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福岡県 某所
望
1つの墓の前で、手を合わせる美少年が1人。
そう。 COLORの人気メンバー。 佐野 望だ。
何故…佐野 望がここに居るのか。
何故…佐野 望がCOLORから脱退したのか。
老女
望
話は数週間前へと遡る。
数週間前。 都内スタジオ。
真司
海斗
望
一日のスケジュールを終えたCOLORの3人は、控え室で雑談をしていた。
真司
海斗
真司
望
望の両親は望が3歳の時に事故で亡くなっていた。
望
COLORとしてデビューする前まで望は福岡の祖母の家で暮らしていた。
唯一の身寄りである祖母は望をとても可愛がってくれ、アイドルになりたいという夢も後押ししてくれていたのだ。
忙しくなる前はしょっちゅう帰っていたが、人気が出た今帰ることが難しく、もう2年くらい帰れていない。
望
誰もいない部屋に挨拶をする望。
「おかえり」と返事が来ないのはいつものことなのに、虚しさだけが胸に広がる。
スーパーで買ってきた食材を広げ、夕飯の準備をしようとキッチンに立った。
ポケットからスマホを取り出した、テーブルに置いた時、不在着信が入っていることに気付いた。
望
そこには登録していない番号。
仕事の連絡かもしれないと、その番号へと電話をかけ直した。
望
女性
望
その病院の名前は聞き覚えがあった。
望が幼い頃盲腸で入院した時にお世話になった病院だ。
望
看護師
望
看護師
看護師から祖母の容態を聞く望。
祖母は心臓が悪く、薬を飲み続けていたようだ。
しかし、アイドルとして頑張っている望に心配をかけたくない為秘密にしていた。
看護師からの説明が終わり、望は静かに通話を終了した。
望
自分の為に心臓のことを黙っていた祖母。
そんな祖母のことを考えると、胸が締め付けられそうになる。
望
確かに自分はアイドルとして成功できた。
しかしそれは、祖母の応援があったから。
後押ししてくれたから。
その時、望の頭に祖母との思い出が蘇った。
一緒に暮らし始めた当初、寂しくて泣いてしまった望を優しく抱きしめて寝てくれた祖母。
初めてテストで100点を取れた日に、ご褒美と言って特大ステーキを焼いてくれた祖母。
庭でボールを蹴っていたら、祖母が大切にしていた鉢植えを割ってしまい、泣いて謝ったら「怪我はない?」と望の心配をしてくれた祖母。
大切にしてくれてたのに。 誰よりも自分のことを大切に育てて、愛してくれたのに。
自分は祖母になにもできてない。
今も病院で一人ぼっちの祖母の手を握ってやることさえ出来ていない。
望
そして、望は1つの選択をした。
COLORを脱退し、祖母の傍に居る選択を。
今度は、自分が祖母を大切にしたい。心からそうおもったんだ。