コメント
2件
トーマ
トーマ
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子はおれの車椅子の後ろ側に回る
トーマ
菜子
菜子
部屋の反対側には
黒いシートに覆われた
大きな「なにか」が 鎮座していた
菜子はそれを手で掴むと
一気にシートを引いた
トーマ
トーマ
身体中を震わせているおれの 正面には
確かに詩乃の姿があった
血の気のない詩乃は目を閉じて うっすらと笑っているように見える
菜子
菜子
菜子
菜子
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
おれの震えは止まらなかった
トーマ
トーマ
トーマ
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
おれは蒼白な表情をたたえる詩乃に 語りかけるように
言葉を詰まらせながら言う
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
トーマ
トーマ
トーマ
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子は詩乃の座っている 椅子の隣にある
台の上のバンドを取って おれを睨むように見た
菜子
菜子はそう言うと いくつものバンドを
しげしげと見回した
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子は先ほど手にしていた
ノートの最初のページを開いた
そこには詩乃の筆跡で
びっしりと文字が綴られていた
田澤トーマへの遺言
わたしは まさか最愛の人が
わたしにとって 最悪の結末をもたらすとは
思っていませんでした
トーマは 初めて会ったときから
「この人ならわたしの全てを 受け入れてくれて」
「この人となら幸せになれる」と
言葉ではなく感覚として わたしという存在に受け入れられた
最初の人だった
この人にならわたしの全てを さらけ出してもいいと思った
その結果わたしは トーマと身を重ね合わせた
トーマとの行為は わたしにとっても喜びそのものだった
でもあんなことになるなんて
当時のわたしは考えてもいなかった
トーマはわたしにこう訊いた
「動画、撮ってもいい?」
わたしはトーマに ひとりでするときも寂しくないように
という意味を込めて 動画を撮ることを許可した
わたしはスマートフォンで 撮られているものとばかり思っていた
しかしながらトーマは部屋中に カメラを仕掛け
わたしのことをつぶさに 撮影していた
そしてある日を境に わたしの人生は大きく変わってしまった
きっかけはわたしのもとに届いた 一通のメッセージ
そこにはこんなことが書かれていた
「しのちゃんのエッチな動画 拝見いたしました」
「お金は多めに払うので ぼくともやってくれませんか?」
わたしはどうしてそんなメッセージが 送られてきたのか
わからなかったけれど
まさかと思って その動画が配信されていた
アダルトサイトにアクセスすると 淫らな動画が横溢している
タイムラインの中に わたしの裸体が載っていた
どうしてどうしてどうして なんでなんでなんでなんで
大量の疑問符が 頭を埋め尽くし
それがひとつの解を導き出したとき わたしは耐えがたい吐き気を催し
すぐさまトイレに駆け込み 胃の中のものを全て吐いた
涙がとめどなく溢れた
トーマが わたしを殺した瞬間だった
ネット上には既に 複数の動画投稿サイトに
わたしの動画が流布していた
何億人という男に わたしが知れ渡っているのだ
淫らな姿のわたしが
動画は隠しカメラで 撮られているようで
それが拡散されている
トーマはすべてを了承した上で この事件に及んだのだろう
もしトーマと別れて 誰か別の男と付き合ったとしても
事実をもみ消すことは決してできない
だからわたしは 自ら命を絶つことに決めた
けれど 死をもって人生を終わりにすることで
わたしは救われるのだろうか
いや きっと救いは来ない
わたしの身体で自慰にふける男は 増えても
わたしはもう決して 存在を消すことはできない
だから罪ある者に トーマに
わたしが感じたのと同じ 痛みを与えてほしい
それが わたしの願いです
——植村詩乃
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
トーマ
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
菜子
トーマ
菜子
菜子
菜子はバンドを手に取ると おれの真前で
手首から先 指を一本ずつ
動かないように 固定していった
トーマ
トーマ
菜子
菜子
菜子