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猫屋敷古物商店の事件台帳

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猫屋敷古物商店の事件台帳

41 - 第6話 お化け団地の人喰いエレベーター 問題編【2】

2025年12月08日

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暇である。

猫屋敷古物商店は名前の通り古物商であるがゆえに、頻繁に人の出入りがあるわけではない。

しかも、本業としているのは査定のほうであり、実際に物を売りにやってくる人はほとんどいない。

しかも、こんなど田舎の、本当にお店があるかどうも分からぬ、のどかな集落。

とりあえず外の掃除をし、薄暗い店とは違って気分の良い真っ青な空に向かって、千早は大きく背伸びをする。

千早

んー、いい天気。

ここしばらくは査定らしい査定も入っていなかった。

ちなみに、一里之が疑われた件については、問い詰められた綾茂が自白したらしい。

もっとも、千早の仕事は【いわく】の査定までであって、その先がどうなろうと知ったことではないし、千早自身あまり興味がなかったりする。

その先は警察の仕事だったり、持ち込んだ人間の仕事になる。

千早

さてと、掃除が終わったことだし、例の【志田屋】から仕入れた豆大福をいただきましょうか。

ただでさえ人前では口数の少ない彼女が、ここまで饒舌になるのは、それだけ気分が良いからである。

千早

チョピもおやつにする?

建て付けが悪くなってしまった店の引き戸を開けると、店の中で待っていたチョピに声をかける。

店に戻ると、中の小上がりから家の中へと入り、台所で茶を沸かす。

チョピのおやつを一足先に出してやると、千早はヤカンの前で湯が沸くのを待つ。

千早

おばぁちゃん、今回はいつ帰ってくることやら――。

千早は色々な事情があって祖母と2人で暮らしているのだが、この祖母というのが自由な人であり、ふらりと出かけたまま数ヶ月帰って来ないなんてザラ。

行き先も告げず、ふらりと出て行ったと思ったら、海外を放浪していた――なんてことも珍しくはない。

本当に千早と血が繋がっているのか疑わしくなるほど、アクティブな祖母である。

千早

お、沸いた。

お茶を淹れると、丁重に保管してあった豆大福をありがたくお皿に移させていただき、それを持って店のほうに戻る。

千早

それでは――。

豆大福とお茶を目の前に正座をすると、千早は静かに手を合わせた。

――と、その時のこと。

滅多に鳴ることのない店の電話が鳴った。

この令和のご時世、いまだに使っているのは黒電話。

ダイヤル式の古い電話機であるが、今も不自由なく使えている。

もっとも、回線はアナログでは光通信なのであるが。

千早

――はい、猫屋敷古物商店です。

電話の相手

あ、本当に繋がった!

千早

――そりゃ、繋がりますけど。

目の前には、湯気を立てるお茶と、これでもかとばかりに片栗粉をまぶした豆大福が鎮座している。

それを恨めしく眺めながら、千早はやり取りを続けた。

電話の相手

あ、あの――そこって、持ち込んだ品の【いわく】を査定してくれるって本当ですか?

電話の相手

例えば、それが事件にまつわる【いわく】だったら、査定の過程で事件の全容も分かるとか。

千早

――それは、あくまでも査定の副産物とお考えください。

電話の相手

あの、だったらお願いしたいんですけど。

千早

……あの、こんなことを言うのも変な話ですが、当店では査定料なるものをいただいておりまして。

電話の相手

お、お金ならいくらでも支払います。

電話の相手

どうかお願いします!

一体、どこから噂が漏れ出したのか。

こんな片田舎でひっそりとやってる店で、当然ながらホームページなどもやってはいない。

ネットが発達した世の中だから、情報が絶対に漏洩しないとは限らないが。

千早

左様でございますか。

千早

して、いつ頃ご来店できますか?

電話の相手

あ、その――実は私、そっちの人間じゃないんです。

電話の相手

それで、そちらに伺うのは難しそうで――。

千早

でしたら査定はお受け――。

千早の言葉に被せるかのように電話口から声がする。

電話の相手

あの、査定していただきたいもの――もう、そちらの住所に送っちゃいました。

声質からして女性だろうか。

千早も人のことは言えないが、随分と声は低く、そしてハスキーだった。

千早

え、そうなのですか?

電話の相手

はい、ですからどうか査定をお願いします。

千早

――しかし、査定には【いわく】の背景などが必要となるため、お話を伺ったりする必要もありまして。

電話の相手

概要などは、品物と一緒に同封してあります。

電話の相手

もし、分からないことがあったら、ディスプレイに電話番号出てると思いますので――。

千早

あ、その――ナンバーディスプレイとかはついていなくて。

電話の相手

それじゃ、お願いします。

千早が言うよりも早く、電話は切れてしまった。

千早

電話、そろそろ変えたほうがいいかなぁ。

当たり前だが、黒電話にナンバーディスプレイ機能などついているわけがない。

結局、相手がどこの誰なのか、連絡先も分からないまま。

千早

――さて、どうしたものか。

千早はしばらく考えた後、そこにおわせられる豆大福様と目が合い、改めて静かに手を合わせる。

千早

その前に――。

千早は幻の一品に手を伸ばし、舌鼓を打ったのであった。

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