主
nmmn注意⚠️ キャラ崩壊注意⚠️ 誤字脱字注意⚠️ 二次創作
主
主
主
第89話『白昼夢』
午前十時。
ゆるやかに流れる風が、カーテンをふわりと揺らした。
その向こうで、蝉の声が遠くから響いている。
らんは、机に突っ伏したまま小さく寝息を立てていた。
昨夜はなかなか眠れなかった。
あの“音”――鈴のような、懐かしい響きがずっと頭から離れなかったのだ。
けれど、不思議なことに、眠りについた途端、心の奥がすうっと静まった。
音がやんで、世界が白くぼやけていく。
そして――夢が始まった。
目を開けると、そこはどこか懐かしい街並みだった。
淡い夕暮れの色が空に滲んでいる。
聞こえるのは、人々の笑い声、遠くで鳴る祭囃子。
“夏祭りだ。”
らんは、夢の中で立ち尽くしていた。
足元には小さな石畳。
並ぶ屋台の明かりが風に揺れている。
けれど、周囲の人の顔はぼやけていて、誰もはっきりとは見えない。
――それでも、懐かしい。
胸の奥が、じんと痛いほどに。
そのとき、背中から声がした。
いるま
いるま
振り向く。
そこに立っていたのは――いるま。
浴衣の袖を無造作にまくり、うちわを片手にこちらを振っている。
隣には、こさめが金魚すくいのポイを持って騒いでいる。
こさめ
こさめ
なつ
みことが優しく笑い、すちは静かに冷やし飴を渡していた。
――六人。
確かに、そこに“六人の自分たち”がいた。
胸の奥で、何かがほどける音がした。
忘れていた記憶が、夢の中で少しずつ色を取り戻していく。
笑い合う声。
花火の音。
夜空に広がる光。
いるまが肩を叩き、こさめが転びそうになり、なつが呆れながら支える。
みこと
――パシャッ。
シャッターの音が響く。
その瞬間、らんは確かに思い出した。
この光景を、以前にも見たことがある。
みんなの笑顔が、風の匂いと混ざって記憶の底に残っていた。
あの日の自分も、笑っていたのだ。
らんの影
らん
らんの影
影は静かに微笑んだ。
その言葉に、風が止まった。
遠くで鳴っていた祭囃子が、急に遠ざかっていく。
らんは、胸の奥がざわつくのを感じた。
花火の光が一瞬強くなり、視界が白く染まる。
その中で――誰かの声が聞こえた。
いるま
いるまの叫ぶ声。
焦りと悲しみが混じったその声に、心臓が跳ねた。
次の瞬間、世界が暗転する。
らん
らんは目を開けた。
息が荒い。
手のひらに汗が滲んでいる。
見慣れた天井。
現実の世界。
けれど、まだ耳の奥には、祭りの音が残っていた。
――ドン、ドン、と花火のような音が、微かに響く。
胸に手を当てると、鼓動がそのリズムに合わせて跳ねていた。
らん
呟いた声が震える。
夢なのに、あまりにも“鮮明”だった。
あの時の空気、光、匂い。
みんなの笑顔。
そして、“いるまの声”。
らん
らんは小さく息を吸った。
その言葉の意味が、まだ分からない。
けれど、確かに胸の奥に焼きついて離れなかった。
昼下がり。
リビングに出ると、こさめがソファでゴロゴロしていた。
こさめ
こさめ
らん
らん
こさめ
らんは少しだけ笑った。
らん
らん
こさめ
こさめ
こさめが嬉しそうに笑う。
らんもつられて微笑むが、胸の奥ではまだ夢の余韻が続いていた。
あの“声”が、意味を持って響いていた。
夜。
窓を開けると、風鈴が小さく鳴った。
――カラン……。
あの音。
昨日と同じ、記憶の残響。
らんは目を閉じる。
心の奥で、夢の中の祭囃子が重なった。
“音”が、“記憶”と“現実”を繋いでいる。
影が、月明かりの中でゆらりと形を取った。
らんの影
らん
らんの影
らんはゆっくりと頷いた。
らん
らんの影
らんの影
影が消える。
風だけが残り、蝉の声が夜の闇を満たした。
ベッドに戻ったらんは、天井を見上げながら小さく呟いた。
らん
その言葉を反芻するたびに、胸が少しだけ痛んだ。
けれど、同時に、確かに“誰か”の温もりがそこにあった。
記憶の糸は、少しずつ繋がり始めている。
音から、夢へ。
そして、やがて“真実”へ。
――それが、らんの“夏”の始まりだった。
第89話・了
主
主
𝙉𝙚𝙭𝙩 ︎ ⇝♡170
主
主
コメント
4件
最高!(感想が雑になってきた、、ごめん、)
少しずつ記憶が戻ってきてる...!いつか記憶が全部戻るといいな☺️ 物語をつなげるのうますぎて尊敬します!✨️ 投稿ありがとうございます!!続き楽しみにしてます!!!