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あーもんど
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朝
目を覚ますと、スマホに通知が来ていた
珍しくお母さんからだった
まだ眠い目で画面を開く
写真が1枚
青い海と、白い砂浜
その隣には、お母さんと知らない男の人
その下にメッセージが届いていた
お母さん
お母さん
お母さん
私はしばらく、その画面を見ていた
お母さんが最後に帰ってきたのはいつだろう
私はスマホをキッチンに置き
朝ごはんを作り始める
トーストをひと口かじる
そしてまたスマホを見る
写真の中のお母さんは幸せそうだった
知らない男の人の肩に少し寄りかかって
笑っている
私は返信欄を開いた
少し考えてから
『楽しんでね』
とだけ送った
それ以上は何も書かなかった
スマホを伏せる
朝ごはんを食べ終えて
制服に着替えた
髪を整えて、鞄を持つ
玄関に向かおうとする前
ふと思い出して机の上を見る
昨日、破れてしまった原稿
私はそれを手に取った
紙の真ん中に残った
昨日の傷
指でそっと触れる
少しだけ嫌な気持ちになった
でも、捨てることはできなかった
私はその原稿を鞄に入れる
〇〇
返事はない
当然だった
靴を履いて、玄関のドアを開けた
その日の体育は
3クラス合同体育だった
体育館に入ると
コートの中は既にネットが張られていた
『今日バレーだって』
『え、無理。サーブ入らん』
そんな声があちこちから聞こえる
私は友達と一緒に
コートの端でボールを触っていた
アンダーをして、オーバーをする
特別うまい訳じゃない
ただ、授業で困らない程度にはできる
しばらくすると先生が笛を吹いた
先生
先生
先生
体育館中に声が響く
先生
先生
先生
『はーい』とバレー部の声が聞こえた
先生の声と同時に
バレー部の生徒たちがそれぞれのコートに散っていく
『及川くんのところ行こ!』
『私も!』
『ちょっと押さないでよ!』
学年で一番人気の及川徹の周りには
あっという間に人が集まった
私の隣にいた友達も
『〇〇!ちょっと私も見てくる!』
と言って、そちらへ走っていった
〇〇
気づけば1人になっていた
まぁ、いいか
私はボールを拾って、適当にアンダーを繰り返す
1回
2回
3回
ボールを上げて、落ちてくるところを返す
ふと顔を上げた
体育館の壁に
大きな横断幕がかかっている
そこには、これまでのバレー部の実績が並ぶ
大会名
優勝
準優勝
全国大会出場
私はしばらく、それを眺めてた
〇〇
ぽつりと呟く
普段、部活にはあまり興味が無い
だから知らなかった こんなに沢山結果を残しているなんて
私は持っていたペットボトルを口に当てて
水を飲んだ
そのとき
岩泉一
声がした
振り向く
そこに居たのは昨日の男子だった
〇〇は一瞬目を開いた
ーー昨日の
図書室
破れた原稿
〇〇
〇〇は小さく会釈をした
すると彼は
少しだけ気まずそうに頭を掻いた
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
私はボールを見る
『大丈夫です』そう言おうとした
けれどその前に彼が続けた
岩泉一
彼は〇〇を見る
岩泉一
岩泉一
少しだけ間を置いた
岩泉一
今度は真正面から
岩泉一
私は何も言えなかった
昨日のことなんて
もう気にしていないと思っていた
少なくとも
彼にとってはそんな小さな出来事だろう
それなのに
彼は覚えていた
〇〇は小さく笑った
〇〇
〇〇
岩泉を見る
〇〇
本当に気にしていなかった
不思議だ
人間というものは、真正面から謝られると
案外簡単に許してしまうらしい
昨日はあんなに大事そうにしていた紙なのに
今はもう破れたことよりも
わざわざ謝りに来てくれたことの方が
印象に残っていた
それに、不思議と嫌な気持ちじゃなかった
岩泉一
岩泉一
岩泉が軽くボールを触りながら聞いた
〇〇
〇〇
〇〇は及川のいる方を見る
案の定、人で溢れかえっている
女子たちの声が、体育館の反対側まで聞こえる
〇〇
岩泉一
岩泉が少し笑った
〇〇
〇〇も少し笑った
ふと、目が合う
なんとなく気まずくなって
先に目を逸らした
手元のボールを適当に床につこうとする
その瞬間
コツンとボールがつま先に当たった
〇〇
ボールはそのまま転がっていき
岩泉の足元で止まった
岩泉がボールを拾う
岩泉一
そういって〇〇の方へ戻ってくる
岩泉一
〇〇
そこから
岩泉は〇〇にボールの返し方を教え始めた
岩泉一
〇〇
岩泉一
岩泉一
〇〇
岩泉一
岩泉が投げたボールを、〇〇が返す
最初は変な方向へ飛んで行った
岩泉一
〇〇
岩泉一
〇〇
岩泉一
何度か繰り返すと
少しずつ続くようになっていた
〇〇
思わず声が出た
岩泉一
岩泉が笑う
〇〇も笑った
楽しかった
こんな風に誰かと一緒に何かをするのは
久しぶりな気がした
ただボールを返しているだけなのに
不思議な感覚だった
〇〇
〇〇が少しだけ頬をふくらませた
岩泉一
〇〇
岩泉一
そしてしばらくして
〇〇
〇〇は水を飲みながら言った
岩泉一
岩泉は肩をすくめる
岩泉一
岩泉一
〇〇は体育館の壁に掛かった横断幕を見る
いくつもの大会名と、残された実績
その先には、もっと大きな舞台がある
〇〇
言いかけてやめた
上には、きっと上がいる
どんなに上手く書いたって
その先にはもっと上手い人がいる
どれだけ頑張ったって
才能がある人には簡単に追い越される
才能がある人がズルいってわけじゃない
そういう人にも必ず努力はある。わかっている
時々考えてしまうだけだ
自分にも、その少しの才能があったら
でもそれがないから
負ける
潰される
そんなことを〇〇も知っていた
けれど、それを口にすることはない
〇〇
〇〇
話題を変えるようにきいた
岩泉一
〇〇
〇〇
岩泉一
岩泉一
岩泉一
〇〇
〇〇
岩泉一
岩泉はそう言って
またボールをあげた
〇〇
〇〇
小さく呟いた
岩泉は少し驚いたようにこっちを見る
岩泉一
〇〇
岩泉一
岩泉一
〇〇
〇〇は岩泉を見る
〇〇
〇〇
岩泉一
岩泉はボールを返す
岩泉一
岩泉一
ボールが〇〇の腕に当たる
今度は綺麗に返った
〇〇
それからふたりは
授業が終わるまでずっと
ボールをうちあっていた