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なぁ、お前そろそろ
着いてくんのやめろよ

後家も、
もう場所とか使い方教えとか
分かったから帰れっ!!!

蘇枋

えぇー?酷い言いようだなぁ

蘇枋

ここまで色々教えて上げたのは
俺なのにな。

スルりと桜君に 腕を伸ばすと、 猫の様にシャッと威嚇された。 やはりそう簡単には 触らせてくれないかと、 肩を落とす。

なぁ、その、お前…
なんでそんなに俺に触れようと
すんだよ……?

恐る恐ると行った 桜君の回答に、 俺はきっと目を丸くしていただろう。 俺の視線に耐えられなかったのか、 桜君はモジモジとし初め、 目線を下に下ろした。

蘇枋

なんで……
なんでか…、

きっと恋人同士だった時の癖が 出ていたのだろう。 自分でも、こんなに触れたい欲が あるだなんて、信じられなかった。 無意識な俺の行動は、 きっと彼を困らせていただろう。

これからは、無闇に触れない様に 気をつけなければ。 そう気を引き締め、 彼に向かって笑顔を向けた。

蘇枋

なんでだろうね

な、なんでって、
お、お前がやってる事だろっ!!

プンスカ怒る彼に ヘラヘラとした笑いを返した。 ちゃんと今俺は、 彼を安心させられる程 笑えているだろうか。

つ、つーか出てけよっ!!

蘇枋

え~?
でも俺が出てけば

蘇枋

桜君、どうせコンビニ弁当しか
食べないでしょ?

う"っ、

図星を付かれたのか、 唸り声を上げる桜君。 上手いこと誤魔化して、 ここに縋る様に いようとする俺は、 ずるい奴なのだろうか。

まだこの場所の思い出に 浸っていたい。 記憶がなかろうと、 君といたいと思うのは、 俺のエゴなのだろうか。

蘇枋

桜君
今日はどこに行く?

俺の記憶が無くなってから 少しした所。 最近こいつは毎日どこかへ 連れ出そうとしてくる。 話しかけてくる声は、 どこか弾んでおり、 とても楽しそうだった。

ど、どこ行くっつったって、
場所なんてしらねぇし…

蘇枋

どこでもいいんだ、
君が行きたいと思うところに行けば
それで…

行きたい……

きっと何気なく 放たれた言葉なのだろう。 それでも俺は、深く考えた。 自分の行きたい所について 唸りながらも考えてみた。

それでも特に思いはつかず、 横でニコニコ笑っている 男を見た。 「どうしたの?」 と、優しく目で訴えられた様な 気がする。

そこでフと思いついた。 あいつは俺の事を知っているのに 俺はあいつの事、全く知らないと そりゃ、何聞いても話してはくれないので、 知らないのも当然だが。

なぁ、ほんとにどこでもいいのか?

蘇枋

うん。君の行きたい所なら
どこへでも連れてってあげるよ

じゃ、じゃあ…

額から汗が滑り落ちる。 言葉が少し詰まる感じがした。

お前の……
家……

その時の蘇枋の顔は、 笑顔が滑り落ちて、 ぽかんとした顔だけが浮かび上がっていた。

蘇枋

靴、そこで脱いでね

さ、流石にわかるわっ!

知らない場所に ドキドキしながらも 威勢を繰り出し声をはりあげた。 脱いだ靴は揃えた方がいいのか それともそのままの放置が いいのか迷いが混じった瞳で 蘇枋を見上げた。

蘇枋

ここでは揃えなくてもいいよ

わ、分かった…

脱いだ靴は 少し雑に置きっぱなしにして、 蘇枋の後ろを大人しくついて行った。

な、なぁ、
ほんとにいいのかよ
家…

蘇枋

桜君から来たいっていったんじゃない

蘇枋

いいんだよ
俺がいいって言ったんだ

蘇枋

自分の言葉に責任は取るよ

ふふっと笑って見せた 蘇枋の顔は、 品があってとても美しい様だ。

いざ部屋に足を踏み入れてみると、 蘇枋らしいな。 という感想しか出てこなかった。 無駄に小綺麗だし、 壁や天井は白1色で染まっており 清潔感があった。

蘇枋

って、言っても、
何もないけどね

いい。
見てるだけでも、なんか…

蘇枋

楽しい?

蘇枋

そうなら良かった、笑

不安げな瞳は、 俺の返答でほっとしている様に 見えた。 向けられた柔らかい笑みに、 少しムズムズした。

蘇枋

何かお茶でも飲もうか
ちょっと気持ちも
落ち着くだろうしね

茶って、いつもお前が飲んでる
みてぇな?

蘇枋

そう

蘇枋

嫌だった?

この聞き方が、 少しずるいと思った。 分かっている癖に、 不安げな表情で こてんと首を傾けた。

いや、…
じゃ、ねぇ…

蘇枋

そう、よかった……

蘇枋

コップ、これでいいよね?

差し出されたマグカップは、 白黒の猫が描かれていた。 蘇枋が手に持っていた ティーセットとは、 とてもじゃないが、雰囲気が 合わない。

いいけどよ、
なんでコップだけ
雰囲気ちげぇんだよ

只々疑問で聞いてみれば 蘇枋は微笑む一方で、 口を開こうとはしなかった。 悪魔で黙っているつもりなのだろうか。

教えたくねぇならいい。

そこからはしばらく無言が続いた。 この無言の間は、 少しだけ居心地が悪かった。

2人で来た ちょっと大きめなショッピングモール。 恋人同士での 初のデート場所は こことなった。

大きな場所に来たのは 初めてなのだろうか。 桜君はキョロキョロと 周りを見回しては、 大きな音にビクリと肩を震わせる ばかりだった。

まるで、猫みたいだなと、 自然と笑みが溢れ出るのが分かった。

蘇枋

桜君、迷子にならない様に、
手でも繋ごうか、笑

お、俺は子供じゃねぇ!!!
迷子になんねぇ!!

桜君の大声は、 直ぐに周りの音へとかき消された。 真っ赤になってブルブル震えている 様子が、とても可愛らしく思えた。

蘇枋

違うよ
俺が繋ぎたいだけなんだ

蘇枋

ごめんね、口実作りたくて、

本心を口から出して しまえば、 全身真っ赤にさせて、 さらにブルブルと 震え出した桜君。 手を繋ぐだけで、この様子ならば、 次のステップに進むのに、 何年かかるのだろうか。 桜君との未来のことを考えて、 また1つ笑みが零れた。

で、ど、どこ行くんだよっ

ぎこちなく繋いでくれた 手からは、 桜君の暖かい体温を感じた。 口をとんがらせながら 話しかけてくれる姿に、 やっぱり可愛いという表現しか 出てこない。

蘇枋

桜君の家、
何も無いでしょ?
せめてコップとか買いに行こうと
思って、

はぁ?コップって……
いらねぇよそんなの

蘇枋

ダーメ
あったら便利でしょ?

蘇枋

それに、前
飲み物が飲めなくて
困ってたでしょ?

確かにそうかもだけどよ…

渋々といった感じで、 俺たちは歩き出した。 向かった先は コップ等が売っている ショップ。 店内は、カラフルなコップや、 お皿等で埋められていた。

こ、コップ買ったら……
終わるのか……?

ショップで どんなものを買おうかと 当たりを見回している時、 不意に袖をそっと引っ張られた。

蘇枋

えっ、

聞こえてきた言葉にびっくりして、 思わず間抜けな声が 出てしまったと思う。 本当にらしくないな、 と、心の中で少し反省した。

俺からの返答が、 間抜けな声しかなかったからか、 桜君が不安げに俺の顔を覗き込んだ。

蘇枋

終わらない。

蘇枋

終わらないよ、

蘇枋

コップを買ったあとも、
色々見て回ろう?

慌てて笑顔を取り繕い、 彼を安心させる言葉を投げかけた。 俺の返答を聞き、ほっとしたのか、 その後は何も追求される事は なかった。

蘇枋

ねぇ、桜君
俺とお揃いで
これにしない?

あ?んでこれ…

俺が取りだしたのは、 白黒の猫が書かれたカップだった。 人目見た時、 つい手を伸ばしてしまったそれは、 彼によく似たマグカップだった。

蘇枋

4つ買って、
俺の家と桜君の
家に置かない、?

お前も欲しいのか?

不思議と言った顔で 俺をじっと見つめてくる桜君。 4つもいるのかと、 キョドりとした顔をした。

蘇枋

君と2人でお茶を飲む時に、
俺もこれを使いたいなって
思って、

ほんとにこれでいいのか?

蘇枋

うん、これでいい。
これがいいんだ

蘇枋

もちろん、桜君が
別のを欲しいのなら、
そっちを買おう?

いい、俺もこれにする

ちらりと髪から覗かせた桜君の 顔は、薄く赤らいでいた。

蘇枋

いいの?

……

俺も…

俺も、これがいい。
これがいいから、これに、する…

蘇枋

かっこいいね。
ほんとに君は、

かっこよくて、 可愛い君が、 俺は愛したくて、 もっともっと抱きしめたくて 仕方がない。

でもきっと、君は 恥ずかしがって、 俺の事を弾き飛ばしちゃう だろうなぁ、 頭の中で想像してみた。

触れられなくてもいい。 君に嫌いと言われてもいい。 だからただ、 ずっと一緒に居られたらいいな。 そう考えながら、 彼の手を固く握り返した。

記憶のない君へ。

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コメント

12

ユーザー

見るの遅れたぁぁぁ😭😭 心拍数ハンパないくらい感情おかしくなる(いろんな意味で)

ユーザー

早く思い出してぇぇ桜〜😭

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