夜空を見上げるのが、昔から好きだった。 何も語らない星たちが、なぜか自分のように思えたから。
いふ
……今日の空は、少し優しいな
いふは、ひとり静かに息を吐いた。 その背後から、小さな声がこぼれる。
ステルラ
優しさに気づけるのは、君が傷ついてきたからだよ
いふ
……また来たんだね、ステルラ
静かに佇む少年。 彼の髪は夜のように青黒く、 目は星のように淡く輝いていた。
ステルラ
君が笑うたびに、僕は少しだけ消えていく気がした。でも君が泣くとき、僕はここにいられる気がした
いふ
……そんな風に思ってたんだ
ステルラ
光を夢見ることが、悪いことだと思ってた。僕は影だから、希望なんて持っちゃいけないって
いふ
でも――それでも、星に憧れたんだよね
ステルラ
うん。たとえ手が届かなくても、見上げていたかった。それだけで、少しだけ生きていられたから
その言葉は、いふの胸に静かに響いた。 誰にも話さなかった夢。 誰にも言えなかった孤独。
いふ
君の見た星、僕にも見せてくれる?
ステルラ
もちろん。だって、それを見てほしくて――僕は、君の中に生まれたんだ
ふたりで見上げた空には、星がひとつ―― 確かに瞬いていた。
【第五話 了】