わたしたちは式を挙げた
幸せに満ち溢れていた
これから先ずっーと、一緒にいられるんだと思っていたのに…………
ガッシャーン
いったい自分の身に何が起こったのか、わからなかった……
なにか衝撃を受けて、それで…………
ふいに彼の笑顔が浮かんだ
もう一度、あの人に会いたい
お願い、彼に会わせて────
ザー
女
…………
傘も差さず、雨に打たれながら女はその場に立ち尽くしていた
ねぇ? そこでなにしてるの?
傘も差さないでさ
大鎌を肩にかけ傘を差した黒スーツの男が目の前に現れた
女
……わたしが見えるの?
一応死神だからね
女
…………死神
死神
確認するけど、自分が死んでるって自覚はある?
女
…………
彼女は口を閉ざすが、死神は気にすることなく喋りだす
死神
沈黙は肯定として受け止めるから
女
…………
死神
それにしてもみすぼらしい格好だよね
死神
せっかくのウェディングドレスも汚れてるしさ
女
…………
死神
しかも地縛霊で悪霊になりかけてる
死神
さっさと隠り世へ逝った方がいいんじゃないの?
女
隠り世……?
死神
人間が言う“あの世“
死神は女の腕を掴む
女
…………!
死神
人間なんて知ったこっちゃねぇけど
死神
死神として仕事をしなきゃいけねぇから
女
女
ちょっと待って……!
死神
なに?
女
最後に一目でいいから、あの人──彼に会いたいの!
死神
彼? アンタの花婿?
彼女はうなずいた
女
……お別れが言えないままだったから
死神
ふーん
興味なさげに相づちをうつ
死神
さっきも言ったけどさ
死神
アンタ、地縛霊で悪霊になりかけてんだよ?
死神
──だから
死神
このまま隠り世へ連れて逝く
顔が絶望感に染まる
女
……そ、そんな……
死神
(イヒヒ、やっぱたまんねー)
女
お、お願い、少しだけでいいの……
女
あの人に……!
死神
俺に見つかった時点で、アンタはすでに運がなかったんだ
大鎌の刃が鈍く光った
死神
諦めなよ
ザー
雨足が強くなった









