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チアフル

チアフルだよ!

チアフル

よろしくねぇ

屈託のない笑顔で、やけにのんびりした声で、挨拶をする。

イヴィ

えっと

イヴィ

機械、なんだよな?

デフ二ダ

娘だ

チアフル

お母さんだよ!

イヴィ

……あぁ

イヴィ

(触れたらいけねぇヤツだ、これ)

クランツ

…ツールの件だが

クランツ

お前が持っているのは確かか?

チアフル

勿論!

チアフル

ほら

そう言うと、身につけているポーチから小さいカードを取りだした。

知識のない者には、ただの板きれに見えるだろう。

デフ二ダ

パッと見、その辺の塵だ

デフ二ダ

上手くカムフラージュできたんだろう

デフ二ダ

コイツが盗られることはなかった

クランツ

なるほど

クランツ

劣化させることは簡単なようで難しい

クランツ

技量が伺えるよ

イヴィ

それで、これはどこに挿せばいいんだ?

デフ二ダ

…それがな

イヴィ

───はぁ!!!!?

イヴィ

分からない!?

歯切れの悪い返事だったので、嫌な予感はしていた。

俺はまだあまり、社会に出たことがない。

だが、クランツの様なくたびれたオッサン共は、口を揃えてこう言う。

「分からない」が一番困る…と。

デフ二ダ

だ、だがな

デフ二ダ

私が「分からない」んだ

デフ二ダ

お前達なら分かるやもしれん

イヴィ

位置情報は?

デフ二ダ

先程、ハッキングした

デフ二ダ

が、私には見覚えのない部屋だった

デフ二ダ

から、見てくれ

イヴィ

……?

イヴィ

イヴィ

おい、クランツ…さん

イヴィ

これって

クランツ

……なるほど

イヴィ

言っていいのか?極秘じゃね?

クランツ

いや、言った方がいいな

イヴィ

…「地下シェルター」

デフ二ダ

地下、シェルター……?

イヴィ

王サマが隠れてやがるとこだ

デフ二ダ

な……っ

デフ二ダ

何故、そのような場所に…?

イヴィ

分からねぇよ

イヴィ

大体、その機材を持っていたのはお前だろ?

イヴィ

取り上げられ、そこに設置されたとしか言えない

イヴィ

…考えてみろ

イヴィ

「取り上げられる」立場の奴が

イヴィ

「シェルター内に侵入できる」んだ

イヴィ

いるだろ、「裏切り者」

クランツ

言いたいことは分かるが……

チアフル

任せてぇ

チアフル

ワタシ、結構戦える!

デフ二ダ

…細心の注意を払って行こう

イヴィ

……

地下シェルター

寒々しい石壁が、悲惨な現状を物語る。

貴族階級の一つである一般騎士らが、その場に不釣り合いなワインを片手に息を潜めていた。

この城の内部には、幾つものシェルターが設置されている。

何れも外へ繋がる通路があるようだ。

……シュバルツという国王は傲慢である。

本人も、いつかはこの惨状が起こると分かっていたのか、

自身が隠れるシェルターの情報は、ごく一部しか知らない。

それほど、人を信用していないということだ。

チアフル

あれぇ

チアフル

ここには王様いらっしゃらないの?

クランツ

ここよりも奥にいる

クランツ

門番が見えるだろう?

イヴィ

…あぁ

イヴィ

すっげぇ、睨まれてる

デフ二ダ

本当に通れるのか?

イヴィ

後、さっきから何見てるんすか?

彼は、メモ帳のような小さな紙切れに目を通していた。

最小限の灯りしかないため、覗き見ることは困難だろう。

クランツ

…いいか、目は見るなよ

イヴィ

え?

そのまま、クランツは門番の前へ歩いていく。

その体格の差は見るからに大きい

イヴィ

(…無策な訳はねぇだろうが)

門番

貴様は…

門番

クランツ・ヴィースターだな

門番

何か用でも?

クランツ

俺は、その門の奥に用がある

クランツ

シュバルツ様はこの中か

門番

正当な理由もなしに入れると思うか?

門番

却下するに決まっている

門番

クランツ

そうか

クランツ

悪かった

イヴィ

(何やってんだよ!!)

クランツはくるりとこちらを向いた。

あまりにも、呆気なく、

デフ二ダ

っおい…!

ガチャ

その後頭部に、

イヴィ

!!!

チアフル

おー?

いや、「俺たち」の後頭部に

冷たい銃口を、突きつけられながら。

イヴィ

おい…まじで

イヴィ

何してんだ!

騎士

黙れ

ダンッ

イヴィ

っ…!!

イヴィ

(周りも、グルか…)

イヴィ

(そりゃそうだ、アイツが味方以外を傍に置くわけねぇ!)

門番

シュバルツ様の情報は、一部の者しか知らない

門番

野蛮な貴様らにそう易々と漏らすこともない

門番

このまま命日を祝ってやってもいいが

門番

正直に教えたら、その命だけは奪わないでやる

イヴィ

どーせ、答えても拷問するだろうが…!

クランツ

……

門番

ほう、噤むか

門番

だが、我々は情報が欲しい

門番

無理やりにでも喋らせてやる!!!

門番はクランツの胸ぐらを掴み、目を合わせた。

すると────

門番

あ──────?

突如、門番の目から生気が失せる。

クランツ

…「離せ」

力無く、胸ぐらなら手を離してしまった。

騎士

おい、どうした───

イヴィ

行け!!!

ドッッ

騎士

ゔぁっ

イヴィとチアフルは武器を弾き、それぞれについていた騎士を気絶させる。

チアフル

平気ぃ?

デフ二ダ

あ、あぁ

デフ二ダ

助かったよ

イヴィ

縛って、通信機は壊せ

チアフル

はぁい

クランツ

…鍵はあるか

先程までの威勢が嘘のように、簡単に鍵を手放した。

その鍵がしっかりと機能することを確認してから、

クランツ

交代の時間だってさ

クランツ

ご苦労さま

クランツ

あぁ、ちゃんと「忘れとけ」よ

門番を場外へ移動させた。

クランツ

行くぞ

イヴィ

(…ちゃんと気絶してるな)

イヴィ

本当に、魔術のこと知られてないんだな

デフ二ダ

確か、私が居た檻でも使っていたな

デフ二ダ

炎に、今回は「洗脳」か

デフ二ダ

器用だな

クランツ

……相手頼りの雑な魔術だからな

クランツ

賭けに勝っただけだ

デフ二ダ

賭け…?

「洗脳」

その名の通り、対象を一時的に操る魔術。

発動条件は様々。 今回は目を合わせることだった。

戦う者は、よく目を見る。

相手の動きを見定めるためだ。

この門番は、それを利用した。

戦える者ほど、術にハマりやすくなるというわけだ。

だが、それを反射してしまえばこちらのもの。

つまり、「初見殺し」を制したクランツが勝利したのだ。

イヴィ

(脳筋なヤツ)

しばらく暗い通路を歩いていると、

その視界が急に開けた。

兵士

侵入者だ!捕らえろ!!

刺客に気づいた護衛の兵士が、鋭い矛先を彼らへ向ける。

───良い、下げろ

だが、一撃は一声によって静止された。

貴様らごとき、敵うはずがない

イヴィ

お前っ…!!

イヴィ

指示すらださねぇくせに……!!

イヴィ

死線を越えた方が名は遺るんじゃねぇの?

シュバルツ

わざわざ命を投げ捨てる馬鹿がどこにいる?

イヴィ

その状況を招いたのはお前だろ!

シュバルツ

……まさかそんな事を言うために為にここに来たのか?

クランツ

落ち着け

クランツ

まずは姿勢を整えろ

イヴィ

チッ……

クランツ

いい子だ

ここでようやく、全員がシュバルツへ跪いたようだ。

シュバルツ

極秘情報が漏れているな

シュバルツ

誰の仕業だ?

デフ二ダ

…………

シュバルツ

まぁいい

シュバルツ

先に要件を話せ

シュバルツ

処罰はそれからだ

クランツ

ありがとうございます

クランツ

シュバルツ様は、城内に放たれた機械兵についてご存知でしょうか

シュバルツ

報告で聞いている

シュバルツ

それがなんだ

隙あらば、高圧的な態度で見下ろしている。

話を聞いてもらえるだけで、ありがたい話なのだろう。

クランツ

機械兵を制御する端末が、こちらのシェルターにあるとの情報を得ました

クランツ

そちらを使わせていただきたいのです

シュバルツ

……貴様、何を言っている?

クランツ

……何を、とは?

シュバルツ

シェルターの周りに、機械兵はいたか?

デフ二ダ

……まさか

シュバルツ

千載一遇のチャンスだったのだ

シュバルツ

王の元、その才能をふるえる者共はそういない

シュバルツ

応じない貴様が悪い

デフ二ダ

ハッキングしたのは……貴様なのか?

シュバルツ

使える物は使う

シュバルツ

そこの「鉛」のようにな

彼が指をさした先にいるのは、

兵士

───え?

イヴィ

!!!?

血溜まりの中で、何事も無かったかのように立っている

デフ二ダ

え……な、んで……

シュバルツ

始末しろ

シュバルツ

────「KT001」

チアフル

「対象を確認」

チアフル

「命令を実行します」

チアフルの姿だった。

ドロシー

はあっ……はぁ……!

炎が建物を燃やし尽くした跡地で、

2つの影が目まぐるしく動いていた。

彼らは、鋭利な何かに何度も切断されている。

最初は「1度死を経験した」顔をしていたが、

今はそんなことよりも、疲労が顔に強く出ていた。

ドロシー

ちょこ……まかと……っ

ディアベル

随分と厄介だねィ

カリゴ

あのさあ

ディアベル

あ?

カリゴ

何でそんなに元気なの?

カリゴ

斬られたら焦るんじゃないの?

カリゴは思い通りにいかないのが不満なのか、

じっと彼らを睨みつけている。

ドロシー

そんなの慣れるに決まってるでしょ!!

ドロシー

アタシ分かったわ

ディアベル

なにがよ

ドロシー

コイツ……

ドロシー

快楽殺人者に憧れた、ただの一般人よ

カリゴ

……

カリゴ

カリゴ

はあ?

ディアベル

イカれた言動

ディアベル

イカれた行為

ディアベル

そういうのは、全部性格からくるもんだ

ディアベル

俺ァ幹部に会うのは3人目だが

ディアベル

どーにも皆、感情がパッとしねェ

カリゴ

そりゃ、そうでしょ

カリゴ

魔術結社のヤツらは

カリゴ

殆どが迫害されてきた輩なの!!

カリゴ

生まれ持った才能

カリゴ

中途で得た才能

カリゴ

微かに膨らんだ蕾を

カリゴ

容赦なく踏み潰されてきたんだよ!!

カリゴ

パッとしないのは当然だろ?

カリゴ

誰が復讐を楽しくやれってんの?

カリゴ

馬鹿なの?お前

ディアベル

あァ、別に貶したわけじゃねェよ

ディアベル

ただその様子だと

ディアベル

足りないじゃねェの?

ディアベル

────「天啓」

カリゴ

!!!!

カリゴ

もう黙れよ、クソが!!!

パチンッ

ディアベルには、2つの音が聞こえた

1つは、指鳴らしの軽やかな音。

ドロシー

ガハッ……

ドロシー

あ゙…れ……?

彼の怒号とは真反対の、静かな音。

そして、2つ目は───

ディアベル

────ッ!!!?

散った鮮血が、 地面に落ちる音。

苦痛で漏れる声は、喉まで上がった血に汚される。

今まで蓄積してきた「傷」が皮膚を破り、

生命を、脅かしていた。

カリゴ

あはははっ

カリゴ

ほんと、馬鹿だよね!

カリゴ

あのガキ共から学んでないの?

カリゴ

僕の攻撃は「溜める」こともできるんだよ

カリゴ

お前らがガムシャラに突っ込んでる間に

カリゴ

僕の勝利は決まってた

心底、この状況が愉快で堪らないようだ。

隙だらけだが、彼らの出血量ではその行動を目で追うだけで精一杯だ。

カリゴ

挑発すれば、ボロが出ると思った?

カリゴ

お前らの言う「悪役」に「裏」はあった?

カリゴ

そこのお前は、僕を一般人だと言ったね

ドロシー

それ……が……何…だよっ

地面に膝をつき、肩で息をするドロシーを見下す。

カリゴ

そうさ、僕はただの吸血鬼

カリゴ

迫害も受けてない

カリゴ

辛ぁい過去なんて何もない

ドロシー

ならどうしてっ……

ドロシー

ゴホッ

ドロシー

こんな、ことを……

カリゴ

んー、そうだなあ

カリゴ

「退屈しない」から?

あっけらかんと、裏のない笑顔でそう答える。

ドロシー

チッ……

壊れた人形とは、まさにこのことだろう。

この男には、

倫理や道徳など、存在しない───!!

ディアベル

……

カリゴ

じゃーね!

カリゴ

僕はオーダー様の所に戻るよ!

ドロシー

待て!

カリゴ

待たなーい

カリゴ

お前らほっといても死にそーだし

カリゴ

あは

カリゴ

はははは!!!

ドロシー

だから……!!

ディアベル

俺が追う

ディアベル

…お前さんは待ってろォ

ドロシー

何言ってんの!?

ドロシー

その傷じゃまともに動けないでしょ!!?

ドロシー

アタシまだ、何もできてない!!

ドロシー

ディルだって

ドロシー

アイツだって城で戦ってるのに!!!

ディアベル

……

ディアベル

役に立つことはなァ

ディアベル

勝つってこととちげェのよ

ドロシー

な……っ

ディアベル

てか瀬戸際で後悔すんなァ

ディアベル

後でも考えられんだろ

ディアベル

この間にも、アイツは市街地に向かってる

ディアベル

俺たちにできることはァ?

ドロシー

……

ドロシー

ドロシー

この国の住民を、守ること……

ディアベル

あァ

ディアベル

完璧だ

ドロシー

でも、少しは好きにやらせて

ドロシー

優先順位的には、お前の治療よ

ディアベル

……

ディアベル

あァ、それもそうだ

ディアベル

何とかしてアイツ引き付けてこれるかァ?

ドロシー

……任せなさいよ

ディアベル

その調子で頼むわァ

ディアベル

……あァそうだ

ディアベル

戦ってるうちに、結構移動した

ディアベル

アイツの弱点、分かったぜ

ドロシー

え?

──僕は普通だ。

至って普通だ。

別に、魔術で虐げられたこともないし、

周りの大人も、するべきことはした。

特段不幸でもないけれど、

幸福でもなかった。

普通の学力。

普通の運動能力。

普通の社会規範、マナー。

言わば常識人だと思う。

魔術結社には、非常識な生物が沢山いる。

「非」

そう、「非」だ。

普段触れることのない、寄り道的なもの。

その感触が、 心地よかったのかもしれない。

ディアベル

足りないんじゃねェの?

ディアベル

────「天啓」

カリゴ

天啓…

カリゴ

神の、導き……

カリゴ

神の───

───誰か?

そうだな、神とでも言おうか

カリゴ

…頭、おかしいんじゃない

はは、そうかもしれないな

お前は、■■■■家の末裔で合っているかい?

カリゴ

だから何?

カリゴ

……は?

カリゴ

何で泣いてんの?

…すまない

吸血鬼というだけで、虐げられてきたんだろ?

カリゴ

なっ……

石を投げられ

長寿を利用し燃やされ

時には四肢をもがれる

人間は残忍だ

カリゴ

…………

幸い、お前はよく冴える

だから、普通に生きようとした

その偽装にも飽きた頃合だろ?

カリゴ

カリゴ

だから、何なの

カリゴ

今すぐ全部楽しくなるって?

そうさ

カリゴ

は……っ?

今に愉しくなるさ

ズキッ……

カリゴ

っ!!!!

カリゴ

……

カリゴ

…痛ったぁ……

カリゴ

…何だっけ

カリゴ

あ!!

彼はパッと顔を輝かせ、振り返る。

ドロシー

はぁっ……はぁ……

ドロシー

逃げ、んな……!!

あぁ、僕は

遊んでいたんだった。

やっぱり、「普通だ」と思った。

ドロシー

(快楽殺人者…)

ドロシー

(何で、そんなタチの悪いヤツに憧れんだろ)

カリゴ

ね、ひとりで追いかけてきたの?

ドロシー

そうよ

ドロシー

何か悪い?

カリゴ

だってさ

ドロシーの周囲に、血鎌が浮遊する。

燃え盛る炎の熱を遮断するように、

カリゴの姿も、霧に紛れた。

カリゴ

どーせ、死んじゃうよ?君

ドロシー

(食らってもいい…けど)

ドロシー

(ダメージの蓄積には注意……)

カリゴ

──『ブレゼド・へーヴェ』

ドロシー

!!

ドロシーの周囲にある血鎌が輪を作り、回転する。

草どころか幹すらも輪切りしてしまいそうな威力だ。

ドロシー

あっ……ぶな

ドロシー

(てか、個々でも回転してる!)

ドロシー

(当たったら即死……じゃないの?)

カリゴ

流石に避けちゃった?

カリゴ

じゃ、これはどう?

カリゴ

『ブレゼド・ジュレーベン』

ドロシー

(戻って……!!)

ドロシー

くっ!!

空気すら抉るような逆回転。

大剣を持ったまま、間一髪で回避する。

ドロシー

はぁー……っ

ドロシー

(避けるだけで精一杯……)

ドロシー

(でも)

ドロシー

連続では、無理なんじゃ……ない!!?

彼女の身体よりも刀身が長い大剣。

それを我が身のように操り、瞬く間に借り毎の距離を詰める。

カリゴ

わっ!!

カリゴもまた、瞬時に防御の魔術を展開する。

カリゴ

へぇ、さっすが二番隊

ドロシー

基本魔術も使えんのね……

ドロシー

ていうか何で知ってんの!?

カリゴ

オーダー様にできないことなんて…

カリゴ

ないんだよっ!!!

ドロシー

!!!

カリゴの姿が霧となり消え、

周りから血鎌が襲いかかる。

ドロシー

(霧……厄介だな…)

アイツは自身の血を浮遊させ、 鎌にしている。

水分とかで薄まったら、少しは威力落ちるのか…??

じゃあ霧の中で、 血鎌が存在できるのって……。

ドロシー

ザシュッ

カリゴ

何ボケーッとしてんの

ドロシー

っが……

ドロシー

(溜め、じゃない…!!!)

ドロシー

(いきなり、殺しに来た……!)

ドロシー

ゲホッゲホッ

カリゴ

ばっかだなぁ

カリゴ

後ろがら空きだったよ

ドロシー

ヒュー……ヒュー…

あぁ、この呼吸はだめだ。

肺に、ちゃんと酸素が入っていない。

ドロシー

……

さっき、伝書鳩から連絡があった。

ディルは、幹部を一人倒したらしい。

「私」は知っている。

アイツは、強い。

どれだけ弱音を吐いても、

決意だけは、揺らぐことはなかった。

私は、どうだろう。

大口叩いても、

このザマだ。

気持ちと、少し力が強いだけの、凡人。

ディル

────まてよ!!!

ドロシー

!?

ディル

あやまって…っ

ディル

あやまれよ!!

ディル

どれだけ、ひどいことしたか

ディル

わかんないの!?

私が、小等部で虐めを受けた時。

相手は、お前よりも強そうなのに、

私よりも、傷ついた顔をして。

必死に、馬鹿みたいに、 情けなく叫んでくれた。

お前は強いよ。

人の為に、そこまで動けるんだよ。

ドロシー

…わたしなんかより、つよいなぁ

ディル

えっ、えぇ

ディル

な、なにいってるの…

ディル

ぼくは…ドロシーがまもってくれたから

ディル

ドロシーみたいになりたいって、おもったんだよ…!

ディル

だっていってたじゃん!

ディル

「ヒーローになりたい」って!!

ドロシー

─────!!!!

そういえば、口癖だったな。

結局、それが理由で二番隊に入った。

「ヒーロー」か。

ああ、

眩しいな……。

ドロシー

…みっともねぇな

カリゴ

は?

ドロシー

みっともねぇけど

カリゴ

え?

カリゴ

えー!

カリゴ

まだ行けちゃう??

ドロシー

最高に、かっけぇんだよなぁ……

カリゴ

凄い!ヒーローみたい!!

ドロシー

みたいじゃねぇ

ドロシー

ヒーローなんだよ!!!

カリゴ

あははは!!

カリゴ

じゃ、遊ぼう!!

分かったことがある。

霧自体が、コイツの血でできてるんだ。

多分、ディアベルの狼化が起こらないくらいの、ほんの少しの量。

そこから血鎌を生み出し、攻撃してる。

霧は……言わば水だ。

血鎌の威力が落ちなかったのも、 そのお陰。

ならば、どこに連れていくか?

ディアベル

アイツの弱点、分かったぜ

ドロシー

え?

ディアベル

そりゃァ……

水だ!!

ドロシー

(……が、分かったとこでどうする?!)

ドロシーは斬撃を避けながら、必死に頭を動かした。

ドロシー

(アイツは普通に、頭がいいから)

ドロシー

(誘導したってバレる)

ドロシー

なら……

ドロシー

「そうさせるしかない」状況を、作ればいい……!

ドロシー

(まずは、ディアベルと合流しないと…)

カリゴ

さっきから何ブツブツ言ってんのー?

カリゴ

辞世の歌?

ドロシー

お前こそ、さっきは上の空みたいだったけど?

カリゴ

そうだっけ?

カリゴ

覚えてないなあ

ドロシー

魔術結社はさ、オーダーってヤツが頭首なんだろ?

カリゴ

まぁ、何度も口に出してるから流石に分かるか

カリゴ

そーだよ!

カリゴ

オーダー様こそ世界を統べるに相応しい!

ドロシー

固有の魔術とやらも、格上なの?

カリゴ

そりゃ勿論!

カリゴ

お前らも…

カリゴ

あぁ、あのガキ共は特に知ってるはずさ

カリゴ

「概念」にも作用する魔術の恐ろしさを

ドロシー

概念にも……?

ドロシー

(レーツェルという幹部の魔術と性質が似ている?)

誘導しながら、器用に返事を返す。

ドロシー

(てか、何でこんなペラペラ喋るの?)

ドロシー

(戦場において、情報の価値は馬より重い…)

ドロシー

(メリットがあるとは到底思えない)

カリゴ

…やっぱ顔で分かっちゃうんだよね

カリゴ

僕、そんなに馬鹿じゃないよ!

カリゴ

あの方の魔術を知ったとしても

カリゴ

敵う者はいない

カリゴ

足掻くだけ無駄!

カリゴ

ほーんと、可哀想な人達だね!

確かオーダーの所には、

団長と、リエルがいたはずだ。

ドロシー

(あと少し……あと少し…)

ドロシー

……

カリゴ

っていうか、

カリゴ

何で、そんなに周り見てんの?

ドロシー

!!!

カリゴ

どこもかしこも同じ景色だけど

ドロシー

────本 当 に ?

カリゴ

はっ?

────よォくやった

パッと、鮮血が散る。

血溜まりは2つ。

1つは、カリゴ。

もう1つには、誰もいない。

血の持ち主は、今まさに、

カリゴの胴を泣き別れにしていた。

カリゴ

くっ……そが…!!

ドロシー

ディアベル!!!!

ディアベル

後は、耐えろ

ドロシー

分かってる!

カリゴ

お前らが……っ

カリゴ

何言ってるんのか、分かんないけど……

見る見るうちに、カリゴの胴が繋がっていく。

ドロシー

なっ!?

ディアベル

いや、問題ねェ

ディアベル

吸血鬼にとっては致命傷だろィ?

カリゴ

……あぁ、くそ…

カリゴ

…僕はね、すっごく、イライラしてるんだ

気の昂りか、声が震え上擦っている。

カリゴ

ズタズタのグチャグチャにしても

カリゴ

お前らはしぶとく這い上がってくる!!

カリゴ

挙句の果て、「楽しそうな」顔までする!!

カリゴ

意味分かんない!

カリゴ

分かんないよ!!

泣いているのか、怒っているのか、兎に角感情が入混ざった顔で、

自身が散らした血から巨大な鎌を生み出した。

「ブレゼド・トート」

ディアベル

まだ使うかよォ

ドロシー

ディアベル、来る!!

ディアベル

あいよ

特段緊張していない返事を合図に、

彼らを激しい攻撃が襲う。

ドロシー

っ!!

ドロシー

遠距離でも!!!?

ダンッ

ドロシー

はっ……!!

ガキィ゛ン

ディアベル

振り回してんのか、回されてんのかどっちだよ

刃に負けないくらいの太い柄で、ディアベルは攻撃を受け止める。

カリゴ

知るわけないでしょ??!

カリゴ

お前こそ、そのでっかい斧は扱えきれんの!?

ディアベル

扱えてるから、お前さんが苦戦してるんだろォが

目にも止まらぬ速さで、彼らの斬撃がぶつかる。

ディアベルは、リエルのように身軽ではない。

性格も、体格も、他の兵士・騎士から見たら珍しいものだろう。

だが、連続的に繰り出される暴力的な攻撃の中には、

一種「丁寧」ととれるものを感じるのだ。

そこには、確かに器用さが作用しているのだろう。

ディアベル

あんま余所見してっと

ディアベル

足元すくわれるぜェ

カリゴ

はっ?

ザシュッ

カリゴ

っ゛!!!

ドロシー

いくら治癒したって

ドロシー

完治はしてねぇよなあ!!

カリゴ

チッ

カリゴ

何で毎回しつこいのが相手なんだ……

カリゴは膝をざっくりと斬られ、力も入らずに、その場にへたりこんだ。

ディアベル

さァ、もう逃げられねェぜ

再生しても、また同じことの繰り返しだろう。

ドロシー

……

カリゴ

カリゴ

はは……

ディアベル

カリゴ

やっぱ僕、運がいいや

ドロシー

何言ってんの?

カリゴ

馬鹿って、可哀想だよね

カリゴ

まぁ、こんだけ戦ってたら

カリゴ

「忘れる」のも無理ないか!

ディアベル

……あ

ディアベル

やっべ────

カリゴ

……

カリゴ

「エ ン ダ ー 」

「冷たい」

そう最初に感じた。

全身に、力が入らなくなった。

出そうとしていた言葉は、水圧に押し戻される。

ここは、「湖」の中だ、と次に気づく。

揺れる視界の先には、勝ち誇った顔をしたカリゴがいた。

……

「想定内」だ。

カリゴ

───は?

だが緩んだ顔に、青筋が走る。

かと思えば、カリゴは何発もの血鎌を湖へ投げ出していた。

当然、水の中では血は溶けてしまう。

「彼」はそれを、待っていた。

ドロシー

!!!!

何かを察したのか、ドロシーの顔は慌てた表情になった。

ドロシー

おいっ、待て!!!

振動で、くぐもった声が彼の耳に届く。

ディアベル

……

ドロシー

あ……

そのような彼女に、ディアベルは顔を向ける。

何かを企む、いつもの顔を。

ディアベル

────何だよ

ファーブラ

私はファーブラ・トロイマー

ファーブラ

騎士団長をしているよ

ディアベル

……ディアベル・ハルトマン

ディアベル

お前のことは知ってる

ディアベル

俺を捕らえた、あの連中の長だろ?

ファーブラ

そうなるね

ファーブラ

騎士団長だけど、軍の指揮も執らせてもらっているよ

ディアベル

で、その偉ァいお方が何の用だ?

ディアベル

直々に死刑宣告でも?

ファーブラ

私は提案しにきたんだよ

ディアベル

……

ファーブラ

ディアベル

ファーブラ

騎士団に入るつもりはないかな?

ディアベル

はっ?

ディアベル

いや

ディアベル

お前、本気で言ってんのかよ……!?

ディアベル

俺ァ人殺しだ!

ディアベル

人を守る立場なんかに

ディアベル

立っていいヤツじゃねェ!!

ファーブラ

ファーブラ

……うん

ファーブラ

その通りだ

ディアベル

!?

ディアベル

じゃァ、何で……

ファーブラ

君に、正義を感じたからだよ

ディアベル

正……義…?

ファーブラ

君は、大きな力を持っている

ファーブラ

でも、君自身はそれを

ファーブラ

生まれながらの呪いと考えている

ファーブラ

そうだね?

ディアベル

……

ディアベル

…あァ

ファーブラ

高等部で密かに行われていた、「呪(まじな)い薬」の取引

ファーブラ

素人がそれを行うんだから、当然バレバレだった

ファーブラ

でも、皆は報復が怖くて

ファーブラ

知らないふりをせざるを得なかった

ファーブラ

君は無実の民衆が報復されるのを目の当たりにして

ファーブラ

単騎で、組織と衝突したそうだね

ディアベル

……

ディアベル

馬鹿だとでも言うのかァ?

ディアベル

…いや、馬鹿だったな

「騎士学校:事件記録」

「呪い薬」を免許無しで制作、 売買した生徒合計12名に退学処分。

生徒らと繋がっていた秘密組織を検挙。

組織は高等部の生徒一人と衝突し、 壊滅的な被害を負う。

その場には子どもが捕らわれていたが、

その子どももまた、 大きな被害を受けることになる。

被害を受けた者の傷には共通して、

「鋭い爪」や

「牙のような噛み跡」

…のような痕があったそうだ。

ファーブラ

庇った時、返り血でも浴びたのかな

ファーブラ

君は自我を失い、無差別に人を傷つけてしまった

ファーブラ

被害者には、友人もいた

ディアベル

言ったろ

ディアベル

ただの人殺しに正義なんて、ねェんだよ

ファーブラ

行動に、「絶対的」な結果は保証されない

ファーブラ

でもそれは、「無意味」だったり、「無価値」だったりすることの証明にはならない

ファーブラ

……ディアベル

ファーブラ

……君はね、とても優しい心を持っているんだよ

多分、この力は凶器だ。

俺ァ、これを正当化したくはない。

だが───

ディアベル

……っ

できるだけ、濃度の高い血を、

有り触れた水と共に、飲み込んだ。

カリゴ

ぐっ……

カリゴ

ゲホッゴホッ

カリゴ

あ゛ぁ……ムカつく……

カリゴ

結果が分かってて

カリゴ

何で、抗おうとするの

カリゴ

……血の無駄遣いしちゃったし

カリゴ

……

カリゴ

血────?

カリゴ

─────は?

頭が、思考が、追いついていない。

瞬く間に、何ヶ所も傷つけられた。

風の音だって聞こえなかった。

湖の深くまで沈ませた。

のに。

だのに……!!!

ドロシー

────っ!!

ドロシー

ゲホッゲホッ

ドロシー

う゛……ガハッ……

ドロシー

はー……はー……っ

ドロシー

(アタシ、生き───)

カリゴ

何でッ……

ドロシー

!!!!

カリゴ

何で来てんだよ!!???

耳から水が抜けなくて、

音がぼけた状態でも、 アイツの悲痛な叫びはよく聞こえた。

でも、よく分かる。

ディアベル

グルル……

それは、正しく獣と呼ぶのに相応しい。

ドロシー

ディア、ベル……

住民を避難させていた時、イヴィ達の任務報告を聞いた。

「レーツェル」

魔術結社の幹部、 固有魔術の「ワープ」は、 概念にも通用する。

ディアベルは、体内に血を転移させられ、

一時的に狼化、暴走した。

リエルの魔術で事なきを得たが、

人伝に聞いても、アイツの姿は目に浮かぶほど印象的だった。

頭髪と同じ、金色の毛。

性格とは真反対の、澄んだ空色の瞳が、

アタシを、捉える。

ドロシー

っ!!

……が、

攻撃は、来ない。

首も、腰も、まだついている。

ドロシー

えっ?

彼女は驚いていた。

彼が、再びカリゴに標準を定める前、

いつものクソ生意気な顔で笑ったから。

カリゴ

は、はぁ??

カリゴ

嘘だろ……

「ブレゼド・トート」

カリゴ

この短期間で何があったんだよ!!?

半狂乱になりながら、大きな血鎌を振り回す。

瓦礫はさらに細かく寸断され、

木の幹も簡単に輪切りになった。

ドロシーは巻き込まれぬよう、避けることだけに専念していた。

ドロシー

「お前は避けろ」……でいいのね!?

ディアベルは猛攻を捌くなかでも、 ドロシーとアイコンタクトを取れるようだ。

ドロシー

(自我……あんだよな?)

ドロシー

(ほんとに、短期間で何したんだよ……)

カリゴ

とっととくたばれ!!

ガキ゛ィン

ドロシー

はっ……

ドロシー

こっちの台詞だ!!

カリゴ

チッ

ドロシーも負けじと、自慢の大剣でカリゴを薙ぎ払った。

ドロシー

いいさ……

ドロシー

お望み通り避けてやるよ!

「自分だけで戦う」ってのが、 役に立つことじゃねえ。

私達で、勝ってみせる。

カリゴ

早く、早くくたばってってば……!!!

それは、苛立ち。

大抵の者が匙を投げそうな場面でも、

彼らはしつこく、希望を見出し這い上がってくる。

カリゴは、まさか自分が劣勢に立つとは思いもしなかっただろう。

その焦りが、

戦場では、命取りだ。

ディアベル

ガアアァッ

ザシュッ

カリゴ

はっ!動きが単調すぎるよ!!

ドロシー

ディアベル!!!

腹が減って仕方がねェ。

疲労で重たかった身体が嘘みたいに、

羽のように、身軽に動ける。

少しでも油断したら、呑まれる。

改めて、恐怖を覚えた。

俺ァ、この力を信じていない。

この爪のせいで、信頼すらも断ち切ってしまったんだ。

ファーブラ

……君はね、とても優しい心を持っているんだよ

ファーブラ

絶対的な結果はついてこないかもしれない

ファーブラ

でも大丈夫、自分を信じるんだよ

ファーブラ

そうすれば、ほら

────おにいさん

ディアベル

あ────

ディアベル

お前っ……生きて…

ディアベル

俺、お前さんに酷いこと……

ディアベル

怪我……けがは!?

団長さんがね、なおしてくれたの

ほかのみんなも、ぶじに帰れたんだよ

ディアベル

あ……

ファーブラ

……傷は、君がこの子達を庇った時にできたものだよ

あ、あのね

おにいさんのおかげでね

おかあさんと、ただいまできたの

ありがとう……!!

ディアベル

──────!!!

カリゴ

何があったのかは知らないけど

カリゴ

さっさと死ん───

カリゴ

え、

抜けない────?

ディアベル

は、は……

ディアベル

ばーか

彼の、腹部を貫いた血鎌。

その柄を、ディアベルは力強く掴む。

ディアベル

ドロシーッ!!!

ディアベル

寄越せーッ!!

ドロシー

!!

ドロシー

おらぁあ!!

ドロシーは、ディアベルの使っていた巨大な斧を、

全力で、投げ飛ばす。

ガシッ

俺ァ、この力を信じていない。

だが、

ディアベル

歯ァ、食いしばれェ!!

カリゴ

やめ─────!!

俺自身を諦めずにいられたのは、

あんたのお陰だ、

……ファーブラさん。

片手で振った刃が、綺麗な弧を描く。

血鎌を持っていた手が、ゆっくりと重力に従っていく。

カリゴ

あ……

血が足りないのだろう。

ディアベルの身体に刺さっていた血鎌は溶け、

腕が落ち、「ゴトン」と音がした。

支えを失った上半身も、同様に地面に落ちた。

ディアベル

はぁっ……は……はぁ……

ディアベル

あ゛ぁ……

ディアベル

あー……、はは…

ディアベル

何とか……なった……

ディアベル

……ドロシー

ディアベル

確保、してくれや……

ドロシー

あ!

ドロシー

わ、わかった

肩で息をしながら、ディアベルは通信機を取り出す。

ディアベル

これで、応援が来る

ディアベル

それまで待機、だ────

一通り報告を終えた後、力が抜けたように、その場に倒れ込む。

ドロシー

ディアベル!!!

カリゴ

……お前も死ぬの?

ドロシー

!!

カリゴ

そんな警戒しないでよ

カリゴ

大体、僕も抜け出せるだけの力残ってないの

カリゴ

どれだけ尋問されたって

カリゴ

オーダー様のことは教えないし

カリゴ

処刑するなら、早くしてくれる?

カリゴ

つまんないでしょ?

ディアベル

……

ディアベル

…ヤダね

カリゴ

は?

ドロシー

ディアベル、喋んないで!

ディアベル

…つまらねェってのはよォ

ディアベル

上手くいかねェからか?

カリゴ

……

カリゴ

僕、普通が嫌いだ

ドロシー

一応、何で?

ドロシー

すっごい癪だけど

ドロシー

お前の魔術には苦戦した

カリゴ

だろーね

カリゴ

事ある毎に間抜け面してたし

カリゴ

ほんっと、愉快だったよ

ドロシー

クソガキが……

ドロシー

だから「利用」されたんじゃないの?

カリゴ

利用?

カリゴ

まさか!

「何をご冗談を」

カリゴはそのような雰囲気で、鼻で笑った。

カリゴ

僕が楽しめば

カリゴ

あの方も楽しめる

カリゴ

あの方が楽しめば

カリゴ

この世界も、あの方にとって楽しい世界になる

カリゴ

ね、簡単でしょ?

ディアベル

……

「あぁ」と思う。

欲望は、ここまで人を狂わせるのだと。

カリゴ

でも今は、退屈だ

カリゴ

ずっと、楽しかったのに

ジャラ……と手錠の鎖がズレる音がする。

ドロシー

それより!

ドロシー

ディアベル!早く止血して!

ディアベル

あァ、それなら…

斧を支えに、よろめきながらも立ち上がる。

ドロシー

えっ

カリゴ

はぁー?

カリゴ

僕、お前に穴開けたよね!?

カリゴ

何で塞がってんの??

ディアベル

…人狼は、ある程度の傷なら再生しちまうんだと

ドロシー

……あ

ドロシー

そうよ!!

ディアベル

あァ?

何かを思い出したのか、彼女の目がカッと開かれる。

そのまま迫真の顔で、ディアベルとの距離をつめた。

ディアベル

何さァ

ドロシー

あのヒヨッコ共の報告だと!

ディアベル

(ひでェ言われようだ)

ドロシー

血を摂取するとさ!!

ドロシー

暴走するんじゃないの!?

ディアベル

あァ……いや

ディアベル

それはァ

ディアベル

あれだ、賭けってヤツだァ

ドロシー

ほんと意味分かんない……

ディアベル

…嘘

ドロシー

え?

ディアベル

何とかなるって

ディアベル

どっかでは、確信してたんだろうなァ

ドロシー

……そう

────兵士団です!!

応援に駆けつけました!

ディアベル

ありがとよ

ドロシー

連行してくれる?

承知いたしました!

ディアベル

ドロシー、お前さんも着いてけェ

ドロシー

は!?

ドロシー

いいけど、お前は?

ディアベル

まだ、やることがあるからよォ

そうして、城を見据えたのだった。

『おとぎ小話』

留置所にて

エクレール

(…俺の、仲間か)

カリゴ

あー!!!

カリゴ

腹立つー!!!!

エクレール

(改めて見ると、子どものようだ)

エクレール

何故、自爆した

エクレール

放置していれば、溺死していたのだろう

カリゴ

だって、だって!

カリゴ

アイツ……あんな状況なのに

カリゴ

笑ってたんだよ…

カリゴ

ほんっとムカつく!絶望しろ!!

エクレール

(あぁ、この悪夢を終わらせてくれ)

エクレール

(…ウォルフの子らよ)

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