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怪盗 時雨桜

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怪盗 時雨桜

27 - 茶番劇

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2022年01月21日

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〜真冬 side〜

ずっと同じ里で育った彼方さん

家族に比べたら血の繋がりは 薄いけど、そんなものよりも、 強いもので繋がっていた

友達でも、親友でも、幼馴染でも、 いとこでも、ただの親戚でもない

ボクらの間には、 家族同然の繋がりがあった

真冬

謝らなきゃいけないのは、ボクの方だから……っ

本当は、ボクが言うべき言葉

真冬

ごめんね、兄さんっ……

真冬

ボクが怪盗をしようって言ってなかったら、自分を押し殺すこともなかったよね

真冬

嫌いなこと、しなくてもよかったんだよね……

元々一ノ瀬家は、ボクらの家系の 怪盗業に後ろ向きだった

香月家が率いる怪盗の里では、子供は 幼い頃から怪盗の訓練をさせられる

彼方さんは、それをやってこなかった

だから、年下でもずっと訓練を してきた九葉の方が、腕が長けてる

うちもそうだったけど、ボクは元々 運動が好きだったから、自然と訓練を 受けるようになっただけ

だから、能力は友弥君の方が高い

真冬

(そんな落ちこぼれのボクらが怪盗をしようなんて、無理な話だったんだ)

「今まで上手くやれてたのは、 凪沙が裏で操っていたから」

そう言われても、 今なら納得できてしまう

友弥

……違うよ

真冬

え?

友弥

元々、俺らの家が怪盗業を継いでたから、あいつらが来たんだよね。

友弥

なら、うちのせいだよ。

友弥

彼方兄と真冬は何も悪くない。

友弥

……そうだよね、九葉?

九葉

……うん。

九葉

だって、はっきり言ってうちの当主、考え方が古いんだもん。

九葉

今どき怪盗なんて、マスコミが面白がって注目するだけの存在にすぎないのにさ。

九葉

何の為にやってるのかマジで分かんない

本家である香月家と、その直属の 分家である相川家と一ノ瀬家

今日この時まであの里が絶えず存在 し続けてるのは、たしかに香月の力だ

だけど、だからといってこの二人を 責める理由にはならない

凪沙

……ねぇ、そろそろ茶番終わった?

不意に、凪沙が口を挟んできた

茶番って……

凪沙

だってあたしには何の関係もないもん。里で育ってないんだから

真冬

なっ……

自分に関係ないからって、 そんな言い草……!

凪沙

あたしは真冬のいとこだよ。でも里とはかけ離れたところで、ごく普通の人として育てられてきた

婿養子として佐野家から里にきた、 ボクらの父さんのお兄さんと、 その人の婚約者との間に生まれた凪沙

ボクらのいとこだからといって、 里と関係を持たないのは、 ごく自然なことだったはず

それに、この里に来たって 何もいいことはないはずなのに

凪沙

なんか、面白くなかったんだよね。

凪沙

いとこ達はあんな特別な場所で育ってるのに、あたしは仲間はずれ。

凪沙

たまに遊びに行くことはあっても、みんなを羨ましがるだけ。それが辛かった。

凪沙

だけどさ……あぁ、みんな覚えてる?

凪沙

ファントムがあの里に来た直後、あたし、遊びに来てたんだけど

彼方

は……?

真冬

えっ……?

あの日、凪沙も里に来ていた?

真冬

……あっ……!

???

あ、まふゆ!

真冬

なぁに?

???

いっしょにあそぼ!

???

“なぎちゃん”がきたの!

真冬

えーっ、ぼくかなたおにいちゃんとあそぶの!

???

そっかぁ……

凪沙

まーくん、いっしょにあそべないの?

???

そうみたい。

???

じゃあなぎちゃん、ふたりであそぼ!

凪沙

いいよ、“まーちゃん”!

そうだ

たしかにあの時、凪沙が来ていた

ボクは兄さんと遊ぶからって 外に出たけど、凪沙は姉さんと一緒に うちにいたんだ

真冬

でも、それと何の関係が……

凪沙

まぁ、最後まで聞いてよ。

凪沙

あの日、突然ファントムとかいう奴らが里を壊し始めたじゃん?

凪沙

それがさぁ……

凪沙

……ふっ、はは、あっははは!

凪沙

それがさ、ほんっとーに面白くって!!

九葉

は……?

あれが……面白い……?

凪沙

だって、普通あんなこと起こる?

凪沙

そんなのせいぜい本の中だけの話じゃん。

凪沙

でも、それがあたしのいる現実でも起きちゃってる!

凪沙

あの時は本当に楽しかったよ。空想の世界に入れたみたいだった。

凪沙

だからね、あたし……

凪沙

ファントムに入れば、もっとそんな光景を見られるんじゃないかと思って。

凪沙

入ったんだ、ファントムに

ファントムに……入った……?

真冬

ねぇ、それ本気で言ってるの?

凪沙

うん、嘘つく必要はもうないし

真冬

なんで? ファントムはボクらの敵なんだよ!?

凪沙の思考が理解できなかった

あの光景が面白い? だからファントムに入った??

意味が分からない

凪沙

だって、さっきも言ったじゃん。

凪沙

あたしはあの里とは関係ない。

凪沙

実際叔父さんと真冬達以外とは血繋がってないんだし、他人も同然だよ。

凪沙

それに、思い入れなんてこれっぽっちもなかったもん

「何かおかしいこと言った?」

そんな表情で、淡々と告げられる

凪沙

っていうか、彼方さん。

凪沙

あんた、自分から死にに来て何がしたいの??

彼方

っ……

自分から死にに来た……?

真冬

彼方さん、どういうこと……?

彼方

…………

ボクが聞いても、何も答えてくれない

凪沙

あぁ、その人にはね、すでにさっきあたしのことを教えてたの。

凪沙

その上で、彩莉を助ける時、あたしの指示に従ってみんなを動かしてもらった。

凪沙

ファントムのあたしの命令をね

真冬

え……

彼方

っ……ごめん

数十分前

〜彼方 side〜

彼方

……3分。あと2分半で──っ!?

突然パソコンの画面が乱れて、 ユキ達との通信が途切れる

彼方

(こんな時に……)

どうにか復旧させようとしている ……と、不意に視界が暗くなって、 目の前に誰かが現れた

凪沙

久しぶり、彼方さん

彼方

……凪沙?

この声は、真冬達のいとこの凪沙だ

彼女にも彩莉のことで協力をして もらっているから、俺も繋がりがある

凪沙

そ。ところで今、結構ピンチな感じ?

彼方

……何の為に来た?

凪沙

ちょっと、質問を質問で返さないでよ。

凪沙

まぁいいよ。答えてあげる。

凪沙

あたしがここに来たのはね、

凪沙

“あたしの”計画を成功させる為だよ

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