を見る
お母さん
お母さん
お母さん
〇〇
お母さん
どこまでも私の事なんて見ていない
私の気持ちなんて、考えていない
私は
お母さんにとって何なんだろう
都合よく笑いかける人形?
自分の隣に置いておくための飾り?
よく分からなかった
たぁ君は、ただご飯を買いに出ただけだった
お母さんが勝手に不安になって
ヒステリックになってるだけ
そんなことくらい、わかってる
わかっているのに
血の繋がりというものは
残酷だ
こういう時だけ振り払いたくても
振り払えない
私も結局
お母さんを手放せない
〇〇
声が震えた
〇〇
お母さん
〇〇
〇〇
お母さん
〇〇
お母さんは〇〇の返事を聞くと
リビングに戻って行った
〇〇は膝から崩れ落ちた
スマホを見る
はじめくんからさっき送ったLINEの返事が来ていた
『良かったな』
たったそれだけだった
私は画面を見つめた
その言葉に、返事をすることができなかった
〇〇は小説を出さなかった
入試にも行かなかった
卒業したらすぐに東京に行く
そう決めてから
少しずつ荷造りを始めていた
使わなくなったものから、ダンボールに詰めていく
北海道大学の赤本は捨てた
原稿はーー
ファイルにしまってダンボールに入れた
どうしてそうしたのか、自分にもわからなかった
もう書くつもりなんてない
なのに捨てるのも違う気がした
桃子さんからは何度かメールが来ていた
『何かありましたか』
『連絡待っています』
私は返さなかった
はじめくんには言わなかった
変な心配をかけたくなかった
それで受験に影響したら嫌だった
だから何も無かったように
私たちは今まで通り過ごしていた
そして2月の終わり
試験も全て終わった
あとは卒業を待つだけ
そんなある日
廊下に引退したバレー部のメンバーが集まっていた
久しぶりに顔を合わせて
くだらない話をしている
そこへ顧問兼クラスを持っている先生が通りかかる
〇〇のクラスの先生だ
先生
先生
先生
先生が笑う
先生
『お前落ちたんじゃね?』
『俺、指定校な』
『は、ずるすぎ』
そんな会話が続く
もうすぐ卒業
それぞれ違う場所に行く
『受かったら、離れ離れだな』
誰かがそう言った
及川
及川
及川
及川がニヤニヤしながら言う
及川
岩泉一
岩泉が及川の頭を引っぱたく
及川
くだらないやり取りに、みんなが笑う
先生も笑っていた
けれど、ふと先生は岩泉を見る
先生
先生
及川
及川が答える
及川
及川
岩泉一
岩泉が睨む
先生
先生が少し考える
先生
そして何気なく続けた
先生
先生
先生
岩泉一
岩泉の表情が止まった
岩泉一
先生
岩泉一
先生の顔から、少しずつ笑みが消えていく
先生
岩泉一
先生
先生
先生
その瞬間
頭が真っ白になった
何も聞いていない
〇〇から、何も
岩泉は、何も言わず走り始めた
及川
及川の声は届かなかった
岩泉は〇〇の家にむかった
何度も歩いた道だった
いつもなら、もっと気楽に歩いていた
でも今日は違った
家の前につく
インターホンを押す
ピンポーン、と
しばらくしてドアが開く
〇〇
〇〇が出てくる
〇〇
その顔を見た瞬間
〇〇は気づいた
ーー知られた
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇は何も言わなかった
岩泉一
〇〇は小さく首を振った
岩泉一
岩泉が真っ直ぐみる
岩泉一
岩泉一
〇〇
〇〇は目を逸らした
岩泉一
岩泉一
岩泉が額の汗を拭う
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉の眉が寄る
岩泉一
〇〇
岩泉一
岩泉一
〇〇
岩泉一
その言葉に、〇〇の表情が変わった
〇〇
〇〇
〇〇
岩泉一
〇〇
〇〇
声が震える
〇〇
〇〇
岩泉は黙った
岩泉一
〇〇
〇〇が遮る
〇〇
〇〇
岩泉一
岩泉一
岩泉一
〇〇
二人の間に
沈黙が落ちた
〇〇は少し息を整える
〇〇
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉は何も言わなかった
そして、低い声で言った
岩泉一
少しだけ言葉につまる
岩泉一
〇〇は目を伏せた
〇〇
〇〇
1歩後ろへ下がる
〇〇
〇〇
もう一歩
〇〇
〇〇
その時だった
お母さん
家の中から、お母さんがひょこっと顔を出した
お母さん
〇〇は振り返る
〇〇
お母さんは岩泉を見る
頭から足元まで、ゆっくりと
お母さん
〇〇
〇〇は短く答えた
そして先にお母さんを家に入れた
〇〇は岩泉を見る
〇〇
〇〇
岩泉一
〇〇
ドアが閉まる
それから卒業するまで
2人は話さなかった
卒業式の日も目が合うことはなかった
春になると岩泉は大学へ進学した
〇〇は東京へ行った
あーもんど
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