俺の初恋は、幼馴染が取っていった。
夏の中旬、幼馴染の泠(レン)と夏祭りに行った。
アイツの浴衣姿が眩しすぎて、俺は目を疑った。
夏の暑さからなのだろうか。それとも恋なのだろうか。
悩んでいた。
だけど、分かったんだ。泠のことが好きって事。
坂上 夏輝
泠、早く食べないとアイス溶けるよ。
田村 泠
分かってる。
自分が嫌だ。
男なのに。幼馴染なのに。
こんなのって、変だ。
神様は不公平だ。
男に恋をさせるなんて、どうかしている。
坂上 夏輝
…泠。
田村 泠
どうした?
坂上 夏輝
もし俺が男が好きって言ったら、お前はどうする?
田村 泠
どうもしない。
坂上 夏輝
なら、お前を好きって言ったら?
田村 泠
断るさ。俺は良くても、世間は許してくれないからな。
坂上 夏輝
だろうな。
その言葉を口にし、俺はフッと微笑む。それでいいんだよ、泠。
早く俺を突き放してくれ。
俺を殺してくれ。
田村 泠
そろそろ行かなきゃならない。
坂上 夏輝
あぁ、そう。
田村 泠
またな。
坂上 夏輝
またな。
泠が家を出る。
着ていた服に雫が落ちる。
何事か、汗か、などと思い、自分の顔を確認する。
ー驚いた。
涙が出ていたのだ。
坂上 夏輝
なんで…?
分からない。断る、と言われたから?
覚悟していた筈なのに。分かっていた筈なのに。
心のどこかでは、叶うと思っていたのか?叶うわけが無いのに。
俺は、もうダメなのか?
坂上 夏輝
なぁ、俺はどうすればいいんだよ。…泠。
もういっそ…
坂上 夏輝
殺してくれ