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迅くんの内緒の添い寝係

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迅くんの内緒の添い寝係

1 - 迅くんの内緒の添い寝係 第1話

♥

2,461

2022年06月19日

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21歳、大学生、アパート住み。

今日、バイト先をクビになってしまった。

川瀬 唯花

はぁ…

川瀬 唯花

(お母さんに電話してみたけど、『甘えないで』って怒られちゃった…)

うちは母子家庭で、私の下に小さな妹や弟もいるため、母がそう言うのも無理はない。

川瀬 唯花

(それは分かってるけど…この状況の打開策がないよ!)

今のアパートの家賃が払えなくなりそうだから、とりあえず、不動産屋でもう少し安めのとこを探すしかない。

川瀬 唯花

(生活も切り詰めないとなぁ…)

大学の費用は、今までお母さんが貯めてきたお金で払ってもらって通えているものの…

衣食住は自分で何とかしないといけないので、先が見えない現状にため息しか出なかった。

翌日

大学の講義も終わり、不動産屋で物件を探していると、とある物件が目に飛び込んできた。

【格安シェアハウス!家賃0円!即入居可能!!】

【部屋が綺麗で広い】【○○大学にも近い】

川瀬 唯花

(そんなバカな)

川瀬 唯花

(いくらシェアハウスだからって、家賃0円だったり、こんないい条件あるわけないじゃん)

どう考えても怪しすぎるでしょ!!

貼り紙を眺めていると、中からスタッフの人が出てきて、私に話しかけてきた。

不動産屋スタッフ

そちらの物件をご希望でしょうか?

川瀬 唯花

あ、いや…えっと…

不動産屋スタッフ

もしご希望でしたら、その物件は直接大家さんのほうへ

不動産屋スタッフ

問い合わせをご自身でしていただくことになっております

川瀬 唯花

そうなんですか?

不動産屋スタッフ

はい。ちょっと特殊な物件なので

川瀬 唯花

(さらに怪しいじゃん。特殊な物件ってどういうことだろう?)

そう思いつつ、藁にもすがる思いで大家さんに電話をしてみることにした。

プルルルル…

黒坂

はい、もしもし、黒坂です

川瀬 唯花

すみません。川瀬と申します。シェアハウスの物件についてお聞きしたいことがありまして

黒坂

ありがとうございます。失礼ですが、川瀬さんはおいくつでしょうか?

川瀬 唯花

21歳の大学生です

黒坂

年齢的にはちょうどいいか…

大家の黒坂さんがボソッと呟いた言葉を、私は聞き逃さなかった。

川瀬 唯花

あの~ちょうどいいとは?このシェアハウス、何かあるのでしょうか?

黒坂

少し…いや、だいぶ特殊なんですよ

川瀬 唯花

(あの数少ない物件情報見ただけでも、特殊だって思ったけどね!?)

黒坂

同居人が特殊なため、絶対に好きにならないこと

川瀬 唯花

えっ?

黒坂

それともうひとつ…

添い寝のバイトが可能な人

黒坂

…という条件がございます。川瀬さん、このふたつは守っていただけますか?

黒坂

今までにも0円という家賃に惹かれて、お電話をくださる方も何人かいたのですが…

黒坂

この条件を話すと、大体の方が断るんですよね

川瀬 唯花

…そう、なんですね

川瀬 唯花

(いや、待って。全く状況が分からないけど、断るほうが正常だよね?)

川瀬 唯花

(どんな人が住んでるか分かんない上に…)

添い寝のバイトって!!

川瀬 唯花

(おじさんとかなのかな?エッチな感じだったらどうしよう…)

川瀬 唯花

あの…質問なんですが、その…エッチなこととかされたりしませんよね?

黒坂

ないです、ないです!それは大丈夫です

黒坂

同居される方が、不眠症で隣に人がいると寝られるそうなんです

川瀬 唯花

あっ、なるほど…そういう感じなのですね

川瀬 唯花

(私には年の離れた弟や妹がいるから、寝かし付けとかで慣れてるし…)

背に腹は代えられない。

今のアパートを引き払って、そこへ引っ越そう。

こんないい物件、逃す手はない!

川瀬 唯花

分かりました。その条件で大丈夫です!

黒坂

そうですか…あの雑談なんですけど、Suger Dropって知ってますか?

川瀬 唯花

えっ、あのアイドルの?

黒坂

はい、そうです

川瀬 唯花

知ってますよ。有名ですし…

黒坂

ファンだったりしますか?

川瀬 唯花

いえ、そういうアイドルがいるってことと顔を知ってるくらいです

黒坂

承知しました

黒坂

では、川瀬さんのが入居されることは、既に住んでいる住人には私のほうから、まず話しておきますね

川瀬 唯花

ありがとうございます

黒坂

それに伴いまして、契約等進めたいので、今から言う場所へ来ていただけますか?

川瀬 唯花

分かりました

大家さんとの待ち合わせ場所に着くと、早速、契約の話に移り…。

その内容の中には【契約を破棄する場合も見たことは口外しないこと】と書かれていた。

川瀬 唯花

(えっ…怖い。大丈夫、だよね?)

諸々書類関係の手続きを済ませ、シェアハウスの鍵を受け取ると、大家さんはこう言った。

黒坂

グッドラック!

川瀬 唯花

…!

川瀬 唯花

(なんか凄い送り出しのされ方だ…)

新しく住む場所が決まった私は、善は急げと思い、翌週には引っ越しを決意した。

そして、引っ越し当日、午前11時──

どんな人が住んでいるのかも知らない状況で、シェアハウスへとやって来た。

川瀬 唯花

(どんな人が出てきても驚いちゃだめ…)

川瀬 唯花

(気持ちを強く持たないと!)

ピンポーン

鍵はもらっているけど、自分で開けて入ってもいいような気はしたけど

いきなり知らない人が家にいたらびっくりされるだろうと思い、インターホンを押すことにした。

ガチャ

??

やっと来ましたね。入ってください

川瀬 唯花

…!?

川瀬 唯花

(えっ。嘘…。Sugar Dropの青木迅さん!?)

驚いて固まっていると、家の中から私を呼ぶ声がした。

青木 迅

近所迷惑だから、早く中に入ってくれます?

川瀬 唯花

すみません!…お邪魔します

青木 迅

君のことは大家の黒坂さんから聞いてます。川瀬さん…ですよね?

川瀬 唯花

…はい

青木 迅

俺はSugar Dropの青木迅っていいます

川瀬 唯花

そう、ですよね…

青木 迅

あれ?知ってたんですか?

川瀬 唯花

は、はい…まぁ…

青木 迅

あともうひとり、同じユニットメンバーの森山はじめもここに住んでるので

川瀬 唯花

そうなんですね。Sugar Dropがふたりともここに住んでるんですね

青木 迅

はい、そうですよ。それともう一度確認ですが…

青木 迅

川瀬さんは俺たちのファンじゃないですよね?

川瀬 唯花

はい、ファンじゃないです

青木 迅

それならよかったです。…添い寝のバイトのことは聞いてます?

川瀬 唯花

はい、聞いてます

青木 迅

はじめももうすぐ来ると思いますが、添い寝は俺のほうですので

川瀬 唯花

…分かりました

青木 迅

実はこの仕事を始めてから、ずっと不眠症に悩まされてたんですよ

川瀬 唯花

そうなんですね

青木 迅

何故か、隣に人がいてくれると寝られることが分かったんですが、はじめや男の人ではダメなんです

青木 迅

それに、女性と一緒に寝たら寝られるんですが…

青木 迅

その相手が俺のことを好きになってしまって、襲われかけたこともありましてね

青木 迅

だから、川瀬さんは俺のこと好きにならないでくださいね?

川瀬 唯花

な、なりませんよ!

青木 迅

もし好きになったら、クビってことで…

青木 迅

川瀬さんは、別に何もせず横にいてくれたらいいですよ

川瀬 唯花

はい…

青木 迅

あっ、そうそう。添い寝もれっきとしたバイトなので、ちゃんと報酬は出しますから

川瀬 唯花

えっ!?もらえるんですか?

青木 迅

今の話聞いてませんでした?出すって言いましたよね?

川瀬 唯花

は、はい…

テレビでたまに見るSugar Dropの青木迅といえば、笑顔が可愛い正統派癒し系イケメンと世間からは言われているくらい好印象だ。

川瀬 唯花

(今のは180度とまでは言わないけど、全然違うじゃん…)

誰しも表の顔と裏の顔があるだろうから、別に特別なことではないけど。

川瀬 唯花

(特にアイドルなんて、普段は大変だろうし、家でくらいは素でいたいよね)

青木 迅

そういえば、金額をまだ伝えてなかったですよね。月に30万でお願いします

川瀬 唯花

えっ!?

青木 迅

少ないですか?

川瀬 唯花

いえ、逆です。そんなにいただけるんですか?

青木 迅

はい。前払いでお渡ししますね。はい、これが今月分です

川瀬 唯花

ありがとうございます…

川瀬 唯花

(ほんとに貰っちゃった…)

青木 迅

あっ、はじめ。こっち来て

迅さんが、私の背後に視線を向けると、後ろからもうひとりの住人、森山はじめさんがひょこっと顔を出した。

森山 はじめ

初めまして~、森山はじめっていいます!よろしくね♪

川瀬 唯花

どうも…川瀬唯花といいます。よろしくお願いします

森山 はじめ

唯花ちゃんって何歳?僕は20歳で、迅くんが23歳!

川瀬 唯花

私は21歳です

森山 はじめ

そっか~!僕よりひとつ上なんだね。皆、同世代みたいなもんだし、よろしく!

青木 迅

はじめ、さっきからベラベラとうるさい。初めて入居者が来たからって、ぐいぐい行き過ぎだから

森山 はじめ

あっ、ごめんね~!

川瀬 唯花

いえ…

迅さんの言う通り、はじめさんは結構グイグイ来るタイプのようだ。

川瀬 唯花

(この人は、テレビのまんまだね…)

川瀬 唯花

(迅さんより話しやすいかもしれないな。1歳しか違わないけど、何となく弟みたいに見えてきた)

森山 はじめ

唯花ちゃんの部屋は~僕の部屋と迅くんの部屋の間にある、あの部屋だからね

そう言いながら、はじめさんは私の部屋を指さした。

青木 迅

荷物はあとから届くんですか?

川瀬 唯花

はい

森山 はじめ

なにか手伝うことがあれば、僕でも迅くんにでも言ってね!

川瀬 唯花

ありがとうございます

こうして、奇妙な同居生活が始まった──。

昼過ぎには荷物も届き、夜には片付け終わり、3人で夕食を済ませた。

午後11時

青木 迅

川瀬さん、今日から添い寝してくれるのですか?

川瀬 唯花

はい、その予定です。もう寝ます?

青木 迅

そうですね。寝る準備したら俺の部屋に来てください

川瀬 唯花

分かりました

今日初めて会った、しかも男性との添い寝。

色々インパクト強すぎて、脳内がパンクしそうだけど、ここに住むことになった以上、拒否はできない。

拒否=ここから退去=死へのカウントダウン

そうならないためにも、添い寝で満足してもらわないといけない。

私は寝る準備をして、迅さんの部屋へと向かった。

青木 迅

遅かったですね

川瀬 唯花

すみません…

川瀬 唯花

(心の準備ってものもあるんだから!男性と添い寝だよ!?)

川瀬 唯花

(同じ男性でも、小さな弟とはわけが違うんだから…)

青木 迅

隣に入ってもらっていいですか?

川瀬 唯花

あっ、はい…

そう言いながら布団をめくり、自分の隣をポンポン叩く迅さん。

まるで彼女を呼んでいるようだ。

川瀬 唯花

(って、違う!私は添い寝のバイト!)

迅さんの隣に入り、横になると私は、妹たちへの癖で子守歌を歌い始めてしまった。

川瀬 唯花

~~♪♪

青木 迅

…!

青木 迅

(子守歌??)

青木 迅

川瀬さん、もしかして小さな妹とか弟とかいたりすんの?

川瀬 唯花

…!?

川瀬 唯花

(添い寝を始めた途端、タメ口になった?…急だったからキュンとしちゃったよ)

川瀬 唯花

はい。年の離れた妹と弟がいます

川瀬 唯花

ふたりが小さいときに、よくこうやって歌って寝かし付けてたんです

川瀬 唯花

だからつい癖で…すみません。大人に子守歌はないですよね

青木 迅

いや、聴いてて心地いい歌声だった

青木 迅

それと、敬語は…もういいよ。気楽に話してほしいし

川瀬 唯花

あっ、分かりました。…じゃなかった、分かった

川瀬 唯花

(そういえば、添い寝のバイトって…相手の人が寝たら自分の部屋に帰るってことでいいんだよね?)

川瀬 唯花

(わざわざ迅さんに確認することでもないか。迅さんが寝たら自分の部屋に帰ろう)

再び、子守歌を歌い始めると…数分後には、迅さんの寝息が聞こえてきた。

すると、こともあろうか…こっちに向き直り、私をぎゅっと抱きしめてきたのだ。

川瀬 唯花

(ちょちょちょ……待って!?こんな密着無理~!)

川瀬 唯花

(寝ぼけて、私を抱きまくらと勘違いしてる?)

ぎゅ~…

川瀬 唯花

(近い近い近い!顔上げたら迅さんの顔が目の前だよ!?)

川瀬 唯花

…っ

思いの外、ぎゅっと抱きしめられていて、身動きとれない状態だ。

こんな状況で、どうやって部屋に戻ればいいの!?

翌日の朝

川瀬 唯花

ん…

川瀬 唯花

(もう朝か。…あれ?…ここって)

青木 迅

…ん

川瀬 唯花

うわぁっ!?

青木 迅

あれ?

私…昨日の夜、あのまま寝ちゃったの!?

川瀬 唯花

(しかも、抱きしめられたままなんだけど!)

迅くんの内緒の添い寝係

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コメント

8

ユーザー

めちゃ面白かったです!!

ユーザー

やっと読めた 古い読もうとしたら真っ白になって読めなかった 悲しい😭 あっ久しぶりデス

ユーザー
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