ここで待ってる

慣れてきて気が抜けていたのだろう

不意に転んで擦りむいた

アスファルトだから結構痛かった

痛みに伴って

部活で怪我した時のことを思い出す

何回思い出しても仕方ないと

掻き消すように足を踏み込んだ

これくらい、全然余裕だ

強がって放置したせいで

傷がズボンの生地に引っ掛かって痛いことに

放課後になってから耐えられなくなった

ちょっと奪うように取ってしまった

ちょっと残念そうにするのやめろ

だが貼る瞬間に

結局傷は見せる羽目になる

声がちょっと大きくなった

（スマホを持つ）

気まずい

ので話題を変えることにする

嘘だけど

適当で草

それもおかしいだろ

あり得たかもしれない“もしも”を言われて

一瞬ぎくりとする

と言いつつ

暇なので乗ってみることに

ガラガラガラッ

てっきり『そうでしょ』とでも

自画自賛すると思ったのに

普通に戸惑いを見せたから

こっちもミスったと後悔する

でもこれ以上いじりようがなかったし

まず何やってんだって話ではあるけど

やっぱり褒め慣れられてないのか？

それより冷やかしの方を多く浴びてきたんだとしたら

それはやっぱ可哀想だし

本当はこれも、冷やかしとかじゃなくて──

丁度良いのか悪いのか分かんないところに

サボってた顧問がなんか来た

言うなぁ

普通に良い先生そうだな

こっちは軽いな

してなかったんかい

白々しい

（ドアを閉める）

よくある個人確認だった

こういう頼みごとみたいにされんの

あんま好きじゃないんだけどな

死んでもそんな人間になりたいとは思わない

去っていく背中を眺めながら

あの人を心配する存在がいたことに

ちょっと安堵したし

ちょっと嬉しくも思った

やけに心配がるので

真面目に返しておいた

……あー、そういう不安もあるのか

何なんだ

この人自身の不安定さ的には

あんまよくないんだろうけど

そのままで、君は笑い

俺は走り

そうして、あっという間に

その時はやってくる

つづく