今日もまた、いつものように花畑で目を覚ます。
少し遠くの丘のように目を向けると、
アホ毛の目立つ紫頭、いるまが居た。
らん
俺がいるまに向かって大きく手を振ると
彼は可愛らしい微笑みを見せる。
だが、いつものように俺の方に向かっては来ず
右腕を気にするように、長袖の上からさすっていた。
らん
もう出会ってから2ヶ月が経ったが、
こんな反応をされたことは滅多にない
俺は不思議に思い、彼の元へと駆け寄った
らん
俺が声をかけると、彼は少し身を引いて
腕を背中の後ろに隠した。
いるま
その少し慌てたような姿に違和感を覚え
俺は、背中に隠れた腕を前に引き寄せた。
らん
らん
少し強引だったかもしれないが、
いるまの服の袖を捲りあげて、腕の状態を確認した。
すると……、
いるま
らん
らん
いるまの細く弱々しい腕には
たくさんの切り傷があった。
おそらくカッターだろう。
これはいるま自身がやったのか。それとも、誰かにやられたのか……
どちらにしろ、追い詰めた奴は許さない。
いるま
いるま
いや、んなわけないだろ。
結構深くまで傷あんぞ?
らん
らん
俺はいるまの顔に自分の顔を近づけ
避けられない距離までいるまを追い詰める。
いるまは、なにかばつが悪そうな顔をしながら
そっと腕を隠した。
いるま
らん
いるまは俺から逃げられなくなったため
渋々口を割ってくれた。
だが、その口からは
聞きたくない最悪の答えが返ってきてしまった。
いるま
いるま
いるまは、俺と目を合わせずそう答えた。
俺たちを包む花畑には
鮮やかな黄色のユリが咲いていた。
らん
あそこで俺の意識は途絶え、
気がつくと見慣れた病室にいた。
今日の夜になるまで、いるまとは会えない。
なぜあんな傷が出来たのかも問いただしたかったが、
こうなってしまったら我慢するしかない。
俺が少し目を伏せると、
バンッ!!と、勢いよくドアの開く音がした。
彼女?
彼女?
ドアの方に目をやると、
そこには俺の彼女がいた。
嬉しそうに歌を口ずさみながら
俺の部屋に入ってきたそいつは、俺の横の椅子に腰掛けた。
彼女?
彼女?
らん
話を聞いてみると、どうやら俺の外出許可が出たらしい。
俺は長い間病室にいて、現実世界では外の空気を当分吸っていなかった。
外へ出かけられるというのは、中々に嬉しい報告だ。
らん
ちょうど最近、いるまにオススメしてもらったカフェがある。
そこのパンケーキがとても美味しいのだと。
気になっていたからちょうど良い。
彼女?
彼女?
心配そうにこちらを向いて謝ってくる女性。
俺はなるべく目を合わせないようにしながら
女性の問に答える。
らん
らん
彼女?
彼女?
彼女は、俺の問に対して
バツが悪そうに顔を逸らしながら答える。
その姿は少し怪しかったが、
俺は気にしないように声を出した。
らん
らん
なるべく優しい彼氏を演じられるように笑顔で答える。
俺的にはこいつがいない方が好都合。
息が詰まるような思いをしなくても良いのだ。
彼女?
安心したように微笑む彼女の横の花瓶には
ツルバキアが綺麗に生けてあった。
コメント
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黄色のユリとツルバキアの花言葉、調べてみてね☆