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私が神を殺した日

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私が神を殺した日

1 - 私が神を殺した日

♥

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2021年01月17日

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おお、神よ

我らをお導き下さい

全能なる神よ

聖書を掲げた老若男女がザワザワと騒がしい。

私にとって、「あれ」は悪そのものだ。

そうだ。

こんなものがあるから人々は惑わされるのだ。

わたしは決心した━━━━━。

美乃里、お帰りなさい

市川 美乃里

はい

市川 美乃里

只今帰りました

今日はリヴィウ説教の日よ

市川 美乃里

…はい

とても良い話を聞かせて貰えるなんて!

美乃里も私も幸せ者ね

市川 美乃里

…はい

そういえば美乃里

最近、罪の子と関わったりしていないでしょうね?

市川 美乃里

…してないです

そう、それならいいわ

私はね、美乃里に地獄に落ちて欲しくはないのよ

だから毎日こうして欠かさず贖罪の祈りを…

市川 美乃里

(あぁ、また始まった)

市川 美乃里

(罪の子なんて…バカみたい)

市川 美乃里

(リヴィウ教を信仰していない者達、即ち信者以外は罪人扱い?)

市川 美乃里

(笑わせないでよ)

市川 美乃里

(神なんて偶像により縋って)

市川 美乃里

(そっちの方が醜いわ)

私は生まれついた時から「輝の子」だった。

「輝の子」だなんて、まるで皮肉ね。

盲目的にリヴィウ教の神を信じて祈る人々は 何に対しての赦しを乞うのか。

信者は「輝の子」。

それ以外の蛮族は神に背く「罪の子」。

もう、やってられない。

私は学校で浮いて、友達もつくれず。 挙句の果てには皆が普通にできることも禁止され。 縛られ、監視され、洗脳され。

地獄に落ちないように?

現世が地獄よ。

司教

あぁ、神よ!

司教

我が父なるリヴィウ神よ!

司教

我々を救たまえ…!

救たまえ!

市川 美乃里

……

何しているの、美乃里

神に祈りを捧げるのよ

司教

我が全能の神よ!

司教

あぁ、現世の醜き罪人から我々を救たまえ!

救たまえ、神よ!

市川 美乃里

……ふ

?どうしたの、美乃里

具合でも悪いの?

なら、神に祈りを捧げて加護をいただくのよ

すぐに良くなるわ

祈り?加護?罪人?

司教

神よ…!!

我々を救たまえ、神よ!

我らの偉大なる神よ!

市川 美乃里

……バッカみたい

美乃里…?

司教

あぁ、神よ…

市川 美乃里

うるさい!!!!!!

なんだ?なんの騒ぎだ?あの子はどうしたんだ?

くそったれだ。

吐き気がする。

壊してやる。

お前らの信じているもの全てを壊してやる。

美乃里!あんたって子は…!!

市川 美乃里

…私は、神なんて信じない

……!?

司教

な、なんてことを…!!

神への侮辱だ!!異端者だ!!悪魔だ!!

恐ろしい!「罪の子」に誑かされた悪魔に違いない!!

司教様!この娘をどうします!?

司教

異端者、市川 美乃里よ!!

司教

そなたは我々の教えを否定するか!!

市川 美乃里

はい、私はこのクソみたいな宗教を全否定します

美乃里…!!

なんてこと…「罪の子」に呪われたのね!

可哀想な美乃里!!

直ぐに神にその呪いを解いてもらわなければ!!

市川 美乃里

触んな!!

市川 美乃里

私は…生まれた時から不自由だった!!

市川 美乃里

生きながら死んでたんだ!!

市川 美乃里

神なんてものは私たちを救ってはくれない!!

市川 美乃里

人間が創った只の偶像よ!!

市川 美乃里

そんなものに人生を捧げるつもりはない!!

…っ!?美乃里!!どこへ行くの!!

司教

こら!祭壇に上がるでない!!

司教

そこは清い者にしか立ち入れない領域ぞ!!

悪魔だ!悪魔を殺せ!!

我々の神を守るのだ!!

あぁ……なんて、醜い。

この人たちも本当は可哀想なんだ。

洗脳されて、人生を奪われて。

私は掴みかかろうとする信者たちから逃れ、 祭壇の蝋燭を手に取った。

司教

何をする!!

やめなさい、美乃里!!

市川 美乃里

……これで、いいのよ

私はそう呟くと…。

ボウッ!!ゴオオオオオオ!!

教会の絨毯に蝋燭を落とした。

ぎゃああああ!!

司教

あぁぁぁぁぁぁぁ!!

司教

火が!!火がぁぁぁぁ!!

忽ち炎は燃え広がり、教会の固く閉じた扉には信者が 必死に開けようと群がっていた。

助けてくれ!!熱い!!あぁぁぁぁぁぁぁ!!神よ!!

あの悪魔を殺せ!!何故我々が殺されるのだ!!

神よ!!神よ!!神よ!!神よ!!

市川 美乃里

……ふ、はは

市川 美乃里

神なんて…いないのよ…

……みの、り…

母の声と共に燃え盛る炎に呑まれ、私は意識を手放した。

市川 美乃里

……ここ、は?

市川 美乃里

何処…?

看護師

あ、目を覚ましましたか?

市川 美乃里

……あの…わたし…は…?

看護師

まあ、少し落ち着いて

看護師

貴方は教会の火事に巻き込まれたのよ

看護師

沢山の人が亡くなってね…

看護師

でも、貴方は炎が届かない場所に避難していたから

看護師

少し火傷をしたけど、こうして生きていられるわ

市川 美乃里

……そう、ですか

市川 美乃里

あの…私の母は…?

看護師

……

看護師

言い難いけど…

看護師

貴方の傍に…酷い火傷を負って亡くなっている女性がいたの

看護師

貴方を守るようにして息を引き取っていたわ…

市川 美乃里

……そう…ですか…

看護師

……

看護師

少し、落ち着く時間が必要ね

看護師

また診察に来ますから

看護師

それまでゆっくりしていて

市川 美乃里

……はい

市川 美乃里

ありがとうございます…

私はどうやら助かってしまったようだ。

母は…私を守って死んでしまった…。

どうして…私なんか…。

私は…母の愛する宗教を汚したのに。

どうして。

市川 美乃里

…どう、して…?

美乃里、貴方が幸せになれるように祈っておくわね。

素晴らしい教えがあるのよ。貴方にきっと役立つわ。

美乃里が地獄に落ちないように、毎日欠かさず祈っているのよ。

神は私たちを導いてくれるはずだわ。

市川 美乃里

……お、母さん…

母に悪意は無かった。

母の愛情は私には伝わらなかったけど、 でもちゃんと愛してくれてたんだ。

……あぁ、どうして。

今になって気付いたんだろう。

信者たちが私を非難する中。

母は私を庇うように立っていたじゃないか。

市川 美乃里

あ、はは…

私は、神を…信者たちの偶像を殺した。

私自身を守るため、母さえも手にかけた。

市川 美乃里

あはははははははは!!

永遠に━━━━━━━この呪い(信仰)は私に棲みつくのだろうか?

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