〜渉 side〜
通信機で佐野の指示を受けつつ、 俺、坂田、一ノ瀬の3人で、 爆弾の場所へ向かう
凪沙
渉
優
凪沙
優
凪沙
渉
一度足を止めて、後ろを振り返る
少し戻って天井を見上げると、 佐野の言った通り通気口があった
蓋を外して、中に這うように入る
渉
こんな人目につかない狭いところ まで掃除なんかしないだろうし、 当たり前だろうけど
渉
匍匐前進で少し進んだ先に、 鉄でできた箱のようなものがあった
近づいてよく見てみると、 タイマーが時間を刻んでいた
渉
ソラ
凪沙
一ノ瀬も見つけたらしく、 これで全員が持ち場についた
凪沙
凪沙
佐野の指示通り、箱を解体した後、 次々と中にあるコードを切っていく
渉
残った赤と黒のコードの、 赤の方を切った
優
凪沙
さっきまで動いていた爆弾の タイマーを見ると、表示が消えて 真っ暗になっていた
渉
正体を隠す為とは言え、 やっぱりハンドルネームで呼ぶのは 慣れないな……
ソラ
凪沙
渉
黒のコードがない?
もしかして、一ノ瀬の爆弾だけ、 構造が違うものなのか?
優
ソラ
〜ソラ side〜
ここまで、順調にできてた
ソラ
凪沙
凪沙にとっても不測の事態だった らしく、焦っている声が、髪飾りの 通信機越しに聞こえてくる
リーフ
凪沙
ソラ
渉
ソラ
凪沙
リーフ
リーフ
凪沙
爆弾を解除する時、最後のコードの どちらが合っているのかは、 作った本人にしか分からない
解除をするまでの指示を出来ていた 凪沙は、多分自らの手で 爆弾を作ったんだろう
ソラ
凪沙
凪沙
……もしこれを解除するとしたら、 二分の一の確率で即爆発する
それに俺も巻き込まれて、 確実に死は免れない
ソラ
ユキ
ソラ
何故か、ユキとの通信が繋がった
ユキ
俺達の通信状況を管理しているのは リーフだから、彼女に聞いたんだろう
ユキ
ユキ
そこまで言ったユキが、 一度言葉を切った
真冬
ソラ
ふと、少し前に見た、 夢のことを思い出す
真っ暗な空間で、 自分と話しをするだけの夢
夢に出てきた自分は、 見た目は小さい頃の俺
だけどその俺は、無愛想で冷淡で、 どこか違和感を覚えていた
……今思うと、さっきまでの自分と 何ら変わりなかったのに、な
「救うものは、 もっとすぐ近くにあるだろ」
あの夢の中で、俺に言われた言葉
夢から覚めた後、 「分からない」と切り捨てた言葉
ソラ
夢に出てきた昔の俺は、 一ノ瀬彼方でも、“兄さん”でもない
『ソラ』 ……つまり、今の俺自身
夢の中であいつが言ってたことも、 今なら答えが分かる
……今なら、ちゃんと向き合える
リーフ
ソラ
00:27
確認だけして、声には出さなかった
凪沙
渉
優
リーフ
ユキ
ソラ
こんな時には似合わない、 やけに明るいユキの声色
ユキ
ユキ
不意に、その声に違和感を感じる
通信機から聞こえてはいるけど、 何故か少し遠くからも、少し小さい ユキの声が聞こえた
ソラ
ユキ
ユキ
……なるほどな
俺が爆弾を解除できなければ、 真冬も俺も、二人とも……
ユキ
ユキ
ソラ
俺だって……ソラだって、 ユキがいなきゃ何もできない
時雨桜はいつだって、 ユキとソラの、二人で一つなんだ
ソラ
合っていれば、この後ユキが、 花火のスタートと共に ファントムの計画を止めに行ける
けど、間違ってたら……その時は、 一緒にみんなのところへ行こう
00:10
ソラ
ユキ
ソラ
00:06
そっと、片方のコードに ハサミの刃をあてがう
真冬
ソラ
00:03
手が震えるのは、今までみたいに、 気づかないふりをする
00:02
ユキ
ソラ
00:01
そんなの──
00:00
幸せが欲しいなんて、そんなの……
そんなの──!
ドンッ!!
彼方
彼方
彼方
遠くから、花火の音が聞こえる
それに気づいた時には、 両目から涙が溢れていた
10年前のあの日から、俺の生きる 目的は変わってしまっていた
「ただ幸せに暮らす」ことから、 「怪盗になって復讐する」ことに
復讐に、ずっと取り憑かれていた
『今までの俺じゃ、 怪盗なんてできない』
そう思って、感情を捨てた
……いや、閉じ込めたんだ
それで、笑うことも、喜ぶことも、 泣くこともしなくなって、 いつしかできなくなって
とうとうやり方が分からなくなった
10年前には、これっぽっちも 出てこなかった涙
彼方
……やっと俺も、泣けるようになった
真冬
真冬
真冬が、優しく頷いてくれる
彼方
真冬
真冬
彼方
真冬
真冬
彼方
真冬
真冬
彼方
彼方
多分俺は、ずっと……
彼方
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