王様
訳もわからない状況の中、 きらびやかな装飾を施した服装の男がそう言った
紫苑
東矢
俺ともう一人、高校生ぐらいの男が困惑した様子で言う
王様
王様
王様
男は頭を下げる。 見たところ、この国の王様のようだ
王様
王様
王様
紫苑
王様
紫苑
紫苑
王様
紫苑
東矢
王様
紫苑
もう一人の男が、悪態をつく
しかし、それも当たり前だろう
いきなり、こんな世界に連れてこられたのだ
俺も驚きのあまり、先ほどから声がでない
王様
王様
紫苑
東矢
流石にこれには、声が出た
今の言い方だと、まるで──
紫苑
王様
王様
紫苑
東矢
王様
王様がなんてことのないように言う
こっちは、頭をフル回転させているというのに…
紫苑
紫苑
躊躇いながらも、男が言葉を発する
すると、男の前に光る画面が出現した
紫苑
東矢
男に続くように俺も、言葉を発する
出現した画面には
東矢
名前 賢導 東矢 (かたみち とうや) 役職 一般人 基本能力 力 10 知 24 速 15 スキル 『召喚された者』 異世界の言語を獲得 『通行人A 』 誰かの意識下におかれない (効果時間 10秒) 『演劇』 半径10m以内の生物を、自身の演目に巻き込む 『???』 特定の状況下で発動 (現時点では不明)
東矢
役職は一般人、つまり───
紫苑
俺はただの巻き込まれた一般人ということだ
時は移り、一週間後
東矢
隊長
東矢
隊長
東矢
どういう訳か、俺は訓練場で模造刀を振っていた
隊長
東矢
俺は兵士として、魔王軍討伐部隊に組み込まれた
一応、召喚された身であるため なるべく自身の手中に収めたいのだろう
東矢
隊長にばれないよう、小声で愚痴る
はぁ、今頃勇者はどんな生活をしているのか
少なくとも、俺よりましな生活ってことは確かだが…
隊長
隊長
東矢
ああ、もとの世界に帰りたい
隊員
ジャッカル
東矢
いつもの訓練が終わり、 俺たちは酒場で慰労会を開いていた
ジャッカル
隊員
東矢
メンバーは予定の空いていた俺と、ジャッカル、 そして、あまり交流のなかった一人の隊員だ
ジャッカルは、この世界に召喚されてできた初めての友人だ
三回目の訓練時に、模擬試合をしたことで仲良くなった
東矢
ジャッカル
隊員
東矢
思ったよりも、異世界の住人は俺に対し温かく接してくれた
東矢
隊員
ジャッカル
東矢
ジャッカル
隊員
「おー!!!」
翌日
東矢
案の定、俺は二日酔いを起こした
東矢
そう言いながらも、休むことはできないので 足を訓練場のほうへ進める
東矢
考えに考えた結果、少し休憩することにした
東矢
東矢
少し不安になりながらも、近くのベンチに腰をおろす
東矢
東矢
少し、ゆっくりとしすぎたかもしれない
東矢
時計を確認すると、時刻は4時50分
訓練開始は5時丁度
東矢
いや、訓練開始前に点呼があるから、それまでにつけばいい
東矢
俺は急いで、訓練場に向かう
隊長
東矢
訓練場はもう目の前
しかし、点呼は始まってしまった
このまま入ってもバレるだろう
東矢
東矢
東矢
一つ名案が思い付いた
東矢
祈りながら俺は言葉を発する
東矢
体に変わった様子は見られない、けどもう信じるしかない
東矢
隊長
隊員
次が俺の番!ギリギリ位置にはつけた!
隊長
東矢
返事を返す
隊長
隊長
東矢
隊長
隊長
東矢
隊長
隊員
どういうことだ?あの時俺は、スキル発動から10秒経っていたはずだ
もしかしたら…
東矢
今日の訓練も終わり、俺は今朝の出来事の疑問を解消する
東矢
久しぶりに発した、俺のこの生活を決定した言葉
名前 賢導 東矢(かたみち とうや) 役職 一般人 基本能力 力 30 知 30 速 45 スキル 『召喚された者』 異世界の言語を獲得 『通行人A』 誰かの意識下におかれない(効果時間 15秒) 『演劇』 半径10m以内の生物を、自身の演目に巻き込む 『???』 特定の状況下で発動(現時点では不明)
東矢
なぜそんなことが起きたのかは、わからなかった
でも、これからも訓練を積めば、いつか…
東矢
『演劇』は昔、俺が演劇部だったから、使い方はなんとなくわかった
金欠になりそうだった時に一回、このスキルを使って 路上パフォーマンスを行ったが、観客がどんどん集まった
結果、おひねりをたくさん貰うことができた
つまり、あの時俺は「金欠の俺が、パフォーマンスでお金を得る」 という内容の劇の役として、周囲の人を巻き込んだ──
──という風に捉えた
東矢
どちらかといえば、こっちのスキルのほうが成長して欲しいのだが
東矢
そういえば、スキルというのは勇者と魔王しか持たないらしい
まぁ、俺の存在によって、召喚された者も持つとわかったが
東矢
異世界の生活に慣れ、魔王という存在に疑問を持つ
こんなのはテンプレだと───
東矢
俺は、寮へと帰ることにした
1ヶ月後
ついに、俺たちの部隊も、戦場へと出陣することになった
隊長
隊長
隊長
隊長
隊長
「はい!!」
隊長
隊長
隊長
隊長
「はい!!」
東矢
ジャッカル
東矢
ジャッカル
東矢
ジャッカル
やっぱり、こいつは兵士なんだなと思う
俺はやはり怖い
死ぬのは嫌だ
東矢
名前 賢導 東矢(かたみち とうや) 役職 一般人 基本能力 力 130 知 110 速 210 スキル 『召喚された者』 異世界の言語を獲得 『通行人A』 誰かの意識下におかれない(効果時間 20秒) 『演劇』 半径15m以内の生物を、自身の演目に巻き込む 『???』 特定の状況下で発動(現時点では不明)
東矢
やるしかない
俺は、これから戦いに行くんだ
隊長
隊員
東矢
西の大森林、ここで俺たちは魔物の群れを迎え撃つ
隊長
隊長
東矢
隊員
ざっ、ざっと
人の足音ではない、これは───
隊長
魔物のおでましだ
魔物
東矢
魔物が飛びかかり、攻撃するのを俺は盾で防ぐ
魔物
東矢
魔物は基本、武器を持たない
厄介なことに、鋭い爪による攻撃が主だ
東矢
怖い
今、俺の目の前にいる、俺を殺せる存在が怖くて仕方がない
東矢
ちらと横を見ると、仲間が戦っている
そんな状況で、怖いなんて言葉、口には出せない
東矢
戦場の鉄則だ
東矢
東矢
第2ラウンドの開始だ
東矢
魔物の首に剣を滑らせる
魔物
東矢
魔物
東矢
背後からの攻撃を盾で受け流し、喉元を突く
魔物
魔物
東矢
いくらなんでも多勢に無勢だ
ここは一旦──
東矢
魔物
魔物
スキルで身を隠し、一時離脱する
隊長のいる場所へ戻らなければ
その時だった
ゾッとする感覚
咄嗟に後ろを振り返った
そこには──
敵意を感じない、穏やかな死があった
東矢
わからない、なぜこんなにもヤバい奴がいる?
先の発言を聞くに、奴は魔物なのだろう
しかし、先ほどの魔物どもとは違う
遠くにいるのに、どうしようもない力量差を感じる
俺たちを見回し、そう話す奴はまるで
隊長
隊長
隊長
隊長
東矢
隊長は、奴、死神を見つめ剣を構えた
隊長
東矢
隊長は覚悟を決めた顔つきだった
死神
死神
隊員
死神の姿がぶれる
近くにいた仲間の首が、鎌によって刈り取られた
東矢
死神
死神のもつ鎌には、血の一滴もついてはいなかった
東矢
このままじゃ、死んでしまう
死ぬ?俺が?このまま?
まだ何もできてない
もとの世界にすら帰れてないのに
東矢
仲間が死んでいく、どんどん、どんどん
日常が、思い出が消えていく
東矢
なら、どうするべきなのだろう
どうせ何もしなくても死ぬんだ
抗う、最期まで
スキルを取得しました
東矢
東矢
名前 賢導 東矢(かたみち とうや) 役職 一般人 基本能力 力 120 知 110 速 210 スキル 『召喚された者』 異世界の言語を獲得 『通行人A』 誰かの意識下におかれない(効果時間 20秒) 『演劇』 半径20m以内の生物を、自身の演目に巻き込む New『人生劇場』 覚悟を決めた時、『演劇』の演目の細かい設定が可能 一度だけ、どんな役にでもなることができる
東矢
今まで、不明だったスキルが現れた
使うタイミングは決まっている
東矢
東矢
東矢
東矢
東矢
覚悟は決まった
まずは死神を『演劇』の範囲内にもっていく
東矢
スキルを発動させると同時に、俺は駆け出した
念のため、足音はなるべくたてぬように全力疾走
死神
また、仲間が死んだ
速く、もっと速く!
死神に近づく
あと20m
あと10m
あと5m
あと0m 範囲内に入った!
東矢
死神の鎌が、仲間の命を奪うすんでで止まる
死神
死神
東矢
東矢
演目の内容を決めてください
東矢
演目は決戦
役者は俺と死神
死神の役はそのまま敵
俺の役は──
東矢
死神
死神
東矢
死神
死神
死神は鎌を持ち直す
東矢
名前 賢導 東矢(かたみち とうや) 役職 勇者 基本能力 力 12000 知 11000 速 21000 スキル 『召喚された者』 異世界の言語を獲得 『通行人A』 誰かの意識下におかれない(効果時間 20秒) 『演劇』 半径20m以内の生物を、自身の演目に巻き込む 『人生劇場』 覚悟を決めた時、『演劇』の演目の細かい設定が可能 一度だけ、どんな役にでもなることができる 『オーバーリミット』 勇者の技を用いることができる 基本能力を100倍する
東矢
新しいスキルに、そう感想を洩らすと
死神
東矢
決戦の始まりだ
死神
死神は、先ほどのような俊敏な動きを見せる
しかし、今の俺なら
東矢
死神の鎌を剣で弾き返す
死神
死神の姿が薄くなっていく
東矢
死神の姿は 目を凝らさないと見えないほどの薄さとなった
死神
東矢
間一髪、鎌の一閃を剣で退ける
東矢
東矢
死神
死神には、俺が突然消えたように見えるだろう
死神
東矢
『オーバーリミット』で使える勇者の技を出す
死神
突如、死神の周りに鎖が出現し、死神を拘束する
東矢
剣で死神を貫く
死神
東矢
しかし──
死神
東矢
死神は剣を抜き、拘束を外し、俺に斬りかかる
東矢
何とか首は避けられたが、左腕を失った
東矢
アドレナリンが出ているのか、ひどく痛みはしない
だが、喪失感が、怒りが、悲しみが湧いてくる
東矢
右手で剣を握る
両手剣を片手で扱うなんて初めてだ
だが、これで決める
東矢
死神
東矢
東矢
死神は出現した鎖を、鎌で斬る
死神
分かっているこれは囮だ
東矢
東矢
また、死神の視界から俺は消えただろう
東矢
死神
死神は後ろに鎌を振り抜く
死神
東矢
東矢
死神の頭上、片手で剣を振りかぶる
死神
死神
断末魔をあげながら 死神は、消えていった
俺は、やれたのか
東矢
力が抜けていく、演目が終わったからだ
体は前へ倒れていく
まずい、力が──
ジャッカル
ジャッカルが俺の体を受け止めてくれていた
いや、ジャッカルだけじゃない
隊長
隊員
仲間が、たった1ヶ月と少しぐらいの付き合いだったのに
こんなにも、俺に集まってくれていた
東矢
東矢
東矢
東矢
隊長
東矢
東矢
ジャッカル
東矢
東矢
左肩からは出血が今も続いている
もう、劇は終わってしまったからここが限界だろう
東矢
東矢
それを口にした瞬間、体がスッと軽くなったように感じた
もう終わりか
さようなら、世界
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