テラーノベル
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森を抜けた先の開けた場所で、 伊黒が別の鬼と戦っていた。
いや、戦いというよりは、一方的に攻め立てている。 不死川も加勢に入り、勝負は時間の問題に見えた。
だが、義勇の目が捉えたのは、 戦場の隅で震えている人影だった。
少女
義
追い詰められた鬼の視線が、その少女に向けられたのを、義勇は見逃さなかった。
義
二人は攻撃に集中している。鬼の自爆特攻の最後の足掻きに、気づくのが遅れるかもしれない。
声を出して警告する時間はない。 義勇は走った。
鬼
少女
鬼が伊黒たちの攻撃を捨て身で受け流し、 少女の方へ飛び掛かった。
間に合わないか。 いや、間に合わせる。 義勇は少女と鬼の間に滑り込んだ。
ズリュッ
義
少女
衝撃で肺が圧迫される。 だが、少女には指一本触れさせない。
伊黒
鬼
一拍遅れて、伊黒の刃が鬼の首を刎ね飛ばした。
鬼は消え静かになった。 残ったのは、荒い息遣いと、雨音だけ。
義
義
少女
少女は真っ青な顔で義勇を見上げた。 その瞳に映っているのは、感謝ではなく、恐怖だ。
少女
義勇の顔は泥と返り血で汚れ、目は虚ろで、全身から血の匂いを漂わせている。
何より無表情で、その様子は 子供にとって不気味な怪物にしか見えなかった。
少女
少女
少女は短く悲鳴を上げ、義勇の手を振り払った。 後ずさりながら、駆け寄ってきた伊黒の方へ逃げ出した。
伊黒
伊黒
義
義勇は凍りついた。 弁解しようと口を開きかける。 「守っただけだ」と。
だが、背中の激痛と、失血による目眩で、言葉が出ない。
遅れてやってきた不死川が、その光景を見て眉をひそめる。
実
義
とんでもない言いがかりだ。 だが、今の義勇の、血まみれで子供に泣かれている姿は、彼らの不信感を裏付けるには十分すぎた。
義
伊黒
少女は伊黒の後ろに隠れ、義勇を睨んでいる。 守ったはずの命から、向けられる拒絶の眼差し。
彼らは義勇を「加害者」として見ている。傷ついているなどとは、微塵も思っていない。
義
義
実
義
初めて、心の中で弱音が漏れた。 背中の傷でも、殴られた頬でもない。
胸の奥が、どうしようもなく痛かった。 誰かに褒められたいわけではない。
ただ、人間として扱われたかった。
義
視界が暗転しかけるが、倒れる場所はここではない。 彼らの視界に入らない、どこか遠い暗い場所でなければ。
コメント
2件

義勇さんは、悪くないのに…… 責めちゃうのが、また良い……!