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遠く離れた世界の君へ --

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遠く離れた世界の君へ --

5 - もう一つの名前

♥

322

2023年07月20日

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〜真冬 side〜

あの出会いから、早2週間

一ノ瀬さんこと彼方さんの家に 住まわせてもらって、でも居候は 申し訳ないと、先ずは家事を覚えた

それから、寝室をボクに譲って もらえる事になって、そこはそのまま ボクの部屋に、彼方さんは作業部屋 って所に新しくベッドを買っていた

血を飲ませてもらうのは、彼方さんの 身体の事も考えて、2週間に一度

ボクは少量もらえるだけでも…… それ以前に住まわせてもらう事が ありがたいわけだから、月に一度 だけでも良かったんだけど

因みにお互いの事を、堅苦しい 名字ではなく、それぞれ下の名前で 呼び合う様になった

ガチャッ

彼方

……お、良い匂い

リビングの扉が開いて、部屋で仕事を していた彼方さんが入って来た

真冬

彼方さんお疲れ様です。丁度夕飯出来ましたよ!

この前聞いたけど、彼は普段、 ネットで音楽活動をしているらしい

確か、『歌い手』って言ってたっけ?

ボクは今まで、テレビやニュースには 触れずに生きてて、正直世間には疎い

ネットに関しては尚更何も 知らなかったから、ネット活動って 言うのは、ボクには少し新鮮だった

キッチンで作った料理を テーブルに運んでいって、 彼方さんの向かいの椅子に座る

この2週間で、料理はある程度 上達したと思うけど……

彼方

いただきます

そう言って箸を持った彼方さんを、 じっと見つめる

真冬

(……そういえばこの人、凄く綺麗な顔立ちしてるよなぁ……)

吸血鬼は、誰しもが綺麗な容姿を持つ

それはボクも例外じゃないけど、 彼方さんは人間なのに、 すごく綺麗な人だった

真冬

(……いや、人間だから、なのかな)

人外のボクとは違って、 雰囲気にも人間らしさがある

綺麗で、優しくて…… それでいて、どこか儚くて……

彼方

……真冬?

真冬

はい?

彼方

いや……そんな見られてると、ちょっと食べづらい……

真冬

え? ……あっ、す、すみません、そうですよね!

いつの間にか、ぼうっと 彼方さんの事を見つめていたらしい

真冬

その、綺麗だなぁって思って……彼方さんのこと……

彼方

っ、は……?

彼方

あ、ありがと……?

ボクが正直に言うと、照れたのか、 そっぽを向いてしまった彼方さん

彼方

っそれより今日、アレだろ。2週間経ったし

真冬

そうですね。じゃあ、後でよろしくお願いします

彼方

出会った時より素っ気ない態度を される様にはなったけど、素を出して くれてるのかな、なんて嬉しくもなる

彼方

ご馳走様

真冬

お粗末様でした

ボクが作った夕飯は、 綺麗に平らげて貰えた

真冬

じゃあ……

彼方

……ん

察してくれたらしく、 前みたいに首元を出してくれる

真冬

その、いただきます

彼方

どうぞ

まだ治り切っていない噛み跡に、 今度は前より優しく歯を立てた

彼方

っ……やっぱ慣れないわ……

そんな言葉を横目に、 2週間ぶりの食糧を味わう

真冬

(そういえば……この前のは、一体何だったんだろう……)

ゴクッ

──さん、噛み方雑すぎるっ!

ごめんって、次から気をつけるよ

ほんとですかぁ……?

ほんとだから大人しくしてろ──

──“まふまふ”

真冬

っ──!!

また……何かの“記憶”……

真冬

(一体、何なの……?)

プルルルル……

彼方

あ、ごめん俺。ちょっと出てくる

真冬

は、はいっ

服を直しつつ、スマホを持って 廊下へ出て行ってしまった彼方さん

真冬

(……あの声は……でも……)

〜彼方 side〜

彼方

もしもし?

翔太

『あ、もしもーしそらるさん。』

翔太

『今って暇だったりします? 96ちゃんとエペやってるんですけど』

電話の相手は、天月こと天宮翔太

いつもなら、二つ返事で 誘いに乗る所だけど……

彼方

あ〜……ごめん、ちょっと今日は無理かも

翔太

『あ、忙しかったですか?』

彼方

まぁそんなとこ。じゃ

翔太

『は〜い』

天月との通話を切って、 リビングに戻って来る

真冬

あ、お帰りなさい、“そらるさん”

彼方

ただいま。

彼方

…………って、は?

真冬

……? どうかしました?

普段、友達から呼ばれ慣れていた せいで、今一瞬気づかなかった

彼方

……真冬、何で俺の活動名知ってんの?

この2週間で、教えた記憶は無い

“歌い手”としてソロで活動をしてる事 しか、話して無い筈なのに……

真冬

活動……? あ、“歌い手”って言うのの?

彼方

そう、だけど……

真冬

…………あれ? 今“僕”、何て言いました……?

自分でも無自覚だったのか、 キョトンとした顔でそう聞かれる

彼方

(まさかこいつ、俺のリスナー……? けど、吸血鬼なのは本当っぽいし……)

彼方

……“そらる”は俺の活動名。何で知ってるの?

疑いの気持ちが強くなって、 自然と声が低くなる

真冬

えっ? え、っと、その……。

真冬

……ご、ごめんなさい……けど、分からないんです

彼方

分からない……?

真冬

実は……前に血を飲んだ時、何かの記憶を“思い出した”んです。

真冬

さっき飲んだ時も、それが起こって……記憶の中で、ボクが彼方さんのことを、“そらるさん”って呼んでて……

真冬の記憶の中で、 俺が活動名で呼ばれてた……?

彼方

……その記憶で、俺らは何してたの?

真冬

分かりません……モヤがかかったみたいに、曖昧で……。

真冬

けど……どちらでも、“血”の話をしていた様な……

血の話……?

真冬

あの、急に呼んでしまってすみません。ボクも無意識で……。

真冬

び、びっくりしちゃいましたよね……?

少し怯えた様に、 俯き気味で聞いてくる真冬

彼方

(怖がらせちゃったか……?)

彼方

あー、いや……こっちもごめん、こんな疑って……仕事柄癖になっててさ。

彼方

別に、怒ってるわけじゃないから

真冬

あ、そ、そうですか……

彼方

うん。にしても何だろうな、その記憶って……

真冬

……“────”……

彼方

……? 真冬?

真冬

……え? あ、はいっ?

彼方

あ〜……いや、やっぱ何でも無い。俺作業してくる

彼方

…………

あいつはきっと、嘘は吐いて無い

吸血鬼なのは紛れも無い事実だし、 俺のことも本当に知らないんだと思う

彼方

記憶……

彼方

(……これは、あんまり関係無いかもしれないけど……)

……最近、とある夢をよく見る

──オレが、人を殺す夢

殆どか暗い夜の路地裏で…… まるで吸血鬼の様に、人の首元を 噛んで殺している夢だった

だけど、恐ろしい夢の筈なのに、 恐怖は一切感じない

ただ起きた時に残るのは、 “何か”が足りない感覚だけ

彼方

…………

彼方

(……疲れてるだけ、だよな)

最近は活動も忙しいし、真冬を 拾った事もあって、少し疲れが 溜まってるだけかもしれない

彼方

(ちょっと作業したら寝るか……)

〜真冬 side〜

真冬

……“そらるさん”……

さっき、自分で無意識に呼んだ名前

今の今まで知らなかった筈なのに、 何故か懐かしさを感じた

真冬

(……それに、もう一つのあの名前は何だろう……)

真冬

……♪〜……。

真冬

♪〜……?

真冬

……あっ。

真冬

♪桜の……

何となく鼻歌を歌っている途中、 ふとそれらしい歌詞が思い浮かぶ

歌うことは、“昔”から好きだった

今までも、こうして歌って 気を紛らわしたりしてたっけ

世の中の音楽は知らないから、 全部自分で作った曲だけど

真冬

……“歌い手”、かぁ……

遠く離れた世界の君へ --

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