目の前に広がる人々の集まり。私はステージの上でマイクを持っている。後ろには私を今まで支えてきた仲間がいる。私は心の中で自問自答をする。
何をするのか?
歌うのだ。あの人のために。
そして私たちのバンドの解散のために。
周りには集めた仲間たちがギター、キーボード、ベースを持っている。ドラムはいない。そこで奏でる者は一人しかいないから。
そういえば、あの人はドラムを叩いていたな。ふっと思い出す。
力強い音を出していた。素早い音で鳴らしていた。
もう一度聴きたいけど、彼はもういない。
私たちの名前もそこそこ売れている。正直解散は悲しい。でももっと悲しい者を私は失った。
そんな私たちを目の前の人たちは待っていた。
私たちの特集で街の人に
インタビュー者
という質問に対して街の人たちは
街の人たち
などという言葉を見たことがある。心配してくれるファンの手紙も貰ったことがある。中には批判する人たちもいただろうが。
だから言わなくちゃ。私たちの復活を。
野乃子
拍手と声が飛び交う。目の前にプレートや団扇などがある。私やメンバーの名前が書かれた物や『がんばれ』などという応援のメッセージもあった。中には『ありがとう』というメッセージもあったが、それは私たちからもメッセージとして伝えたい事だった。
メンバーによる伴奏が流れはじまる。ギターとキーボードとベースが重なり合う。そして私の歌声もそこに重なる。
1.暗がりの中でー 私の上に広がるー 無数の数の光が 夜空を照らし出す その中で一つの光が流れゆく 私はその光を追いかけてく (伴奏と共に歌声を上げる) Flow Stars! 落ちていく光が 私をそこに着かせる 目の前に広がる人たちが 集まってるその場所へー 目指して走れー 2.静かな夜中でー 大人しく流れるー 一つのその光が 一線を描き出す その下で息吹の私が追いかける 私はその線を辿ってく (また伴奏と共に歌声を上げる) Flow Stars! 落ちてく光が 人をそこに集めてる 目の前に広がる人たちが 集まってるその場所へー 目指して走れー 目指して走れー 星の輝きが 照らし出すその先へ Flow Stars……
拍手が一斉に鳴り響く。その拍手による復活した感動が私の心を踊らせる。でもやっぱりこの思いはあの人と共に感じたかった。
戻れるなら私たちのバンドが始まった頃に戻りたい。そう思った時は何度もあった。
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