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きのこのレストラン

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きのこのレストラン

1 - きのこのレストラン

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2020年08月01日

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夜になり月が昇ると 大きな樹の陰から いい匂いが漂ってきました

きのこのレストランの開店です

お客は限定ひと組様

どこにあるのか オープンはいつなのか 誰も知らない レストランです

そんな神出鬼没なレストランに 今夜もお客がやってきました

エリンギ

いらっしゃいませ

そう出迎えたのは 背の高いエリンギでした

舞茸のウエイトレスが ふんわりしたスカートを揺らして 席に案内してくれます

今日のお客は 黒猫とヒキガエルです

黒猫はレストランの常連らしく 笑顔でエリンギに挨拶しました

黒猫

やあしばらくぶりだね。店は順調かい?そりゃよかった

黒猫

こっちはなんだかんだ忙しくてね

黒猫

ようやく暇ができて、この店に来られたってわけさ

黒猫

こちらのヒキガエル君は

黒猫

まだこの店の味を知らないというので連れてきたんだが

エリンギ

黒猫様はご存知と思いますが、当店にはメニューがございません

エリンギ

その日に取れた新鮮な食材のみを提供しております

ヒキガエルは所在なさげに 辺りをきょろきょろ 見回しています

黒猫

ああそうだったね。しばらく振りで忘れていたよ

黒猫

で、今日の料理は?

エリンギ

きのこのクリームグラタンと、リスのクルミ焼きでございます

エリンギ

リスの焼き加減は、いかがしましょう?

そうだなぁと 黒猫は偉そうな様子で 口ひげをしごきました

黒猫

ヒキガエル君はリスが初めてなんだ。料理長のお任せで頼むよ。

黒猫

ああ、僕の分はじっくり中まで良く焼いておくれ

エリンギは

エリンギ

かしこまりました

と言って 慇懃な態度でキッチンへと下がりました

黒猫

あの小生意気なリスめ

黒猫

煮ても焼いても食えぬと思っていたが

黒猫

クルミ焼きにされるとは思わなかったろうなぁ

黒猫は そう一人ごちて ふふっと嗤いました

ヒキガエル

黒猫さん

ヒキガエル

それって、この前から行方不明になっているあの……

ヒキガエルが

黒猫の独り言を聞き咎めて 尋ねました

黒猫

何を言い出すかと思えば

黒猫

リスなんて世の中にはゴマンといるさ

黒猫

今日のリスと、行方不明のお嬢さんが同じリスだって

黒猫

保証はどこにもないだろう?

黒猫

とにかく食べてみたまえ

黒猫

ここの料理と来たら、一度食べたら二度と忘れられないくらい

黒猫

旨いんだから

黒猫は目を細めてカエルを見回し

舌なめずりをしました

黒猫

明後日のメインは、からあげかぁ

黒猫

味は鶏肉と同じと聞くが、どんなだろう

黒猫

きのこの甘酢餡にからめれば、白飯が何杯でも食えそうだ

ちょうどエリンギが 料理のワゴンを押してきました

給仕をするのは そろいの制服を着た シメジ達です

舞茸が ヒキガエルのグラスに ワインを注ぎました

辺りに おいしそうな匂いが 漂います

ヒキガエルがワインのグラスに 手を伸ばしました

ヒキガエル

乾杯は、なににするかい?

黒猫

そうだな。今日の満月と、最後の晩餐に

ヒキガエル

では僕は
池にいるたくさんの我が子達に

食事は楽しいものでした

グラタンにかかったチーズのとろけ加減も

リスの焼き加減も

ヒキガエルと黒猫を 満足させるものでした

料理があらかた片づいた頃

あのエリンギがテーブルへとやってきました

エリンギ

黒猫様

エリンギ

デザートは、いかがいたしましょう

黒猫

そうだな

黒猫

いつものアイスクリームも捨てがたいが、今日はクルミケーキにしておこう

黒猫

粉砂糖を忘れないでおくれ

黒猫

それと

黒猫

ヒキガエル君には紅茶を。レモンの代わりにブランデーを入れてくれ

黒猫

僕にはコーヒーをくれるかい?

ヒキガエル

いやあ、今日はとても楽しかったよ、黒猫君

ヒキガエル

リスも旨いものだなあ

ヒキガエル

子供達に食べさせたら、どんなに喜ぶか

ヒキガエル

さっきは疑って悪かったな

機嫌の良くなったヒキガエルは 饒舌です

ヒキガエル

きのこのレストランの噂は聞いていたが、こんな素敵な場所だったとは

ヒキガエル

シェフが料理をしているところを、誰も見たことがない、とか

ヒキガエル

食事をした者は帰ってこない、とか

ヒキガエル

きっと誰かが妬んで嫌がらせに流した噂だろう

ヒキガエル

それにしても、今日は楽しかった

ヒキガエル

君はここの常連のようだし、また連れて来てはくれないだろうか

ヒキガエル

それにしても

ヒキガエル

お、おかしいな、ああ

ヒキガエル

なんだか、とても

ヒキガエル

ねむく……

ヒキガエルの手から 紅茶のカップが落ちました

いびきをかいて 眠ってしまったようです

ヒキガエルの周りには

いつの間にか たくさんのきのこたちが 群がっていました

エリンギ

黒猫様

エリンギ

いつも新鮮な食材を提供していただき

エリンギ

ありがとうございます

エリンギが礼を言うと 黒猫は 片手をひらりと振りました

黒猫

いやなに。僕が食べたいものを連れてきているだけさ

黒猫

ヒキガエルは、からあげにしてくれたまえよ

黒猫

それにしてもコイツが、リスの話しを知っていたとはなぁ

黒猫

逃げるチャンスはいくらでもあったはずだが

黒猫

食い意地が張っていたせいで、次の料理にされるなんて

黒猫

思ってもなかっただろうなぁ

夜になると大きな樹の陰から いい匂いが漂ってきます

お客は限定ひと組様

どこにあるのか オープンはいつなのか

誰も知らない 神出鬼没なレストラン

あなた様のご来店を きのこ一同 心よりお待ち申し上げます

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