二十年後のアホ美ちゃん

夫の拓篤と出会ったのは大学時代

見学に行ったサークルで一つ年上の拓篤に声をかけられた

私はまだそのサークルに入ると決めたわけではなかったのだが

拓篤の優しい笑顔に惹かれ

拓篤の所属していたアウトドア系のサークルに加入した

登山、川遊び、海水浴、キャンプなど

夏になると沢山のイベントが開催され

みんなで遊園地に行った際には

拓篤からの秘密の誘いに戸惑いつつも

みんなに気づかれないようにこっそり乗り込んだ観覧車

そこで拓篤からの告白を受け

拓篤の真剣な眼差しに

私は完全に心を奪われた

観覧車を降りて歩く時

こっそりと手を繋いで歩いた

まるで少女漫画の主人公のように

私は完全に浮かれ気分で他のメンバーと合流

この頃の拓篤は本当に優しかった

サークルには何人も女子メンバーがいたけど

私にだけ特別にしてくれることもあって

みんなに悪いと思いつつもそれを受け取っていた

拓篤は人気者で女の子からもモテていて

サークルの中には拓篤のことを本気で好きな人もいた

だから内緒で付き合おうと私は思っていたけれど

拓篤は全てを公表し

拓篤から私に告白したことなども打ち明けた

この人はきっと拓篤が好きだった

だから私の存在が許せなかったのだろう

私のせいで先輩が辞めてしまった

その事で酷く落ち込んだこともあったけれど

拓篤はずっとそばにいて慰めてくれた

それからの日々は楽しいことの連続で

女子高出身で恋愛経験のなかった私に

拓篤は色んなことを教えてくれた

二人で初めての映画館

流行りの恋愛映画に感動して涙する私に

拓篤は優しくハンカチを差し出してくれた

水族館の巨大水槽を泳ぐサメ

あまりの迫力に圧倒される私を

拓篤は優しく見守ってくれて

二人でカラオケに行って

私のために歌ってくれたラブソング

恥ずかしそうに歌う姿にキュンとした

夏祭りで買ってくれた焼きそば

唇についた青のりを

拭うための初キッス

恥ずかしさと嬉しさで舞い上がる気持ち

改めてしてくれたキスは

ほんのり焼きそばのソースの味がして

少しずつ

大人への階段を上っている気がした

私の誕生日には

ステキなディナーとかわいいバースデーケーキ

そしてステキなプレゼントまで用意してくれていて

本当に幸せな大学生活を送ることができた

拓篤との出会いから三年後

一足先に卒業、就職した拓篤に支えられ

第一志望の企業への就職が決まり

翌年の三月には無事に大学を卒業

私は新たな一歩を踏み出した

職場の先輩や同僚にも恵まれ

忙しくも楽しい毎日

それが一変したのは社会人になって三年目のこと

拓篤が私に告白してくれた思い出の遊園地で

今度はプロポーズしてくれた

迷いなんてなかった

拓篤は私の運命の人

私はこの人のために生まれてきた

大袈裟だと思われるかもしれない

でもそれくらい

拓篤のことが大好きだった

最高に幸せな時間

これから始まる愛する人との幸せな日々

沢山の人に祝福されて

私達は夫婦になった

先輩とのわだかまりもなくなり

これからは拓篤と二人

夫婦になって初めての夜

拓篤は私のことを優しく抱き締めてくれた

優しくて温かくて

本当に幸せな時間

心の底から愛しいと思える人がそばにいる

私達はこれから

夫婦二人で支え合って生きていく

拓篤と二人で……

数ヶ月後

私は拓篤との子供を妊娠

この時は嬉しい気持ちでいっぱいで

早く帰って拓篤に報告したいと思っていた

だが

私はこれから壮絶な日々を過ごすことになる