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テラーノベルの小説コンテスト 第3回テノコン 2024年7月1日〜9月30日まで

街から離れた小さくそして、少し古い民家の庭から子供の泣き叫ぶ声が聞こえてた。それも耳の鼓膜が破けそうなくらいの大音量で、泣きながら外廊下に座っている親の元へ駆け込んだ。

陸(子供)

うわあああん……父上〜!

江戸

?!陸、どうしたんだ?そんなに泣いて……

江戸

まさか……また海か?

陸(子供)

うん……海が……海がッ……ぅぅ

江戸

はぁ……海!

海(子供)

……父上、あれはほんのちょっとした遊びだったんです!

江戸

言い訳するでない!

江戸

遊びなら、陸はなぜここまで泣いてるんだ?

海(子供)

ッ!…………

陸(子供)

ぅぅ……ぅぅッ……

江戸

はぁ……もう弱い者いじめはするな、海

海(子供)

……ッチ……

父からの説教を受け、不満を持ちながら海はその鬱憤晴らしに、剣術の鍛錬をしに行った……

江戸

……陸

陸(子供)

……はい、父上

江戸

お前もお前だ……強くならなれば、いつまでたっても弱いままだ

江戸

だから、もう弱いと思われぬよう鍛錬をするぞ!

陸(子供)

鍛錬……?

江戸

ああ、早速始めるぞ!

言われるがまま、手を引かれさっきまで泣いていた庭へ連れて行った。 庭に零れた涙は気づけばもう乾いていたり、雑草の上で雫のようにその場にとどまっていたりしていた……

少し広い庭の端に、鹿威しがコトン……コトン……と音を一つずつ一つずつ刻んでいるのをよそに、江戸は民家の隣にある小さな物置から、2本の竹刀を取り出し、その1本を2本に投げ渡した……

江戸

ほら!

陸(子供)

うわっ!……っと

江戸

んじゃ、始めるぞ!

陸(子供)

は、はい!

江戸

まずは……初級からだな……

江戸

さぁ、どこからでもかかって来なさい。

陸(子供)

すぅ……ふぅ……

深く息を吸って、吐くと同時に……体が徐々に熱くなり、それと同時に体が前に突進して江戸に向かって竹刀を振ろうとした

陸(子供)

とりゃああああ!

江戸

……ふん!

だが、経験の差で陸は江戸の一振で体ごと吹き飛ばされ、転がっていた。

陸(子供)

ウッ……いったぁ……

江戸

立て!そのままでは敵にやられるだけだ!

陸(子供)

……ッはい!

それから気がつけば、当たりが橙色に染まり、陸はボロボロになっていた。

陸(子供)

はぁ……はぁ……

陸(子供)

父……上……

江戸

ああ、よくぞ頑張ったな……陸。

江戸

偉いぞぉ!

綺麗な手でボロボロになった陸の頭をそっと撫でて、この鍛錬に逃げなかった陸を褒めた。

陸(子供)

……ありがとうございます(小声)

江戸

んじゃ、これで終わりにするか、飯も作らねばならないし

江戸

それに、腹を空かせてる息子たちがいるからなw

陸(子供)

?!……えへへ///

江戸

わしが飯を作っている間、体を洗ってきなさい。

陸(子供)

はい!

それから毎日のように、江戸との鍛錬を繰り返して陸は次第に強くなっていった……ただ、彼の中にある「弱虫な心」は完全には消えていないままだった。

そんなある日、3人が学び舎から帰って来た頃……家には江戸がいなかった。3人はきっと買い出しにでも行ったのだろうと思っているのも束の間……

空(子供)

陸兄さんすごいね!

空(子供)

成績が一番だって!

陸(子供)

いやぁ……これくらい普通だ///

空(子供)

普通なもんか!それは陸兄さんが努力したからでしょ?凄いよ!

海(子供)

……はぁ、おいクソ兄貴

海(子供)

いくら自分が上位だからって、威張ってんじゃねぇぞ!

陸(子供)

え……なんの事……?

海(子供)

うるせっ!

運動面では誰にも負けていなかった海だったが、学力では陸の方が上だった……だが、陸が自分の苦手な学力で一番を取った時、海の中にある何かが爆ぜそれが暴力となって陸に降りかかった。

陸(子供)

っ!……

海(子供)

はぁ……はぁ……

空(子供)

海兄さん!!何してるの?!

海(子供)

…………

陸(子供)

ぅぅ……ぅぅ……

陸(子供)

グスッ……ッ!!

グッと涙を堪えようとしたが、痛みと弱虫な心が反応して耐えきれず、その場から逃げるように涙を流しながら走っていった……

2人は凍りついたように、その場から動かず何も言わず……ただただこの「無の空気」が過ぎ去るのを待っていた。 陸の跡を追いたかったのに……足は動いてくれないまま、ちょうど江戸が帰ってきた。

江戸

帰ってきたぞ……って、陸は?

海(子供)

…………

空(子供)

……父上……実は……陸兄さん、出て行っちゃったんです……

江戸

……出て行った……?

江戸

……今なって言った?!

空(子供)

だ、だから……陸兄さん……出て行っちゃったんです……すみません!

江戸

……まさか……!!

江戸

……はぁ……海、後で説教するからな。

海(子供)

…………

江戸

陸を探してくる。

空(子供)

父上、僕たちも……

江戸

ダメだ、こんな時間に子供が勝手に歩き回ってちゃ……

江戸

だから、ここにいて待ってくれ。

空(子供)

……わかりました……

江戸

陸〜!

江戸

何処だァ〜!!

江戸

はぁ……はぁ……

咄嗟に出てしまったのもあって、次第に草履の底に穴が空いてしまい、足袋のかかと部分にも小さな穴が現れた。 だが江戸はそんな事も気にとめず、必死に息子を探し続けた。

ふと、空を見上げた瞬間……日がだんだん、橙色となって沈みかけようとしていた……

このままでは……陸の身が危ないと察した江戸は、急いで陸を探した。 枝の先ですねが切られても、走りすぎで草履が壊れ、足袋だけが残っても……

陸は、民家の近くにある小さな山奥にある大きな大樹の麓で背を縮めながら、海に殴られた涙を流していた。

陸(子供)

ぅぅ……ぅぅ……

陸(子供)

……父上……僕は父上みたいに……強くはなれない……

陸(子供)

僕なんか……僕なんか……

江戸

はぁ……はぁ……

江戸

……?!……り…

陸が居なくなった故の怒りと心配で、陸をその場で叱ろうとしたが、「今は違うんじゃないか?」と誰かが自分に告げたのを感じ、江戸はそっと陸の隣りに座った……

江戸

……陸、知っているか?

江戸

この大樹は……約1000年以上も生き続けた桜の木だ。

江戸

今は冬で枯れているが……春になれば立派な桜が咲く綺麗な木だ。

陸(子供)

…………

江戸

いつか、大きくなったら4人揃ってこの大樹の下で花見でもしようかとか考えていたのに……

江戸

よく見つけ出したな、陸

陸(子供)

……僕はそんなつもりでここに来たわけじゃ……ないんです……

陸(子供)

あの場所から……逃げ出したくてここに……

江戸

そうか……

江戸

陸、なぜ小さかった木がここまで大きくなったのか、知っているか?

突然の問いかけに、戸惑ったが少し考えてみた……だけど、走った疲れと泣いた疲れで考えるのも疲れに感じた……

陸(子供)

…………分からないです。

江戸

それはな……

江戸

沢山の苦難を乗り越えて来たからだ。

江戸

風がどんなに強くても、雨に打ちのめされようと……

江戸

耐えに耐え続け、今の大樹になった。

江戸

わしが言いたいのは……陸も海も空もこの大樹のように逞しく生きてて欲しい

江戸

今弱くてもいい、逃げたっていい……ただ諦めてはならん。

江戸

最後まで粘り続け、最後までやり続けろ……そうすればきっと報われる

江戸

そして、この大樹のようになれる。

江戸

わしは、信じておる。

江戸

………ついてくるなとあれほど行ったのに……

海(子供)

だって……空のやつが……

空(子供)

それに、何もしないまま待つなんてできなかったから……それで……すみません。

海(子供)

……父上、いつもいつも困らせてすみませんでした……だから、説教は俺だけしてください!

江戸

…………

江戸

陸を探そうとしてくれた息子に説教ができる程、わしはできた大人では無い。

江戸

……帰ろう

そんな短くどこか切ない言葉に、温もりを感じながら4人はあの民家へと帰って行った……

時代は流れ、幕府の時代が終わりかけたと同時に江戸はどこかへ出かけようとした……

海(子供)

父上……どこに……?

江戸

ちょっと遠出するだけだ。

江戸

大丈夫、心配せずとも必ず帰ってくる。

空(子供)

父上……どうか、ご無事で……

江戸

ああ……分かってる。

陸(子供)

…………

陸の視界は、水で潤んでいるせいで自身の父の顔がはっきりと見えなかった。だが、江戸は陸に心配をかけぬよう、頭を撫でてこういった。

江戸

陸、わしは必ず帰ってくる……だから泣かなくても大丈夫だ。

陸(子供)

……はい!(泣きながら)

江戸

それじゃ、行ってくる!

空(子供)

行ってらっしゃい!

海(子供)

気をつけて!

陸(子供)

……必ず、帰って来てください(小声)

兄さん……兄さん……?

………うっ……

気がつけば、書斎で寝ていて目の前には空と海、それにパラオがいて陸を起こしに来た。

何やってんだよこんなところで寝て……

……お前ら、なぜここに?

ナチス先輩が陸兄さんとイタリア先輩と一緒に会議を開くから伝えてくれってさ。

んで……パラオはなぜ?

🇵🇼

気になって着いてきた!

はぁ……そうか。わかった、ありがとう。

ったく、こんな所寝たら風邪引くぞ?

はいはい……んじゃ、行くか

あの夢は……一体何だったんだろう……

季節は夏だというのに、その日の夕方は不思議と涼しいそよ風が窓の隙間から入ってきた……

江戸はあの日以来……帰って来ていない。それでも3人は、必ず帰ってくると信じ続け、今でもその帰りを待ちながら、戦っている……

この作品はいかがでしたか?

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コメント

3

ユーザー

めちゃいいお父さんを持ったな!

ユーザー

最後の言葉がなんやかんやで懐かしいですね⇠なんやかんやは過去の事です気にせずに☆⇠星付ける意味ある?

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