武永と一緒に、暗くなってしまったブラウン管を眺め始めてから、果たしてどれだけの時間が流れたであろうか。
予想通り……というか、もはや予定調和とばかりに緊急特番が始まった。
テレビ
今、緊急で撮影しています。

RYUREIの言葉が、なんともわざとらしく聞こえて吐き気さえする。
武永
やっぱり始まったか……。

神崎
えぇ、第二問目の答えだった彼女……柚木は降板することになりますから、当然あるんでしょうね。

神崎
いわば、2.5問目といったところでしょう。

会話を交わしている間に、RYUREIが状況を説明する。
ある程度の状況を聞いた後、武永が感心したように呟いた。
武永
ほう、彼女の降板を防ぐために、ひとつの楽屋に集まったか。

神崎
若干名、非協力的な人物がいたみたいですけど。

RYUREIに呼び出されたのか、現場となった楽屋には数藤の姿も見受けられる。
神崎
それぞれの楽屋にシャンパンは用意されていた。

神崎
しかし、九十九の楽屋に用意されたシャンパンには毒が混入されていた。

武永
……だとしたら、ピンポイントで柚木を狙ったわけじゃねぇのか?

武永
九十九の楽屋に数藤を除く全員が集まることは、奴らが決めたことであって、それを仕掛けた犯人には分からねぇだろ?

武永
万が一、九十九達が素直に楽屋に帰って、シャンパンを飲んでいたらどうなる?

武永
柚木以外の連中が死んでいたのかもしれないんだぞ。

テレビの中では、同じような疑問をRYUREIが画面外に投げかけ、九十九がそれに答えるかのように口を開く。
神崎
多分ですが、狙って柚木を殺害することは可能ですよ。

武永
いや、どう考えたって無差別じゃねぇか。

神崎
可能性の話になりますが……。

神崎
タケさん、確か納豆がお嫌いでしたよね?

武永
あ、あぁ……。どうにも、あの風味と、豆が腐ってるって事実が受け入れられなくてな。

武永
それに、アレルギーとかじゃねぇんだけど、食うとしばらく気持ち悪くなるんだよ。

神崎
それと同じことが利用されているんですよ。

神崎
前提として、楽屋全てにシャンパンが振舞われていたようです。

神崎
これらのシャンパン全てに毒が混入されていたと考えてください。

武永
全てに?

武永
そんなことしたら、もっと大勢が死ぬかもしれねぇじゃねぇか。

武永
九十九の楽屋に集まって、柚木を守ろうとしたのは、九十九の提案だぞ?

武永
それを見越していたってことか?

神崎
見越してなんていないんです。

神崎
それじゃ、こう考えましょう。

神崎
6人のタケさんと、僕の1人。二問目が終わった時点のメンバーを、そう置き換えてみてください。

武永
俺が6人か……相当面倒くせぇことになるぞ。

神崎
1人でも色々と頑固で面倒な性格ですからね。

武永
うるせぇよ。とにかく、それがなんなんだ?

武永
続けろよ。

神崎
これで、楽屋に毒が混入された納豆が置いてあったとしますよね?

神崎
さて、タケさん6人は納豆を食べるでしょうか?

武永
いや、食わないだろ。

武永
納豆嫌いなんだから……。

神崎
それと同じことが起きたんですよ。

神崎
おそらく、柚木以外の人間は、何かしらの理由があってお酒が飲めない……もしくは、進んでお酒を飲むような人間ではなかったのでは?

テレビの中では、それぞれに酒が飲めるかどうかを九十九が問うている。
凛
凛、お酒飲むと蕁麻疹(じんましん)出るから飲まないんだよねぇ。

長谷川
俺はこう見えて下戸でな。

長谷川
飲むと悪酔いするんだよ。

数藤
ふん、酒を飲むなどいかに体に悪影響なのか、君達は知らないのか?

口々に、お酒が飲めない、もしくは飲まない理由を述べていく一同。
眠夢
私は未成年だし……。

茜
お酒の何が美味しいのか分からないんだけど。

九十九
でもって、俺は酒を医者から止められてんだ。

九十九
昔、アホみたいに飲んだせいで、割と肝臓がやられていてな。

神崎の考え通り、柚木以外の人間は、何かしらの理由で酒を飲まない、飲めないようだった。
神崎
今聞いた通り、柚木以外はお酒を飲む状況になかったんです。

神崎
だから、お酒を全ての楽屋に置いていても、飲むのは結局柚木だけになります。

神崎
たまたま九十九の楽屋に大勢が集まり、そこで柚木がシャンパンを飲んでしまったから、奇妙な状況が出来上がってしまいましたが、蓋を開けてみれば、答えは簡単なんです。

神崎
プロバビリティ――しかも、かなり高確率の見込みがあった犯行なんです。

そこまで聞いた武永は、納得したように頷くと、しばらくして緩く首を横に振った。
武永
橘の時は直接的なやり方なのに、急に回りくどいやり方になったな。

武永
どうしてだ?

神崎
あくまでも推測ですが、犯人は柚木に直接手を下せる状況になかったのでは?

神崎
だからこそ、柚木以外が飲酒できないという事実を利用して、彼女をピンポイントで殺害したのでは?

武永
なんで、直接手を下せなかったんだ?

神崎
それは……一同が九十九の楽屋に集まっていたからじゃないですか?

武永
それをわざわざしなきゃいけないってことは――。

神崎
えぇ、黒幕は九十九達の中にいるのかもしれません。
