「あ!あれ食べようよ!」
紗良の声につられ俺は 車椅子を押す手を止める
晴翔
紗良
昼は暑く 夕方になると少し涼しくなるこの季節
俺たちは地元の小さな祭りに来ている
人にぶつからないように 丁寧に紗良の乗っている車椅子を押す
紗良
晴翔
紗良
紗良
晴翔
紗良
紗良
車椅子の向きを変え 賽銭箱を目指す。
紗良
晴翔
紗良
晴翔
紗良
晴翔
紗良
晴翔
紗良
晴翔
晴翔
紗良
紗良
紗良
晴翔
そんな会話をしていると 気がつけば賽銭箱の前に居た
紗良
晴翔
紗良
晴翔
紗良
パンパン!
賽銭箱にお金を投げ入れると 紗良と俺はそれぞれ目を瞑る。
晴翔
紗良
晴翔
紗良は少し黙り込む。
晴翔
紗良
晴翔
紗良
「だからーー!! 買ってよぉ!!」
色んな音が混ざり合うなか とっても大きな声が響き渡る
男の子
お母さん
男の子
男の子
男の子
そんな親子の会話を横目に 俺は車椅子を押し鳥居をくぐり 神社を後にする。
晴翔
紗良
晴翔
紗良
晴翔
晴翔
晴翔
晴翔
来年が来るかすら定かではない そんな場所で僕らは生活をしている。
俺は生まれつき 心臓の病にかかっていた。
中学3年まではみんなと同じように 生活出来ていたが、 高一の春、教室で倒れてからは ずっと病院で入院中だ。
助かるには 心臓のドナーが必要らしいが 小児の心臓ドナーはそう簡単には 回ってこず
恐怖と戦いながらの 毎日を過ごしている
唯一の楽しみは 一日だけ外出を許される 夏祭りの日だ。
紗良はALSと言う病気だ。 体の筋肉が固まっていき 最終的に心臓すら動かなくなる。
そんな俺たち出会いは当たり前だが 病院だった。
明日が来るかも分からない。 紗良と居ればそんな不安さえも 何だか大丈夫な気がした。
紗良
紗良
晴翔
紗良
紗良
晴翔
俺は少し無理して口角を上げる。
紗良
晴翔
紗良
晴翔
花火が上がる。
晴翔
夏祭りが終わり いつもの日常になった頃 紗良は突然言い出した。
紗良
晴翔
晴翔
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
晴翔
晴翔
晴翔
晴翔
紗良
紗良
紗良
晴翔
晴翔
日常は簡単に崩れる。
そう実感した日だった。
深夜2時 大人達の会話で目が覚める。
紗良が死んだらしい。
紗良が死んで1週間が経った。
この一週間は何もしていない。 ご飯を食べる。 寝る。 だけだ。
死因は階段からの転落死
自殺だったのか? ただの事故だったのか。
どちらにせよ 俺と紗良の別れは最悪だった。
晴翔
毎晩毎晩、 天井を見ては瞳いっぱいになった 涙が頬伝う。
紗良のお母さん
紗良のお母さん
突如部屋の扉が開き 紗良の母親が入ってくる。
晴翔
晴翔
紗良のお母さん
晴翔
紗良のお母さん
晴翔
「先日紗良のスマホを見てたら見つかったんだけど、」 紗良の母親はそう言うと続けた
紗良のお母さん
紗良のお母さん
紗良のお母さん
それだけ言うと 紗良の母親は一礼だけし 部屋から出ていった
晴翔
ピコン スマホの起動音がなる。
通知の溜まったメッセージ欄の中から
紗良を見つける。
晴翔
震える手で タップする。
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
紗良
どれくらい泣いただろう。 気がつけば外は明るくなっていた。
晴翔
俺は1度だけ叫ぶと 声を殺してまた泣いた。
夜店の人
いつもの鳥居を今年は1人でくぐる。
少しベビーカステラも食べたいが 先にお賽銭箱へと向かう。
財布からお金を取り出し 賽銭箱に投げ入れる。
晴翔
やはり、いつも通りの願い事をする
賽銭箱に背を向け 立ち去ろうとした時
「願い事は1人1つ!」
ふと女の子の声が頭に響く。
晴翔
俺は再び賽銭箱へと向かい 財布の中から五円玉を探す。
晴翔
今度こそ 賽銭箱に背を向け立ち去る。
ドン!
腰に衝撃が走る。
晴翔
男の子
後ろから男の子に ぶつかられたらしい。
晴翔
男の子に背を向け歩き出す。
後ろでは男の子達の声が聞こえてくる
男の子達
男の子達
男の子
男の子
男の子達
男の子
気がつけば 晴翔の口角は少し上がっている。
紗良
晴翔
紗良
晴翔
花火が上がる。
コメント
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コンテストご参加ありがとうございます! 本当に、田中太郎さんは毎回素敵な話を書かれる…✨ 最後の場面の、「願いごとは1人ひとつ」と言って、主人公の中にいる紗良ちゃんの分までお願いごとをするシーンでは発想に驚かされました…! そしてあのお面の男の子が出てきたところではもう…😭! 結果発表までしばらくお待ち下さい✨
純粋な気持ちになれました、ありがとうございます✨