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午前五時
今日も父ちゃんの目覚ましの音で目が覚めた
目覚ましの音は直ぐに止んで
バタバタと父ちゃんの足音が聞こえる
いつもと変わらない朝
でも今日は土曜日で学校はない
明日夢
明日夢
丈太郎
いつものように顔を洗って洗濯機のスイッチを入れる
その間に父ちゃんが台所へ行き二人分の朝食を作る
昔からずっとこうだった
平日も休日も同じ時間に起きて支度をする
幼い頃は早朝からじいちゃんの家に預けられ
そこから保育園や学校に通った
高学年になった頃から今のような生活スタイルになり
朝に洗濯や掃除をするようになった
今日は土曜日だけど父ちゃんが出勤する日で
もう少ししたら父ちゃんは家を出る
明日夢
丈太郎
明日夢
もちろん行くのは過去の母ちゃんの所だ
今までこうやって誤魔化してバレたことは一度もない
父ちゃんはきっと病院だと思ってるだろう
無事に母ちゃんを助けることができたら
未来の母ちゃんはどうなるんだろう?
この家で……
俺の帰りを待っていてくれたりするのかな?
丈太郎
明日夢
予定通り父ちゃんは出掛けていった
父ちゃんが帰ってくる夕方まで一人
明日夢
母ちゃんを助けるために
最初は地下室の鍵を複製する計画を立てていた
でもじいちゃんの家にあった地下室の鍵はかなり特殊なもので
そう易々と複製できる代物ではなく
俺はそっと鍵の入った引き出しを閉めた
けどやっぱり諦めるわけにはいかない
俺は予定どおり母ちゃんを助けに行く
何でもいいから理由をつけてじいちゃんの家に行こう
食べ終えた食器を片付けて
洗濯物を干して掃除機をかける
やることはいつもと変わらない
でも頭の中は母ちゃんのことでいっぱいで
何度も掃除の手が止まる
明日夢
そう思った瞬間
明日夢
テーブルのスマホが震えた
おばちゃん
明日夢
明日夢
おばちゃん
明日夢
おばちゃん
明日夢
おばちゃん
おばちゃん
明日夢
明日夢
まさかこんな展開になるとは思わなかった
タイムマシーンのことで口論になってから
じいちゃんとまともに会って話をしていなかった
タイムマシーンを使わせてもらえない今
地下室に行っても追い返されるだけ
"遊びに来た"と言えばおばあちゃんは喜んでくれる
でもじいちゃんに見つかったら絶対に怪しまれる
じいちゃんの家に行く口実が思い付かなくてずっと悩んでいた
そんな時におばあちゃんの方から誘ってくれた
例えじいちゃんと鉢合わせになっても
パイを受け取りに来ただけだと言えば問題はない
驚きと嬉しさから体が震える
これで母ちゃんを助けに行ける
地下室に行くために一番、重要なのは鍵を手に入れること
鍵を拝借してその日のうちに複製して
元の場所に戻すことができれば問題はなかった
あの日はじいちゃんが不在だったし
引き出しには同じ形のダミーの鍵がたくさん入っていたから
その中の一つがなくなっていても
おばあちゃんに気づかれることはなかったはずだ
あの特殊過ぎる鍵を見つけるまでは
絶対にうまく行くと思っていた
あの鍵を簡単に複製することはできない
一見しただけでは見分けのつかない大量の鍵の中で
じいちゃんは一発で探し当てるコツを知っている
引き出しを開ければ鍵がないことにも直ぐに気がつくだろう
そう思って引き出しに戻してきたけど
俺は三十分以上かけて何となくそれらしいポイントを見つけた
だからこの後
パイを受け取りに行った時に鍵を拝借する
そしてじいちゃんが地下室を出たら
こっそり侵入してタイムマシーンを……
明日夢
写真に写る母ちゃんに語りかけた
綺麗なウェディングドレス姿の母ちゃんと
グレーのタキシードに身を包んだ父ちゃんの姿
カメラマンを務めたのは二人の高校の同級生
眩しく輝く二人の笑顔
まさかこの後
母ちゃんが事故に遭うなんて想像もつかなかっただろう
意識のない中で俺を産んだ母ちゃんは
一命は取り留めたもののそのまま意識が戻ることはなく
俺が生まれたあの日からずっと眠り続けている
心電図の音が響く病室で
たくさんの管に繋がれていた
小さい頃はよくわからなかった
どうしてこんなにもたくさんの管が母ちゃんに繋がっているのか
一定のリズムを刻む心電図の音も不思議でたまらなかった
中学生になってやっと一人で行けるようになった頃
学校を抜け出して病院に行ったことがバレて
父ちゃんに怒られたことがあった
それからは我慢して週末だけにしたけど
俺は母ちゃんが大好きだから
必ず会いに行くようにしていた
写真のような笑顔は見たこともなく
声も聞いたことがない
いつも眠ったままの母ちゃんに
俺は一方的に話しかけ続けた
愛紗
愛紗
明日夢
明日夢
明日夢
まさか会えると思わなかった
話ができると思わなかった
過去に飛んで
母ちゃんの優しさに触れて
母ちゃんの息子でよかったと心から思った
俺は何度かじいちゃんとの約束を破り
母ちゃんに事故のことも話してしまった
それでも母ちゃんは諦めずに俺を産んでくれた
もし母ちゃんが諦めていたら
もっと早い段階で俺は消えていたかもしれない
俺をこの世界に残してくれた
その思いも含めて
俺はこれから過去に飛ぶ
絶対に成功させて
こっちの世界で母ちゃんと話したい