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春の風が、体育館の窓を鳴らす。
季節は確かに進んでいるのに、
私の胸の中は、
どこか置き去りにされたままだった。
岩泉 一
天音 夜空
他愛のない会話の中で
部員たちは少しずつ私に馴染み始めていた。
けれど、それでもどこか
"壁"
は残っている。
自分の心の中からここにいていいのか。
そんな問いがいつも私の心の隅にあった。
その日及川は少しピリついていた。
次の試合に向けて調子を上げていたものの、
焦燥感が滲んでいた。
及川 徹
及川 徹
いつもより強い声。
その空気に、部員が一瞬怯んだ。
及川 徹
すぐに謝る及川だったが、私にはわかっていた。
その"熱"の奥には、
必死に隠しているものがあることを。
天音 夜空
私の口から零れた独り言。
それに応えるように、及川がポツリと零した。
及川 徹
及川 徹
天音 夜空
及川 徹
及川 徹
私の中で何かがざらりと音を立てる。
その瞬間、心の奥に閉じ込めていた記憶がざわめき始めた。
_仲間だった。
_信じていた。
_でも、壊れた。
天音 夜空
私は俯いたまま、絞るように言った。
それでも及川は責めなかった。
ただ静かに頷いて、少しだけ笑って見せた。
及川 徹
その言葉が私の胸を温める。
焦って追いかけるような熱じゃない。
冷えた心に、ゆっくりと沈み込むような熱だった。
その日の帰り道。
私は初めて作り笑いじゃない
"少しだけ泣きそうな顔"で
空を見上げた。
(言いたいよ。でも、まだ怖いの)
(全部話したら、きっと私は_。)
心の奥で疼く痛みが、静かにまた
私を縛っていた。